日本酒づくりの現場に潜入。美味しいお酒ができるまでのストーリー
お酒づくりって、謎が多いですよね。
お米で醸してつくるのが日本酒。
「醸す」ってなに?
具体的にどうやってるの?
そんな疑問を抱く方もいらっしゃると思います。
私自身日本酒は大好きでmegleeでも販売させていただいてるのですが、いままではつくりかたについてはほぼ何も知りませんでした。
実際のお酒づくりの現場は、びっくりするほど複雑で繊細でした。
今回は、静岡県の清水、江戸時代から歴史が続く「三和酒造」さんにお邪魔してきました!
作業は朝6時から
まだ外は真っ暗ななか、三和酒造の興津工場に到着。
スタッフの皆さんはもう工場にいらっしゃいました。
朝イチの仕事は蒸米。
大量の酒米(さけまい)を1時間ほど蒸します。
ボイラーの音の迫力がものすごい。
お米を入れているこしきは、意外にも結構小さめサイズです。
小さいこしきでは少しずつしかお米を蒸すことができないから効率は悪いけれども、「小さく作る」ことで人の手で細かい調整をしやすくなるんだとか。それはこのあと見学するどの工程でも同じこだわりだそう。
確かに容器が大きいと、蒸し具合にムラができそうです。
岩手から泊まり込みで働く杜氏さん
蒸米の準備が終わったら、全員で朝食の時間。
お酒造りをされる皆さんは、なんと岩手から来て1年の半分以上を三和酒造に泊まり込みで過ごします。
年にもよるけれど、泊まり込みはだいたい9月から5月くらいだそう。
彼らは「南部杜氏」と言って、お酒づくりの専門集団の一派です。
杜氏さんはお酒づくりの責任者。野球チームのオーナーみたいなものです。
1人の杜氏さんは、「この三和酒造は、他のところに比べても泊まり込みの期間が長い。お酒づくりを2倍も3倍もこだわっているから」
とおっしゃっていました。
朝6時から毎日休まず作業があるということで、「何時に寝るんですか」と聞いたら、
「19時とか20時とか。夜中にも温度管理の時間が決まっていて、2時とかにやらなきゃいけない。まあなるべく分担はしているけどね」
とのこと。「毎日、まとまった時間で寝られないのか...」と驚きました。
毎日決められた通りに全員で作業が進んでいくから、不定期な睡眠時間の一方で体調管理もものすごく大事なんだとか。
お酒造り一筋、というのはまさにこのことだなと実感しました。
発酵を人間の手で管理する「仕込み」
朝食を食べ終わったら、作業再開です。
蒸し終わったお米をすぐに急速に冷まし、米麹になるものと仕込みになるものに分けられます。
仕込みは三段仕込みといって、水、米麹に蒸した酒米を三段階に分けて投入します。
1日に一段階の仕込みを行います。
仕込みも、最初は「酛」と言って、小さいタンクで少量で発酵をさせたものを作ります。
大きいタンクだと発酵にムラができたり発酵が進まなかったりするので、
小さいところで安定して培養させます。
蒸米のこしきを小さく少しずつ蒸してるのと同じで、小規模の方が細かく調整しやすいから。
杜氏さんがタンクに棒を入れてかき回していました。これが、私の中でイメージしていたお酒づくりの光景。
でもこの作業、杜氏さんの長年の勘でやっているわけではなく、
なんと棒を動かす回数まで決まっているそうです。
仕込みが終わったあとは、温度管理して置いておきます。そうすると発酵が進んでいきます。
温度を見るタイミングも決められています。
冷蔵室には仕込んだ日付順にタンクが並んでいました。
日付が新しいものは、中からプツプツと泡が出てきて、「こうやって発酵が進むのか〜!!」と驚き。
日付が古いものは、表面はおだやかだけど、見た目はやっぱり白いおかゆ。
これをやぶたで濾すことで、透明な日本酒になります。
一番最初が一番大事、「洗米作業」
お米ってすぐに水分を吸収してしまうって知っていましたか?
だから普通にお米を炊くときも、最初の水はすぐ捨てるとか、最初の水はミネラルウォーターがいいなどと言われています。
そんなデリケートな洗米。日本酒づくりの最初の工程だからこそ、ここで水の吸収にばらつきができたりすると、全て台無しになってしまうそう。
なので、洗米の工程は秒単位で管理されてます。
デジタル時計を見ながら人の手で狂いなく進めていくので、集中力が必須。「全部で何秒で洗って、何分きっちり浸漬する」というサイクルを繰り返します。
そしてここも、「限定吸水」といって、ムラがないように小さい容器で少しずつ洗うので、
秒単位の仕事を1、2時間続けないといけません。
ここまでで朝9時。
日本酒づくりの鍵、「麹づくり」
発酵の実態って不思議ですよね。
朝イチで蒸したあとのお米を広げたら、お米に麹菌を振りかけます。
振りかけた菌が繁殖して、米麹になるんです。
麹菌は空気をふわふわ漂うくらいの細かい粒子なので、米に振る「たねきり」の作業はものすごく静かに行います。
ゆっくり満遍なくお米に菌を振っていくのは、思わず息を止めてしまうような厳かな儀式のようでした。
振った麹菌がお米に落ち着くまで待つ時間もタイマーで管理。
振る作業は2回。
麹菌ができるかぎり増殖しやすいように室内の温度湿度は高めなので、ちょっとしたサウナのような空間でした。
お米の種類によっても温度湿度は変えるそうです。
増殖しやすいようにといっても増えすぎてもいけないらしく、お米の中心に菌が回っていく「つきはぜ」というベストな状態があるそうです。
(麹菌が繁殖した「米麹」)
「つきはぜをどれだけ作れるかが、香りを良くする鍵」
そう仰っていました。
小さな米粒にもっと小さな菌を繁殖させるのを、人の手でコントロールしているなんて凄すぎる。
もちろん、前の工程である洗米や蒸米でどれだけ水分を吸わせたかも関わってくるので、どこかで少しでもミスしたらダメなんです。なんという厳しい世界。
ここまで早朝から見せていただいて、まず思ったのは、工程が多くて複雑ということ。そして、その全てが綿密に管理されていることにも驚きました。
日本酒は一見すると透明な液体だけど、その透明な液体ができるまでに、何人もの方の真剣で繊細な作業、熟練の技、そしてそれに対する想いがあると思うと...
目の前の日本酒が今までなんとなく味わっていたときより、何倍も美味しく感じられます。
ちなみに通常は蔵見学に対応していないそう。菌が入ってしまうなどの恐れがあるからです。
それなのにこころよく取材を受け入れてくださって、感謝が尽きません。
三和酒造の美味しい日本酒「臥龍梅」、megleeにて買えます。
ちなみにmegleeがラベルをデザインし、直汲みといってやぶたから瓶に直接お酒を汲み入れた「限定ラベル」商品もあります。(残りわずかです)
日本酒初心者さんでも飲みやすいラインナップを揃えました。
ここまで読んで日本酒づくりの奥深さに驚いた方は、ぜひ買って一度飲んでみてくださいね。
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