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幸せになりたいエルフの冒険 第十二話 エルフと妬み屋 パート7

エルフの女の子デフィーは、
ダークエルフの女の子フィリア、
人間の女性で作家のシャイルと一緒に
幸せを探す旅をしています。

図書館のある町に、
幸せについて書かれた本を
探しに訪れたデフィー達三人。

その際デフィーとフィリアは、
アージディアと言う女性に出会い
話をします。

図書館のある町に着いた日の翌日、
シャイルの元には
子供の頃に会ったきりの
幼馴染からの手紙が届きます。

手紙には町に有る喫茶店で、
シャイルと二人で会いたいと言う旨が
書かれていました。

シャイルは手紙の相手と会う時間まで、
デフィー達と一緒に
図書館で調べ物をします。
そして呼び出しの時間が近づくと、
デフィーとフィリアを残して
一人で図書館を出て、
指定されていた喫茶店に歩いて向かいます。

指定されていた時間前に
喫茶店に到着するシャイル。
シャイルは知りませんでしたが、
その店は前日にデフィーとフィリアが
アージディアに誘われた場所でした。

店のドアには『貸し切り』と書かれた
張り紙がしてありました。
不安になるシャイルですが、
もう一度店の名前を確認すると
手紙で指定されていた店名と
一致していたので、
ドアを開けて店内に入ります。

店内には、
正面にあるカウンター内に
店主らしき男性が一人立っており、
奥のテーブル席に女性が一人
座っていました。
シャイルはその女性に
見覚えがありました。
女性は子供の頃のまま
大きくなった姿の幼馴染でした。

店主「いらっしゃいませ」

店主はシャイルに挨拶をすると、
テーブル席に居る女性の方を見ます。
女性は店主に対して頷きます。

店主「どうぞあちらのお席へ」

シャイルは店主に会釈をし、
案内された席へと向かいます。
その席では、
幼馴染の女性が
笑顔で待っていました。

テーブルを挟んだ目の前まで
シャイルが近づくと、
女性は席に着いたまま話しかけます。

女性「久しぶりね、
   シャイル。
   私を覚えてる?」

やや表情の曇るシャイル。

シャイル「ああ、
     勿論覚えているさ、
     アージディア・・」

アージディア「まぁ!
       嬉しいわ。
       何年も会っていないのに
       忘れずに覚えていてくれたのね」

微笑むアージディア

アージディア「急な誘いにも関わらず
       よく来てくれたわね。
       さぁ、おかけになって」

アージディアに向かいの席を勧められ、
席に着くシャイル。
すると店主が二人分の
おしぼりとホットの紅茶を持ってきます。

アージディア「どうぞ、
       お飲みになって。
       今日はゆっくり話せるように
       お店を貸し切りにして、
       紅茶も予め
       頼んでおきましたのよ」

店主とアージディアにお礼を言うシャイル、
店主はカウンター内に戻って行きます。

テーブルの上で手を組み、
笑顔でシャイルを見つめるアージディア。
それに対して
シャイルは不安な表情をしていました。

アージディア「どうなさったの?シャイル。
       久々に会ったと言うのに、
       表情が硬いわよ?」

シャイル「・・アージディア、
     今日は何故私を呼んだんだい?」

アージディア「えっ?
       それはどういう意味ですの?」

微笑みながら聞き返すアージディア。

シャイル「惚けないでくれ、
     それにどうして私の居場所を
     知っていたんだい?
     私達は子供の頃に会ったきり
     もう十数年以上も
     会っていないうえに、
     私は旅をしていると言うのに」

真剣な表情で質問するシャイルに、
アージディアは意地悪そうな
笑顔をしながら答えます。

アージディア「居場所を知ったのは偶然よ、
       移動中にたまたまあなたの姿を
       見かけたの。
       そうしたら十数年ぶりに
       会いたくなったから手紙を
       差し上げたのよ?」

シャイル「・・そうだったのかい。
     それにしても、
     何故今更会いたいだなんて?
     幼馴染とは言え
     子供の頃に会ったきりじゃないか」

アージディア「あら?
       暫く会っていないとはいえ、
       私達はお友達でしょう?」

シャイル「・・お友達?」

表情を曇らせるシャイル。

シャイル「アージディア・・
     私達はあまり仲が
     良くなかったじゃないか?」

その言葉を聞き微笑むアージディア。

アージディア「私はあなたのこと
       お友達だと思っていたのよ。
       それなのにあなたったら、
       何故かいつも私のことを
       避けるんですもの」

シャイル「・・あんた、
     自覚が無かったのかい?」

アージディア「?
       何がですの?」

シャイル「私に会うたびに
     何かと因縁をつけては、
     嫌なことを言って
     突っかかっていたのを
     忘れたのかい?」

ほくそ笑むアージディア。

アージディア「そうだったかしら?
       私はあなたと
       仲良くしたいから話しかけて
       あげていただけなのに、
       そんな風に
       思っていたなんて酷いわ。

       それにあなたったら
       まったく私のことを相手に
       してくれなくて、
       避けてばかりいたわよね?」

シャイル「アージディア・・
     あんな接し方をする相手とは、
     私は仲良くは出来ないよ」

大きなため息をつくアージディア。

アージディア「あなたって昔から
       周りのノリに
       合わせられないと言うか、
       空気を読まないと言うか、
       ワガママなところが
       有ったわよね?」

シャイル「例え周りの空気が
     どうであろうと、
     自分が違うと思ったことは
     しなかっただけだよ」

アージディア「それそれ」

わざとらしく呆れた様子で言うアージディア。

アージディア「その態度、
       思い出したわ~
       あの頃のこと。
       本当に昔からそうよね?」

目線を下にやり、
少し考える様子のシャイル。

シャイル「・・確かに、
     昔の私の態度には
     問題が有ったね・・」

申し訳なさそうに言うシャイル、
その態度を見て少し驚いた表情をする
アージディア。

アージディア「あら?
       昔は澄ましてダンマリを
       決め込んでたのに、
       素直じゃない?
       認めるのね?」

アージディアに目を合わせるシャイル。

シャイル「・・そうだね、
     昔は素直になれなかったし、
     周りを受け入れることも
     出来なかったんだ・・」

アージディア「?」

不思議そうな表情をしながら
シャイルを見るアージディア。

アージディア「あなた、
       どうなさったの?
       昔はあんなに意固地だったのに」

シャイル「・・意固地、か・・
     確かにそうだったね、
     すまない。
     そうしなければ
     自分を守ることが
     出来なかったんだ・・

     でもそのせいで、
     周りに迷惑を
     かけてしまっていたのも
     事実だったね」

少し困惑する様子のアージディア。

アージディア「・・あなた、
       本当にどうなさったの?
       昔は私が何を言っても、
       黙ったまま相手にせずに
       離れていくだけだったのに」

シャイル「・・アージディア、
     あの頃はすまなかった。
     当時の私にとって
     あんたのとる態度は辛くて、」

一瞬ためらう様子のシャイル。

シャイル「・・それでいて憎くて、
     仕方がなかったんだ。
     だからあんたを
     避けていたんだよ」

アージディア「・・・」

シャイル「一つ聞かせてもらえないかい?
     あんたの私に対する態度は、
     私の普段の振る舞いに
     原因があったのかい?」

押し黙ったままのアージディア。

シャイル「・・だとしたら、
     すまなかったね。
     あの頃は毎日が本当に辛くて、
     心に余裕が無かったんだ・・

     もし私の態度が原因で、
     あんたにあんな態度を
     とらせてしまっていたのなら、
     本当に申し訳なかった。
     謝るよ」

アージディアに対して
頭を下げるシャイル。

アージディア「・・・」

シャイルは頭を上げ、
アージディアに向き直ります。
するとアージディアは
全身を小刻みに震わせながら、
恐ろしい形相でシャイルを
睨みつけていました。

シャイル「!?」

その様子を見て驚くシャイル。

シャイル「ど、どうしたんだい?
     アージディア・・」

アージディア「・・あなた、
       さっきから黙って聞いてれば
       つまんないこと
       言っちゃって・・」

呟くように言うアージディア。

アージディア「ふざけないでよ!」

アージディアは怒りをあらわにし、
叫ぶように言います。

シャイル「!?」

驚き、困惑するシャイル。

シャイル「アージディア・・
     何故そんなに
     怒っているんだい?」

アージディア「えっ?
       分からないの?
       私はね、
       あなたを十数年ぶりに
       見かけたから、
       久しぶりに会って
       昔みたいにからかって
       あげようと思っただけなのよ?

       それなのに
       すっかり丸くなって
       大人な対応しちゃって!
       何よ!
       馬鹿にするんじゃないわよ!

      『自分が悪かった』なんて
       頭下げて謝っちゃって、
       どういうつもり?
       ねぇ?」

シャイル「アージディア・・」

どうしたらいいか
分からない様子のシャイル。

アージディア「子供の頃から
       あなたのことが
       気に入らなかったのは事実よ!
       でもね!
       あなたの言う所の嫌~な態度を、
       私があなたに対して
       取っていたのは、
       私がしたいと思ったから
       していただけよ!

       それをあなたの普段の行いや
       態度が原因ですって?
       フン!
       何を言ってるのよ?
       この私が、
       あなたごときのとる対応云々で
       いちいち接し方を
       変える訳無いでしょう?
       自惚れないでよ!」

黙って聞くことしか
出来ないでいるシャイル。

アージディア「昔からそうよ、
       あなたはいつも私のことを
       見下してたわよね?」

シャイル「そんなことは・」

アージディア「黙りなさい!
       私がそう思ったんだから
       そうなのよ!」

シャイル「・・・」

アージディアに圧倒され
黙ってしまうシャイル。

パート8につづきます。

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