見出し画像

幸せになりたいエルフの冒険 第十一話 エルフと願いを叶える実 パート6

エルフの女の子デフィーは、
ダークエルフの女の子フィリア、
人間の女性で作家のシャイルと一緒に
幸せを探す旅をしています。

夕暮れ時に宿を取る為、
ある町に立ち寄ったデフィー達。
その町には濃い霧が発生しており、
デフィーはフィリアとシャイルと
はぐれて一人になってしまいます。

その際デフィーは霧の中で、
占い師を名乗る若い女性の
ルフトシュに出会います。

ルフトシュはデフィーに、
食べれば願い事が叶うと言う
『アギベデの実』を渡して
去ってしまいます。

その後無事にフィリア達と
合流することが出来たデフィーは、
宿の食堂でフィリア達に
ルフトシュやアギベデの実の話をします。

デフィーはアギベデの実のをどうするべきか
フィリアとシャイルに意見を聞きますが、
二人はデフィーが実を使うことには
反対だと言いました。

フィリア「デフィー・・
     僕達が今こうして
     旅をしているのは、
     幸せを探す為だよね?」

デフィー「ええ」

フィリア「もしかしたら
     その実の力が本物で、
     幸せを願うことで
     君の願いが叶い、
     幸せになれるかもしれない・・」

デフィー「・・・」

フィリア「幸せになる為に
     旅に出たんだから、
     可能性が有るのなら
     試してみるべきなのは
     分かっているんだ・・

     でも、
     それが分かった上でも
     不安なんだ。
     君がその実を使うことが・・」

デフィー「フィリア・・」

フィリア「その実を使えば、
     もしかしたら
     幸せになれるかもしれない。
     でも、
     代わりに何かを失って
     しまうかもしれない・・

     何より、
     その実が本当に
     願いを叶える実なのか
     どうかは確証が無い・・

     怖いんだ・・
     君の身に何か良くないことが
     起きてしまうかも
     知れないことが・・」

デフィー「・・・」

二人のやり取りを見守るシャイル。

フィリア「ごめんよ、
     デフィー・・
     せっかく幸せを手に入れる
     チャンスなのかも
     しれないのに、
     こんなことを言ってしまって・・

     だけどね、
     君がその実を
     使うことに反対なのは、
     僕の勝手な思いだ。
     だからもし君が
     その実を使いたいと
     思うのなら、
     僕やシャイルの意見に
     構わず使うべきさ」

シャイル「うん」

デフィー「・・・」

デフィー達は押し黙り、
数秒程無言の時間が続きます。

デフィー「・・私、決めたわ」

フィリア・シャイル「・・」

デフィー「この実は
     使わないことにするわ」

フィリア・シャイル「!」

フィリア「えっ、でも・・」

シャイル「・・・」

フィリア「ごめんよ、
     僕のせいだね・・」

シャイル「いや、
     私があんな話を
     してしまったから・・」

デフィー「いいえ、
     違うんです二人共。
     この実を手渡されてから、
     ずっと迷っていたけど、
     どちらかと言うと
     使う気にはなれないでいたの」

フィリア「そうなの?」

デフィー「ええ」

シャイル「何故なんだい?」

デフィー「このアギベデの実のが
     ルフトシュさんの言う通り、
     本当に願いが叶う果実
     だったとして、
     それでこの実を食べて
     幸せになれたとしても、
     それは本当の幸せでは
     ないんじゃないかって
     思うんです」

フィリア「?
     どうしてなの?」

デフィー「だって、
     その幸せは
     自分の力で手に入れた
     幸せではないから」

フィリア・シャイル「・・・」

デフィー「それに、
     ルフトシュさんは
     言っていました。
     願い事は強く思わなければ
     叶わないと・・

     私は自分の望む幸せが
     まだどんなものなのか
     分かりません・・
     だからそれを強く思うことは
     出来ないと思うんです。

     もし仮にこの実を
     食べたとしても、
     幸せになりたいと言う願いを
     叶えることが出来ない
     かもしれません」

フィリア「デフィー・・」

シャイル「デフィーちゃん・・」

デフィー「それに、
     二人の意見も聞いたら
     尚更です」

フィリア・シャイル「・・・」

デフィー「だから私、
     この実は使わないことにします」

フィリア「・・本当にいいの?
     デフィー?」

デフィー「ええ」

シャイル「すまないね、
     私達が反対して
     しまったばかりに・・」

フィリア「うん・・」

デフィー「いいえ、
     二人が貴重な意見を
     聞かせてくれたことに
     感謝しています。
     それに、
     私のことを心配して
     くれる気持ちも
     嬉しかったです。

     そのおかげで、
     この実を使うかどうかを
     自分で決めることが
     出来たんですから」

シャイル「デフィーちゃん・・」

フィリア「デフィー・・」

デフィー「でもそうなると、
     この実をどうしたら
     いいのかしら?」

その時、
デフィー達の近くの席に座っていた
中年の男の客が、
意を決したように突然
席から立ち上がります。

デフィー・フィリア・シャイル「!?」

男が突然立ち上がったことに驚き、
男の方を見るデフィー達。

立ち上がった男は
デフィー達の居るテーブルの方へ
ズカズカと速足で近寄り、
デフィーの目の前まで来て立ち止まります。

男の髪はボサボサの短髪で
顎に無精髭を生やし、
着ている服は袖口や襟元が
所々小さく解れていました。

男の突然の行動に警戒するデフィー達。
フィリアとシャイルは席から立ち上がり
万が一に備えます。

男「すっ、すいません・・
  あのっ・・
  申し訳ない、
  決して盗み聞きを
  するつもりでは
  なかったんだけど、
  今の話が
  聞こえてきてしまって・・」

男の様子を窺うデフィー達。

男「そっ・・
  それでっ・・そのっ・・
  今話していた
  その実のことなんだけど・・
  使わないのであれば、
  も、もし良かったら、
  俺に譲っては
  もらえないだろうか?・・」

デフィー達「?・・」

男「と、突然
  こんなことを言っしまい
  すまない。
  俺はオルアディって言うんだ、
  今していた話が本当なら、
  俺にはどうしても叶えたい
  願いが有るんだ。
  だからお願いだ、
  お嬢さんがその実を
  使わないと言うなら、
  俺にその実を譲ってくれ!
  頼む!」


パート7につづきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?