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洞爺湖ぐらし#7 念願の素敵なカフェへ~ゴーシュ~

今日はずーっと心待ちにしていた、あの場所に行く日。

私が洞爺湖に行きたいと思うきっかけになった”しあわせのパン”で、実際に使われていたカフェ”ゴーシュ”に行く日です。

最近は土日の13:00~17:00までしか営業していないとのことなので、なかなか行けず…このカフェに行くためにお願いして日曜日にお休みをいただいたのでした。

もちろん行く交通手段は、徒歩かバスしかありません。以前で徒歩で行く辛さを味わったので、今回はさすがにバスに乗って行くことに。

やっと行ける日が来たのだと思うと、朝からなんだかそわそわしてしまいました。

バスに20分ほど乗り、さらにそこから15分ほど坂道をのぼっていくと、映画でも見たあの並木道が見えます。

その向こうに木でできたあのお店が。

オープンの13時頃やっとお目当てのカフェに到着。

せっかくなので、洞爺湖を望むことができるいい席に座りたくて早足で向かったのですが、着いた時には誰もいなく…

この日一番のりで来れたようです。

扉を開けると、木のいい香りとともにまず目に飛び込んできたのは、洞爺湖の景色を存分に味わうことのできる大きな窓。

その窓に面したテーブルが1つ、右横のテラスに面したテーブルが2つ、左のキッチンごしのカウンターテーブルが1つ。席は10席ほどで、ピアノや本棚が置いてあります。全て木でできていて、ランプの優しい光が灯る明るい店内。

映画に出てきたあの”マーニ”そのもの!!椅子やテーブルの配置は少し違っていたし、映画で見たより狭く感じましたが、雰囲気も含め映画で見た世界のままでした。

憧れていたお店の様子に感動していると、奥から静かで穏やかな女性の方が。”お好きな席どうぞ”とのことなので、迷わず洞爺湖が見渡せるいい席に座ることにしました。

メニューは数種類の珈琲とハーブティー、ほうじ茶、そしてチョコレートのみ。迷いましたが、ゴーシュブレンドaという中煎りの珈琲とチョコレートを注文。

このお店はとっても静か。

BZMはかかっているもののオーナーさんも含め、お客様もわいわい大声で話す人はいないし、扉の音もしないので誰かお客様が入ってきても気づかないほど。

ただゆったりとした時間が流れています。

正面にある大きな窓からは、洞爺湖を見渡すことができ、まるで額縁に入った一枚の絵のよう。ずっと見ていられます。

そういえば、私は数年前から美術館に行くのが好きで、気に入った風景画があると永遠にその絵を眺めていられるな…と思うのですがその感覚に似ている。何もせず一生この景色を見ていられる…と思いました。

このお店、カフェ兼お家でもあるということで、外観ももちろん店内もメニューも全て撮影は禁止されています。

いつもなら、いい景色に出会うといい写真を撮ろう!とシャッターを夢中できってしまい、景色を楽しんだり、ご飯を味わうのが二の次になってしまうのですが

ここでは、写真を撮らない分本当にゆったりとこの景色や雰囲気を楽しむことができる。

写真が残せないからこそ、この景色をじっくり眺め、少しでも長く心にとどめておきたいと思うのでした。

しばらくすると珈琲のふわあといい香りが。木のトレーの上には、白いおしゃれな器に入った珈琲と3かけのチョコレート。

珈琲を一口飲むと、絶妙な苦みと甘みとコク。苦みは最初に感じられるのですが、ずっと残るわけではなく、すーっと消え、最後に残るのは鼻にぬける心地よい珈琲の香り。

美味しい…。

チョコレートは甘すぎず、ビターすぎずちょうどよい味わい。口の中にさああ~っと広がりとろけていきます。

このカフェに来るときは絶対本を持ってこようと思っていたのですが、ここで読むのに選んだのが「ライオンのおやつ」という小説。

普通に読もうと思って一回寮で本を開いたのですが、少し読んで

”あっこれは今読むべきではない、あのカフェに行った時にじっくり読もう”

とわざわざ棚に戻して、読まずにとっておいたのでした。

小川洋子さん著書の「ライオンのおやつ」は、余命を告げられた女性が主人公。瀬戸内海のとある島のホスピスで残りの日々を過ごすと決めた女性と、その日々をを描いた物語。

瀬戸内海と洞爺湖、そもそも海と湖で違うのだけど、この静かで穏やかな感じはなんだか似ているなあと。ふと表紙を見てみると、絵もなんだか洞爺湖に似ているような…。

このカフェで読むには、ぴったりすぎるくらいの素敵な本でした。

ずっと下を向いているのももったいないので、景色も一緒に見れるように上にあげて読んだり、たまに本から顔をあげて景色をぼーっと見てみたり…。

美味しい珈琲を飲みつつゆったりと過ごす贅沢な時間…。

至福のとき。

どこまでも続く青い海も大好きだけど、海は時に怖く豹変したりもします。曇りの時の白い海を見ているとなんだか悲しくもなるし、風で波立ち荒れた海を見ると心までざわざわしてしまいそう。

でも洞爺湖は、どんな天気でも穏やかでとても静か。どんなことも包みこんでくれそうな安心感をもたらしてくれます。

今は1つの所にとどまらず色んなところへ行ってみたい!と思うのだけど、最終的にはこういう落ち着いた場所で暮らすのもいいかもしれない。

相変わらず色んなところへ出かけるかもしれないけれど、帰ってくるたびに

”やっぱりこの景色!ここが一番安心するなあ~”

と結局思ってしまう。住んだらきっとそんな場所になる予感。

次のバスの時間までかなりの時間があったけれど、長居するわけにもいかないし待っている時間どう過ごそうか、、と思っていたのですが、

奥様の優しさに甘え、結局2時間半ほど滞在させていただきました。

今日初めて来たのに、なんだか温かくてあまりにも居心地がよくて、

自分の家にいるかのような、そんな安らかな時間。身体のすみずみまで力が抜けて穏やかな気持ちで満たされていました。

お会計をするとき、”チェロお好きなんですか?”ときくと

”私がひいていたんです”と奥様。

「ゴーシュ」という店名と店内BZMもチェロ演奏だったので気になっていたぼですが

”じゃああれも奥様のものなんですね!”と店内の奥にあった楽器を見ると

”あ、あれはチェロではなく夫のコントラバスなんです”との答えが。

てっきりチェロだと思ってた…!

なんだか恥ずかしくなりましたが確かにチェロより大きくて存在感があります。ちょうど注文が入り忙しそうだったので、それ以上詳しくはきけなかったのですが、ご夫婦で楽器をやられている音楽好きでもあるようでした。

最後に、珈琲のドリップバックを買いお店をあとに。

あー来れて良かったなあとしみじみしてしまったのと、名残惜しさでしばらく灯りが灯るお店の前を離れられませんでした。

お店は撮れないけれど、横から見える同じ景色をパシャリ。この景色を見に来ることができて本当に良かった…!


幸せな気持ちに浸って帰りのバスに揺られながら、

あとにも先にも、こんなに穏やかな気持ちになることはないんじゃないのかなあとふと思いました。

もし、人生で一番穏やかな気持ちになった時は?をきかれたら、

”洞爺湖にいたとき”

って答えるかもしれない。洞爺湖をゆっくり眺めていたあの時間。

この湖には、癒し包み込んでくれるような優しさが、不思議な力がある気がします。

もし、嫌なことがあったり、心に余裕がなくなったり、自分を見失ったり、苦しいと感じている人がいたら、一度ここに来てゆったりとした時間をすごしてほしい。

私もまたこの景色を見にいつか戻りたい、穏やかで幸せな気持ちに包まれながらそう思ったのでした。

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