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料理上手な奥様。

持つべきものは友。

これは誰しもが聞いたことのある言葉だろうと思う。広辞苑によると【困ったときに助けてくれるから、友ほどありがたいものはない】という意味らしい。

元来、人に頼るのは苦手で、仕事においても自分でやったほうが早いという結論に至ることが多い。最終的にタスクが増えすぎて「なんで誰もやってくれへんねん!」と勝手にイラついている。

30代後半にもなると部下を持つ立場にもなる。いわゆる中間管理職。1番理不尽な思いをする層であると思う。上からのころころ変わる指示の数々、下からのわがままでしかない希望たち。

医療従事者という人種は自分本位が多い。
患者さんのためにこうすべきと主張してくる上からの指示はただただ自分の部署ではやりたくないことを押し付けあっているだけである。
下は下でやりたくないことをはっきりやりたくないと主張する。
挙句の果てには やらなきゃいけないなら辞める。とすぐ脅してくる。

ちょうどあの感染症が流行り出した時期になんとなくこの立場になり、そこから今まで何も考えずにただ忙しい毎日を過ごしていた。
仕事中心すぎて自分のことを考えるひまがなかった。

ようやっと落ち着きを取り戻し、何やってんだ自分という気持ちになって思い返してみると数々の理不尽に挟まれている自分に気づく。自分の主張を長らくしていなかった気がする。こんなことをやりたくて資格を取ったわけじゃない。

人生において誰しもが通るであろう”このままでいいのか自分”が今頃やってきた。え?もう40近いんだけどどうする?転職?いまさら?ここまで給料あがったのにまたいちから?職種変える?なにができる?

考えまくって結論が出ないまま焦燥感だけが常にまとわりついている。

そんなとき、友人から連絡が来た。
「臨月だから出産前にランチしよう!」
久しぶりだ。彼女が妊娠してからあまり会えていなかった。

半休を取り、某ホテルの6階に和食をいただきに行った。
彼女は初めての出産だ。高齢出産であるので無痛分娩を選択した。
無痛分娩についてはすでにそのことでお母上と喧嘩したと聞いている。
痛みを伴わないと母親になれないと主張するお母上に対し、じゃあ父親は痛くないのになんで父親になれるんや!と反撃し説得したと言っていた。
そんな彼女が、
「今、心配してることがあって大丈夫かなって思ってるねんけど、、、」
少し深刻そうな雰囲気を醸し出したので、やっぱ高齢出産不安よなと思ったところで、
「こどもが泣いてるのに、旦那さんがスマホでずっとゲームしてるねん。」
ん?まだ産まれてないよね?なんの話?
「妄想なんやけど。」
おい!それは旦那が可哀そう。
ちなみに旦那さんはびっくりするくらい温厚な優しい旦那さんである。
というか出産自体の心配はないのであろうか。

「妊娠して残念なことが1個あってさー」
これはなんとなくだが、たいした話じゃない気がする。
「妊娠したらでべそになるって言うやん?ならんかってん!」
どうでもいいやつ来たー!!

彼女の話はいつもこっちの考えないことばかりで面白い。

彼女とはもう30年の付き合いである。
4年前までは同居していた。
そういえばあの頃仕事の話めっちゃ聞いてもらってたな。

実家が自営業で自身も起業した彼女は経営者としての見方を持っている。
いつも なるほどな。という意見を言ってくれる。
決してこっちに考えをおしつけてくる感じではない。
降りかかってくる理不尽も彼女の手にかかれば合理性のある主張に変換される。変換できなかったものは本当に意味のないものだと納得する。

彼女の人生観が好きだ。

彼女と話をしていると自分まで素晴らしい人間に思えてくる。
彼女いはく自分の周りにはいい人しか来ないらしい。
そのマインドがいい人を引き寄せてるんだろうな。

この日ばかりは仕事のことも忘れ、たわいないアホな話ばかりした。
4.5時間話した後、彼女はじゃ産んでくるわと一言残し帰路についた。

家に着いて、楽しかったなぁ、また行きたいな。
と余韻に浸っているとふと思う。
あれ?もやもやとか焦燥感なくなってる。なんかすっきりしてる!

彼女はすごい。
勝手にこっちのネガティブを変換してくれるようだ。

持つべきものは友。
困ったときに助けてくれるから、友ほどありがたいものはない。
助けを求めていなくても勝手に助けてくれるのだ。

彼女があえて口に出さなかった出産への不安が少しでも和らいでいればいい。私も彼女の友なのだから。

彼女が無事に出産を終えることを願う。









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