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2023/05/09 癒しと愛とミステリー 

加藤シゲアキさんの著作『チュベローズで待ってる AGE22/AGE32』を読了しました。
主人公が歌舞伎町でスカウトされホストになり、そしてそれを家族などに隠しながらも同時に就活を続け、ある女性と出会う物語。赤と黄色の二冊で構成されるこの物語は、主人公が体験する十年という月日を得て衝撃的な展開を迎えることとなります。

話は変わりますが。
人を癒す、愛する、愛されるということは、時に嘘を吐くこととイコールになります。
職業で言うならばアイドル、役者、ガールズバーやクラブなどのフロアレディ、バーテンダー。多分他にもたくさんあることでしょう。
私はこれら全ての職を体験しましたが、これら全ては嘘を少し混ぜた上で成立する職業です。アイドルや役者は人気のためなら何かを隠したり、反対に思ってもないことを言わなくてはならなかったりします。フロアレディもそうですね。バーテンダーも似たような部分があり、目の前のお客様を癒し、愛してゆくことを目的として、お客様に対して基本的に敵意を向けることはなく、むしろそれが自分の意思に反することでも、何もかもを肯定していくような過程が時に発生します。

私が読んだ『チュベローズで待ってる』そのものの物語は、嘘というよりホストや企業の舞台裏を描いた作品です。ですが私がこの本から感じ取ったのは、嘘や欺きの影にある優しさでした。同時に、真実が暴かれてゆく残酷さ、優しさや愛しさ故に起きてしまう事件も描かれています。それらが絡み合いミステリーになる。故に人が傷つき、傷つけ、癒され、癒しを与える側にもなる。そして愛して愛される。

嘘や偽り、それ以外にも、何かが起きることには必ず理由があるのが物語における基本的なセオリーです。どんなことも長期的な目で見ればきっと、何もかも意味のあることなのだと思います。

『チュベローズで待ってる』はなかなか刺激的で面白い本ですので、書店でお見かけの際は是非お手に取ってみてください。


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