変身 カフカ
「一体この話はなんだったのか?」
この本を読み終わって最初に感じたことはこれだった。
主人公 グレーゴル・ザムザはある朝起きたら巨大な虫になっていた。新鮮な食べ物は不味く感じ、腐った食べ物を美味しいと感じる。ムカデにも似たその姿で歩いた後には不思議な液体。
物語の中で何故彼がこのような姿になってしまったのかは一切説明されていない。
彼は何か罪を犯したというのだろうか?
物語の中で描かれていた変身前の彼は、家庭を支える青年で彼がいないと家庭が成り立たないと言っても過言ではない一家の大黒柱であった。
社畜という言葉がよく似合う、家庭と会社の板挟み。
来る日も来る日も仕事に追われている。
もしかしたら、神はそんな彼を救うために虫に変えてしまったのかもしれない。
もし自分が虫に変わったら。
想像も出来ないが、おそらくここまで冷静にはなれない。
逆に彼が冷静すぎるのだろうか?
絶望を全くしていないとまでは言わないが、その運命を受け入れているようにさえ感じる。
変身した彼は人間に戻ることなくこの世を去る。
去った後、家族は人として成長している。
自我を強く持ち、自ら考えることが出来るようになっている。
皮肉なことだ。
実に皮肉だ。
変身。
これはグレーゴルが虫に変身したことだけでなく家族の変身の意味も含んでいるのかもしれない。
それはカフカだけが知るところだ。