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ニュージーランド ジャシンダ・アーダン首相辞任に思うこと

先週から、突然のショッキングなニュースにニュージーランド中が大騒ぎとなりました。ジャシンダ・アーダン首相が辞任を発表。すでに次期首相も決まり、先ほど首相としては最後の国会を後にしました。(25日)

辞任会見中、彼女の口から出た理由は以下でした。
「国家を率いるのは、考えられるなかで最も特権的な職務であり、より困難な仕事の1つでもある。タンクが満杯で、予想外の課題に備えた余力も少しなければできないし、すべきではない」
37歳で首相となり、国の女性首相としては3人目で、5年半の職務を経て、10月の総選挙をもって政治家も辞めるとしています。今後は、小学校が始まる一人娘の送り迎えをすること、現在事実婚のパートナーとの結婚を望んでいるといいます。

昨日(1月24日)の首相としての最後の参加行事はニュージーランド先住民のマオリ族のイベントでした。終始マオリに寄り添った、彼女らしい選択だと感じました。

これを機にジャシンダのことをここでまとめてみたいと思います。(ちなみに私は、いわゆる「ジャシンダマニア(盲目的に彼女が好きなを揶揄しているような表現・笑」)寄りなので差し引いて読んでくださいね。)

首相就任後に、妊娠&出産

・インタビューで司会者が、「女性は新しい仕事を始める前に妊娠の予定があるかどうかを雇用主に伝えるべきだ」と提案した後、反撃。「女性が職場でその質問に答えなければならないと言うのは、2017年には全く受け入れられないことです。」回答。 (2017年)

6週間の産休を取得支持率も上昇。(41パーセントに1ヶ月で4ポイント上昇)子育てはパートナーが担う。(2018年)

子ども同伴で国連の会議に参加する。赤ちゃんを連れて、国連に出席をする歴史上初めての首相に。(2018年)

フェミニストとして

 「私はフェミニストよ」と明言(2019年)。また、首脳会談したニュージーランドのアーダーンとフィンランドのマリン首相(37)が首脳会談した際に、「年の年の近い女性同士だから会会談したのか?」と聞かれ、オバマ元米大統領とジョン・キー元ニュージーランド首相の名前を挙げ、「2人が会ったとき、同い年だから会ったのかと尋ねられたことがあったでしょうか」と反論。(2022年)

素早い対応とリーダーシップ

・クライストチャーチのモスクでオーストラリア人テロリストにより51人が射殺される銃撃事件が起こった直後に銃規制を行う。(2019年)
「私は、モスクを襲撃した男の名を決して口にすることはしません。過激なテロリストには、名前など必要ありません。どうか皆さん、人殺しの名前を口にするくらいなら、亡くなった尊い命の名前を呼んでください。武器が大量かつ簡単に手に入れられる時代を終わらせなければいけません」

コロナ対策で、素早い対応と「コロナ根絶」を目指し、世界から賞賛される。

多様性を尊重

LGBTQのプライドパレードに首相として初めて参加(2018年)ちなみに議員時代には反トランプのデモにも参加。

・ニュージーランド先住民マオリ語の義務教育に賛成、マオリ族の新年であるマタリキを国民の休日に。

・アーダーン率いる労働党が圧勝した、第二期政権では、20名の閣僚のうち、8名が女性、5名がマオリ、3名がパシフィカ(太平洋島嶼諸国住民)、3名がLGBTQ+という、多様な背景を持つリーダーたちが結集。(2020年)

その他にも、気候変動に対する取り組みでは、新たな海洋石油・ガス探査の許可を禁止し(2018年)、2025年までに使い捨てのビニール袋 の使用も禁止するとしました。また生理用品の学生への無料配布を決定したり(2021年)、紙たばこを「生涯禁止」(2009年以降生まれを対象)にすることも決定。(2022年)中絶も合法化。(2022年)

ただ、ニュージーランド調査史上最高の59.5%という最高の支持率を記録した彼女が、ここ最近は、労働党の支持率は33%と、最大野党・国民党を5ポイント下回り、首相として適任であるとの評価はアーダーン首相が29%と、就任以来最低の数字となりました。(けれど、この数字は、もう一つ最大野党の国民党党首よりは高い。)

アーダーン首相の辞任に思うこと

政治って、こうやって人が入れ替わり新陳代謝を良くしていくのが、本来あるべき姿なのでは、それが辞任の第一報を聞いて思ったことでした。今回の辞任は、物価上昇による支持率の低下で、次は勝ち目がないからだろう、と理由の見方もあるけれど、コロナ禍において彼女は責務をもう十分に果たしたし、しばらく家族と過ごす、真っ当で腑に落ちる辞任でした。

そして彼女は最後まで、リーダーはどうあるべきなのかという姿を示してくれていたと、感じています。地位にしがみついて続投したり、選挙に敗北して辞任するわけじゃない。家族と過ごすため、暮らしの質のために潔く職を去る。
これからも、そんなことができる人が国を率いることを望むし、改めてかっこいいなと思いました。彼女の表現でいう「タンク」がいっぱいになったら、政治に戻ってきてほしい、心からそう思います。

マイノリティに優しかったこと、多様性を尊重したこと、コミュニケーションを国民と取ろうとする姿勢があったこと、多様性を目指してたこと、貧困問題を解決しようとしてたこと(結果住宅費高騰や子供の貧困、格差が今は山積してるけど。)
彼女の政治的立場にはいつも人間的な姿、「一人の母親として、子どもと同様国の未来を明るいものにしようとする」という意思を垣間見ることができたように思います。

一方で、ミソジニストや反ワクチン派の攻撃からも常に晒され続けた人
私も全ての彼女の政策に賛成ではないし、批判をすることは簡単だけど、トップに立って適宜判断してくて、本当に難しいことだと思う。

けれど、「分断ではなく、エンパシーをもち、チームである」ことを全面に出して政策やメッセージに反映したことが印象に残っています。コロナ対策では盛んに「チーム」という言葉が使われました。

やっぱり彼女の功績が一番大きいのは、言葉を尽くして、政治に人間的な正直さと前向きさを取り入れたことなんだな、と。見方によってはだいぶ青臭くいけど、機械のように受け答えをして台本通りでしか答弁しない政治家よりずっとずっと良いと思う。

「個人でできることは大きいのです。違いがあれば豊かになり、分断によって、貧しくなります
”What we do as individuals in these spaces matters too ... we are the richer for our difference, and poorer for our division”

これはハーバード大学で彼女がスピーチした、民主主義と、ネット上の偽情報、そして優しさをテーマに説いた言葉です。今の時代における、彼女の葛藤と哲学が詰まっているように感じます。

こちらの動画をもって、今回は締めくくりたいと思います。


2021年。ジャシンダアーダーン元首相と。宝物の写真。真っ直ぐ目をみて、一人一人と話してた姿が印象に残っています。