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のっぺらぼうちゃんのぱぱとまま

のっぺらぼうちゃんは、のっぺらぼうなので顔がありません。

そのことで、学校ではいじめにあい、いつも一人ぼっちでした。

だから、自分には価値がないのだと思っていました。
そんな自分が惨めで、情けなくて、こんな子を生んだ両親が、可哀想でなりませんでした。

ある日、のっぺらぼうちゃんは、自分のぱぱに聞いてみました。

「ねぇぱぱ。私のこの顔、どう思う?こんなんじゃなければ良かった?どんな顔の子がよかった?」

今にも壊れそうなのっぺらぼうちゃんに向かって、ぱぱは迷うことなく言います。

「そんなこと、どうだっていい」

のっぺらぼうちゃんは、はっきりしたぱぱの言葉にびっくりして、悲しくなり、今度はままにその話をしました。

すると、
「ままもそう思いますよ」
と、まままでぱぱと同じ意見だというのです。

「ぱぱもままも、私のことなんてどうでもいいんだね!そんな言い方酷いよ!」
のっぺらぼうちゃんは泣きながら叫びました。

すると、ぱぱとままは顔を見合わせ、ふふ、と笑い合います。
「あなたはどうも早とちりしてるみたいですよ。ぱぱもままも、あなたがどんなものを持っていて、どんなものを持っていなくても、あなたのことを大切に思っているの。だから、あなたの顔がどんなだって、関係ないってことなのよ。」
ままの優しい声を聞いて、のっぺらぼうちゃんは顔をあげました。

「そうなの?私がこんな顔だから、興味がないんじゃないの?いらないんじゃないの?」

「何を言っているんだ。おまえは、生きているだけで素晴らしいだぞ。そこにいてくれることが、どんなに奇跡で嬉しいことか。」
ぱぱがそっと彼女の手を握ります。

「じゃあ、ぱぱとままはずっと一緒にいてくれる?みんなはそう思ってくれないもの。なんにもなくて、一人ぼっちで悲しいの。」

ぱぱは少し寂しそうに微笑みます。
「そうしたいけれど、きっとおまえはぱぱとままよりずっと長く生きるから、ずっと見守っているけれど、ずっと一緒にはいられないんだ。だから、おまえは、自分の人生で、自分の大切なものを見つけてごらん。なんにもないなんてことはない。ほら、握っているこの温かい手の奥には、たくさんのものを持っているはずだよ。」

「たくさんのものってなぁに?」

「それは、自分で探してごらん。」
ぱぱはそう言って、握った手を遠くに伸ばしました。

この手が、ヴァージンロードの先で離れた時、のっぺらぼうちゃんは、この日まで出会ったたくさんの人や楽しい思い出、辛い過去、その全てを思い出して言いました。

「あぁ私には、ここまできた勇気と優しさがある。人生を楽しむ力がある。たくさん持ってた。たくさんの人から、たくさん貰ってた。ぱぱ、まま、ありがとう。私、次の未来に行ってくる。」

そうしてのっぺらぼうちゃんは、キラキラの靴を身につけて、広い新しい世界へ、駆け出して行ったのでした。

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