リバプール南野拓実「徹底分析」〜クロップが熱望した日本人が持つ5つの役割と期待〜 【LFCマガジン】
1月5日、日本人で初めてリバプールの選手となった南野拓実が、FA杯 エバートン戦で先発デビューを飾った。昨年10月のチャンピオンズリーグではザルツブルグの選手としてアンフィールドでゴールを奪うなど、リバプールを大きく苦しめたプレーヤーだ。彼の衝撃的なプレーは、アンフィールドのファンを魅了した。すでに加入前から、この日本人の虜になっていたのだ。期待しないわけがない。正式にリバプールのプレーヤーとなった今後は、主にサディオ・マネ、ロベルト・フィルミーノ、モハメド・サラーに続く新たな攻撃のオプションとしての活躍が求められていくだろう。特に、長期に渡り代役がいない前線3枚の中央、フィルミーノが務めるポジションで、いかに彼と同等のパフォーマンスができるかが焦点となっている。
本記事では、試合分析で約20万人の登録者を誇るNoumanによる、南野が前所属であったザルツブルクで担ってきた役割を紹介し、フィルミーノとの比較、そして期待できる働きを提示したい。そして、同ポジションでのデビューとなったエバートン戦ではその役割が果たせていたのかを『Liverpool Echo』の記事を元に考察する。
南野がザルツブルグで担った役割
ポジションは?
南野はザルツブルクでは主に4-3-1-2のトップ下のポジションを務めていた。相手DFとMFの2ラインの間スペース(以降ライン間とする)を見つけ、後ろ3枚のMFと2トップの攻撃の架け橋として君臨。リバプールは基本的に4-3-3の布陣ではあるが、攻撃時にはフィルミーノがポジションを2列目にずらし、サラーとマネを2トップのような形にした4-3-1-2の形をとり、フィルミーノが南野と同様の役割を担っている。
Nouman 動画より
ライン間の動き
フィルミーノはライン間でボールを受けた時、即座に前を向いて相手DFラインの裏へボールを供給する。そこからサラーとマネに展開していくのが基本だ。南野も同じく、ライン間のスペースに入り、2トップを務めるファン・ヒチャンとアーリング・ハーランドへの展開を常に狙うプレーで相手守備陣を苦しめていた。
Nouman 動画より
オフ・ザ・ボールの動き
攻撃時のオフ・ザ・ボールの動きにも彼らには酷似する点がある。両チームともボールがペナルティエリアに近づくにつれ、前線2枚がゴールへと近づく動きを取ることでディフェンスラインをペナルティエリアへと引っ張る動きが目立っている。そうすることで2トップの背後には広大なスペースが生まれる。そして両者ともにあえてテンポを遅らせてそのスペースへ侵入することでフリーでクロスやパスを受けることが出来るのだ。
Nouman 動画より
アンフィールドで南野がボレーシュートを叩き込んだシーンはまさにそれによって生まれたゴールだ。失点時に敵チームながらクロップに笑みが溢れたのも、彼がフィルミーノの代役として適任だと確信させたからだろう。
ワイドへの動き
これは南野特有のプレースタイルとなるが、ザルツブルグは前線の2人が中央に絞る動きが目立っていた。そうすることで、2人の横のスペースが出来る。南野はボールを受けるために両ワイドへ走りそのスペースへ侵入してボールを要求、受ければ質の高いクロスを供給する。このゴールパターンはザルツブルグが得意とするものだ。
Nouman 動画より
これはフィルミーノにはあまりない動きであり、新たな攻撃パターンとしてオプションに加えられることが期待できるだろう。
守備時の貢献度の高さ
フィルミーノの持ち味はなんといっても守備での貢献度の高さだ。ファーストディフェンダーとしてチームの為に走りボールを奪い、すぐにポゼッションへ繋げてチャンスを幾度となく作ってきた。
Nouman 動画より
南野がセレッソ大阪からザルツブルク加入した際、スポーツ・ディレクターとして移籍に大きく関わっていたとされるラルフ・ラングニックは南野について、高い位置からのプレッシャーから、縦に素早い攻撃を仕掛けられる選手だと述べている。彼も同様にチームの為に守備を怠らない選手だ。相手としてリバプールと対戦した際も、激しいチェイスからボールを奪い攻撃へ展開するシーンは多く見受けられた。
エバートン戦 徹底分析
前線3枚の中央で先発を飾った南野は70分間プレーをし、オックスレイド=チェンバレンとの交代でデビュー戦を終えた。一概的に見ると、彼がボールを持つシーンは多くなく、比較的控えめで、特にスポットライトを浴びることは無かった様に見える。しかし、指揮官であるユルゲン・クロップは彼の貢献を賞賛していた。「彼はスーパーだった。素晴らしい。まさに我々が求めていた選手」と試合後に述べたほどだ。彼の貢献は実際にどの様なものだったのか。
Echoは試合での役割はフィルミーノが普段担っているのと同様、中盤3枚と前線の攻撃の架け橋となるものだと分析していた。
実際に以下の画像の様に南野はライン間のスペースへポジションを取り、味方のパスの選択肢として積極的にボールを要求するシーンが目立っていた。これにより、チームメイトに相手ミッドフィルダーのラインを破るパスオプションが提示できることになる。
画像出典:Liverpool Echo
前半27分には彼にライン間のスペースでボールが与えられた時に特徴的な瞬間が見受けられた。南野はボールを前にコントロール、エバートンのディフェンスに向かってドリブルしたのだ。リバプールがベストな布陣を揃えていれば、この時にサラーとマネが相手ディフェンダーと駆け引きしていることになる。相手にとっては非常に危険なシーンになるはずだ。南野はそれが出来るポテンシャルを垣間見せた。
Liverpool Echoより
画像出典:Liverpool Echo
他にも印象的なシーンがあった。前半、南野はチームメイトをサポートするために距離を縮め、イェリー・ミナはそれに気づいてわずかに南野に接近した。彼はミナが動きを調整したことに気付いた直後、以下の画像の様に彼の後ろのスペースに飛び込んだのだ。この巧妙な動きによって、彼の戦術的な認識が既に高いことを自ら示した。
Liverpool Echoより
画像出典:Liverpool Echo
画像出典:Liverpool Echo
これらの貢献に加えて、南野はまた、フィルミーノが通常行っているのと同様に、相手に向かって狙いが無く走るのではなく、パスコースを切るように距離を縮めてチームのプレッシングを頻繁に扇動していた。結果的に見ると彼のデビューは静かではあったものの、これらのシーンを見れば、フィルミーノが不在でも彼は同様かそれ以上のパフォーマンスが可能だと示すことが出来ていたのではと考えられる。強調したいのは、彼はまだチームトレーニングを1度しか参加していない状況であったということだ。彼の潜在的な能力の高さ、そして戦術把握の速さには疑いの余地がないだろう。
Liverpool Echoより
改めて分かるのは、これらの要求の高いタスクを毎試合ナチュラルにこなしていたフィルミーノの凄さである。マネやサラーがワントップを務めた時でも彼に匹敵する様なパフォーマンスが出来ていない訳で、今まで代わりが見つからなかったのは無理もないだろう。だからこそ、この日本人の加入はリバプールがチームとして生半可な気持ちで獲得した訳では無い事が分かる。彼のプレースタイルを分析した結果、ブラジル人FWの代役が務まるという判断が確実に背景としてあったのだろう。そして彼はデビュー戦で早速その可能性を示した訳だ。
クロップは南野について、「私たちは彼から、“更なる質”と“異なる質”がもたらされることを望んでいる。」と話した。“更なる質”というのはチームとしての選手層の厚さやパフォーマンスの向上に対してのものだろう。“異なる質”、これは南野自身のプレースタイル特徴や個性がチームに新たなエッセンスとして加えられ、戦術により幅がもたらされることを大きく期待しているのだと読み取れる。「素晴らしいデビューを果たしたタクミ・ミナミノ。彼のプレーは、若手にとって多くを学ぶことのできる、良い手本だ」クラブの生ける伝説 ケニー・ダルグリッシュにまでデビュー戦でそう唸らせた。
未知への挑戦。日本代表エースのリバプールでの物語の1ページは、まだめくられたばかりだ。
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