仮想現実でドキドキ♡ロッカー密着シチュエーションを体験できるようにした話
「!?」
「どうしよう!誰か来る!」
「とにかくこっち!」
「ちょっ!こんな狭いところ」
「いいから早く!」
放課後の教室、窓から差し込む夕日、掃除用具入れに隠れるふたりの身体は否応なしに密着し、次第にお互いを意識するようになる…
ラブコメ作品のロッカーシチュエーションは、我が国の誇る伝統文化だ。
しかし、それはあくまで創作の中の話。誰もが知っているが、誰も経験していない。(私が男子校出身だからですか?)
そんな全オタクが憧れるロッカーシチュエーションを体験できるようにしました!仮想現実で!
制作記
エウレカ!
いつものようにぽこ堂で雑談をしていると、誰がこう叫んだ。
「ぽこ堂、ガチ恋距離実装してるじゃん!」
ガチ恋距離とは、「本気で恋をしてしまいそうなほど近い距離」のことである。しかし実装とは…?
聞くと、VRChatのワールドは、対象が一定距離に近づくとグラフィックが描写されなくなる設定が標準的だが(Culling距離)、その距離を最小値に設定すれば、限りなく対象へ近づことができるのだという。その設定のことを「ガチ恋距離を実装する」と表現するらしい。
そこで考えた。
「『ガチ恋距離』という概念を最大限に発揮させるにはどういう仕組みが必要か。」
そこで、ロッカー密着ドキドキシチュエーションを思いついた。
つくるしかない
ひらめくと作らずにはいられない。BOOTHでロッカーを検索。あるんか〜い。しかもたくさん。結局、クオリティが高いのに100円で売っていたこちらのロッカーを購入。
教室のアセット、夕焼けskybox、環境音は野球部や吹奏楽部の活動の音や声が聞こえるようにした。忘れずにガチ恋距離も実装する。
ロッカーのサイズは、実寸だと全く身動きが取れないため、高さは1.1倍、奥行きは1.4倍に拡大している。実際、外から見ると異様に大きい。
また、フレンドから「ロッカー内の棚が頭に当たる」という助言をもらい、撤去している。ロッカー内にはその名残で謎の影がある。
タイトルは「Just ロッカー」「ラブコメ・ロッカー」などの案もあったが、より情緒(?)のある「放課後のロッカー」に決めた。
ワールドの紹介文は、いきなりロッカーの中だとビックリするだろうから、入るまでの経緯をそこで説明することにした。
ワールドの定員は3人に設定した。仲の良いふたりがいちゃついているときに、それを知らないフレンドが入って見てしまったら面白いかなと思ってその設定にしたが、当時そもそもその設定は設定数の倍の人が入れたので、6人入れることになってしまった。残念。
着手からたった2日で完成した。
公開とその反響
リリース直後、当時の私のフォロワー数にしては盛り上がった。しかしそれ以上に、ユーザーの紹介ツイートがバズったおかげで多くの人に知ってもらうことができた。
また、フレンドの、「invite onlyで入っていたはずなのに別の女の子が出現した」という話が盛り上がり、「放課後のロッカーには幽霊が出る」という噂が出たりもした。結果的に盛り上がりの一部を形成していたように思う。
体験者からは、「人生の夢が叶った」「幸せ空間」などの感想をたくさんいただけた。また、ロッカーで様々な出会いもあったようで、作ってよかったと感じた。
特に、こういったネタワールドは作っているうちに面白さが分からなくなり、虚無感に囚われてしまう。たとえつまらなく感じても、最後まで作り上げて世に出すことが大切だと痛感した。
その後
アップデートの数々
VRChatのワールドはとにかく寿命が短い。すぐに飽きられてしまう。いつまでも利用されるワールドは全体のごくごく一部である。一発ネタワールドならなおさらだ。
人の入りが減るたびに手を変え品を変え、次のような延命措置アップデートを行った。(歴代ポスターはこちら)
・プールの更衣室のロッカーを追加
・ロッカーの中を監視できる別室を追加
・ロッカー内にセミを出現させるスイッチ
・ロッカーサイズの一時的な縮小
・ロッカーを輪切りにして撮影できるように
・ロッカー内に雪を降らせる
・満員電車・とび箱の中・教卓の下を追加し、総合密着ワールドに改修(教室にも出られるように)
・催眠アプリの設置
もはやネタ切れ気味ではあるが、やはり教室に出られる今の設定は良くない気がしている。狭い空間のまま、いろんな空間に移動できる仕組みが必要だ。
また、訪問者が1万人を超えた際は、記念に「ロッカーに40人で入るイベント」を開催した。当初は20人程度しかいなかったが、参加者たちが「絶対に40人集める」と人を呼び寄せてくれ、ついに40人集まることができた。外から見ると完全に地獄で草
イベント時はすべてのギミックを取り去ったシンプルな状態で行った。放課後のロッカーのファンの方が、初めて来て困惑している人に「ここはロッカーの中で密着するワールドで、普段は中を監視できる部屋に飛べたり、セミが出るスイッチがあって…」と一生懸命説明してくれていて、端からみると完全に「おまえは何を言っているんだ」状態であるが、自分のワールドを他人が説明してくれているのは嬉しい光景である。
自身の変化
そんなこんなで、自称「バーチャル僧侶」は「例のロッカーの人」という名声(?)を得ることとなった。これが良かったのかどうかは分からないが、その後私はすっかりワールド制作の楽しみにハマってしまったのだった。そういう意味で、このワールドは大きな転換点であったと考える。
また、放課後のロッカー関連のツイートにお墓の宣伝を載せることで、沢山の人に知ってもらえた。これに味をしめ、「ツイートをバズらせてお墓の宣伝をする」という生臭なスタイルがしばらく続くこととなる。
放課後のロッカーとは何だったのか
我々は仮想空間の中で身体感覚を持つに至った。
どのように?
まず目に映る自分の手。次に鏡や自撮り。自分の身体やその動きを自分の目で捉えることにより、自分の身体を発見し、自分のものと認識する。
そして、おそらくもうひとつが他者の身体との触れ合いなのだろう。好みの容姿の人に近づけば、目の前にその顔があれば、手や体が触れ合えば、ドキドキする。他者のアバターを通した自身の感情の高ぶりにより、自分の身体を仮想空間の中で再発見する。
「自分の身体がここにある」という感覚が強くなればなるほど、VRは楽しくなる。
仮想空間内で獲得した身体感覚やアバターコミュニケーションの最も根源的な部分を濃密に体験できる空間。それが放課後のロッカーなのだ。
https://vrchat.com/home/world/wrld_b6592e60-7b8f-454f-9f76-9e816d9f8dac
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