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新釈 走れメロス 他四篇

新釈 走れメロス 他四篇

京都を舞台に愛すべきダメ大学生たちを主人公にした連作短編集だ。

山月記(中島敦)、藪の中(芥川龍之介)、走れメロス(太宰治)、桜の森の満開の下(坂口安吾)、百物語(森鴎外)の5作品をリブート作品である。

どの話も本当に愛すべきクズたちの物語だ。
歴史的なモラトリアムを得て、去っていく友人達に「さらばだ、凡人諸君」と見送り続け、己の才能に溺れ終いには弘法大師堂の天狗となった齋藤秀太郎。
彼女

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変身 カフカ

変身 カフカ

「一体この話はなんだったのか?」
この本を読み終わって最初に感じたことはこれだった。

主人公 グレーゴル・ザムザはある朝起きたら巨大な虫になっていた。新鮮な食べ物は不味く感じ、腐った食べ物を美味しいと感じる。ムカデにも似たその姿で歩いた後には不思議な液体。

物語の中で何故彼がこのような姿になってしまったのかは一切説明されていない。

彼は何か罪を犯したというのだろうか?

物語の中で描

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人間失格

人間失格

「恥の多い生涯を送ってきました。」
この冒頭の一文は、自分という人間を否定し続けた私を物語に引き込ませるのには十分すぎる魅力を放っていた。

私は幸せという気持ちがわからない。
概念としては理解しているのだが、どうにも自分が幸せであるという感覚がないのだ。
全くもってないという訳では無いし、過去に「嗚呼、なんて幸せなのだろう。このまま時間が止まってしまえ…」と幾度となく思ったこともある。
だがこ

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