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食堂

※ こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

先日、作家の万城目学さんと久しぶりに食事をご一緒し、いろんな話で盛り上がり気づけば4時間が過ぎていた。
楽しい時間というのは、あっという間に過ぎる。

いろんなお話をする中で「 ○○ とか、△△ って響きが好きなんです」と万城目さんが話されたのを聞いて、ちょっとわかる気がした。
帰りの電車の中、”好きな響きの言葉は、ぼくにもあるな” と思い浮かんだのが食堂だった。
この食堂というごく平凡な言葉になぜかぼくは惹かれる。ちなみに Réfectoire も食堂のこと。

車中、ぼくは独りで山手線ゲームのように「食堂といえば?」と思い浮かべてみる。乗っていたのは山手線でなく中央線だけれど。

かもめ食堂、つむじ風食堂、深夜食堂、食堂かたつむり、千成餅食堂、月刊食堂・・・最後のはちょっと違うな。

先日の渡邉さんのコラムもタイトルが「まさこ食堂」だったし、365日の杉窪さんはSNSで昔住み込みバイトでお世話になったという力餅食堂さん(大阪)を訪ねられた際のご主人との素敵な写真を公開されていた。

ぼくが20代前半でお金がなかったころ、休日になると通っていたのも近所の千成餅食堂さんだった。
いまでも関西のあちらこちらで見かける千成餅食堂や力餅食堂という店名は、昔の暖簾分け制度によって増えた食堂らしい。
ぼくの通っていた千成餅食堂さんも年配のお父さん、お母さんが営んでられていて、定食を食べても数百円ととても安かった。
客席にある常温ショーケースにはちょっとした一品料理が並び、お客さんが自分でガラス戸を開いて取るという仕組みで、ぼくはさばの煮物や卵焼きをよく食べていた。

食堂という言葉からイメージする物語は小説であれ現実であれ、みんな穏やかで優しい。ご主人も優しければ味も優しいし、財布にも優しい(タニタ食堂さんは身体にも優しそうだ)。
そして何よりもぼくが食堂という言葉に惹かれるのは、その「お客さんを選ばない」というイメージだと思う。
ぼくもいつかこういったお店をする機会があれば、そのときにはフランス語などでなく、日本語の店名にしよう。○○食堂って。


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