食事指導をした私が、逆子が改善しない患者に伝えた本音

食べることが大好きです。
そして記憶も食べ物と関係するものばかり。

おばあちゃんがなくなったときは、フェリーでもらった干しブドウ。
おじいちゃんの民宿では、タイのおさしみをもっと食べたかった。

フランスに行っても蝸牛を食べたことがメインで、6年前のドイツ旅行はフランクフルト空港で食べたウサギが本当においしかったです。

食事は血となり肉となる以上に自分を作るツール。さらに言うと、「からだに悪いから〇〇はダメ」「病気を治したければ××」と言われても、従えなかった時は罪悪感しか生みません。


そんな私が一時期、食事について指導していたことがあります。指導と言っても、これを書くと、賛否両論が置きそうですが、、からだに良いか悪いかを特殊な方法で判断していました。

要はその人に合った提案が出来るのです。『当たる』というと本当に不謹慎ですが、避けた方がいいものは実生活と合致することが多く、必要に応じてですがアドバイスしていました。


ある日、逆子の妊婦さんに対応しました。逆子には鍼灸でよく使うツボがあります。通常の妊婦さん治療も行い、そして逆子対応もしていました。食べ物のいくつかをNGとしてご提案。ちなみにこの方は日本在住の海外の方で、とてもヘルシー志向が高く、丁寧な暮らしをされていました。

で、肝腎の逆子対応ですが、なかなか改善しませんでした。

「なんで治らないんだろう」

思ったような成果が出ない時は、原因を探しますよね。あれがダメなんじゃないか、これがダメなんじゃないか。

ねてる?
悪いもの食べてない?
〇〇はからだに悪いからとっちゃだめだよ。

皆さんこれを患者の立場で聞いたらどう思います?

私はこういう言い方が嫌いなんですよ。それは当時も今もでして。思うような結果が出ない時に、患者に何を伝えるかって、本当に大事なんですよね。

妊婦さんにも同じでした。改善しない。

もう間もなく帝王切開のスケジュールを決める時期になっていました。その空間は割と深刻で、空気ってこうも固まるんだなと肌で感じました。

その日も、身体への見立ては、やはり(当時は)食べ物の影響もあるかなと。でも言いませんでした。その迷いを感じ取ってか、妊婦さんが私に尋ねました。

「アナタナラドウスル?」と。普段は私にそんなことを聞いてこなかった彼女が、聞いてきた。すごくすごく迷っていたんですよね。

どう言えば彼女を傷つけることなく、そして次のステップを肯定的に捉えられるかと。

しばらく時間が流れて、その間も彼女は私がしゃべるのを待ってくれました。

意を決して私は口を開きました。「これは私の本当に個人的な意見なんだけど、、」と。

すると「ハイ。ワタシハソレガキキタイ」。

そう、私のopinion が知りたいと。だから覚悟を決めて言ったんですよ。


「わたしならマックに行く」と。


やっちまった。絶対ふだんからマックになんて行かないような人。すごく丁寧な生き方をされている人。その人に、なんて失礼なことを、そしてなんて今までの提案を台無しにするような一言を言ってしまったのか、、

もう明らかに時が止まって、私は後悔しかけたのですが、、

妊婦さん大爆笑。

「アナタガタダシイ」と。その後は、空気が一転して、とてもピースフルな空間になりました。終わった後もすごく私に迷いがあったのに、「ダイジョウブ、ワタシマックイクワ」と。

その後人づてに帝王切開で無事出産したこと、私のアドバイスを喜んでくれていたこと、そしてご主人にも「マックノヒト」と覚えられていたことなどがわかりました。


役に立ちたいし、症状の改善やしっかりと対応方針を組み立てることもしたいけど、結局人を動かすのは、それだけではないと、あの日学んだわけです。

その後私はその指導法をやめ、そして分子レベルの栄養学も深く追求しませんでした。

その理由は学術的なものもあるけど、結局は小さい頃からの食べ物体験を通じて、理屈ではない部分で思うものが支えているのだと思います。

最近は、ビックマックを食べると胃がもたれるようになりました。

おわり





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