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コロナ育児で発狂してフリーゲーム制作を始めた主婦とティラノフェス2020+αのお話。

はじめまして。糸尾かしかと申します。とっくの昔に成人済みのどこにでもいるような平凡な主婦です。去年の八月からフリーゲーム制作を始めました。それまで自創作等を一切した事がなく、しようと思った事もありませんでした。

そんな奴がなぜ? と疑問に思う方もいるかもしれません。私も自身を振り返る為に少し切っ掛けと+αを綴らせてもらおうかなと思います。

■始まり■

全ての始まりは2018年に第一子が生まれた事でした。

それまでは夫と二人マイペース(基本ぐうたら)に生活していたのが、逆転。ブラック企業の社畜になったが如く、二十四時間フル稼働で子の面倒をみる事になりました。母親になったのだから当然。望んで授かった子なのですから身を粉にして当たり前。頻繁なおむつ替え、ミルク、授乳、何時間も寝ない子を抱っこ……。

出産前に決めていた覚悟などどこへやら、細切れ睡眠で疲弊した心身は数ヶ月で悲鳴を上げていました。

夫は優しく育児に協力的でしたが、こちらが指示しないと上手くできない事に苛立ち、結局自分でやる事が大半でした。今思えば夫も育児が初めてで不慣れな所を頑張ってくれていたのに……。その時の私は気づきもしませんでした。ただただ、この子に何かあってはいけないと適当に力を抜くという事も出来ず、初めての育児に神経をすり減らしていました。

そんな状態がゆるゆると続き、気づけば二年が経っていました。

ベッドの上で手足をもごもご動かしていた赤子は、そこら中を駆け回る元気な子へと成長しておりました。家で二人でいても間が持ちません。とにかく毎日のように外出して、夫が帰ってくる夕方まで時間をつぶしていました。幼稚園に行くまであと少し、もう少し耐えたら、何とかなる……。

けれど、その矢先にとんでもない事が起こってしまいました。

コロナです。最初は対岸の火事のように眺めていたウィルスが日本へ、それどころか世界中で猛威を振るうようになりました。

去年の四月頃から生活は一変。気軽に外出はできなくなり、子供を遊ばせていた場所は全て閉鎖されてしまいました。必然的に家にいるしかなくなり、絵本やDVD等をみて過ごしていましたが……外が大好きな子供は退屈そうでした。

家で子と二人だけの間、時間の流れがやけに遅く感じました。まだ10分しか経ってないの? 夫が帰ってくるまで後数時間もある。何でもいいから早く時間が過ぎ去って欲しい。

自粛生活で私も子供もジワジワとストレスをためていました。

それからしばらくしてでした。子供がとんでもない癇癪を起しました。理由は誕生日に貰ったマグネットのおもちゃが上手に遊べない。そんなのだったと思います。多分ストレスがたまっていたのもあったのでしょう。こちらが何を言っても無駄でした。子供は泣き叫び、おもちゃをあちこちに放り投げて部屋を転がりまわっています。

なんだこれ。

ぷつんと我慢の糸が切れました。気づけば子供以上に泣き叫んでいました。自分でも何を言ってるのか分かりません。頭が真っ白で、血の気が引いて、息が上手く吸えなくて、自分にかかる重力だけとてつもなく重たくなったような感覚でした。そんな私を見て驚いた子供がさらに泣いています。

世の中には二人も三人も子供を立派に育てているお母さんがいるのに。どうして自分は一人を育てる事すらままならないんだろう。もういっそ死んだほうがマシなんじゃないか。

無理だと思いました。このまま二人でいたらとてつもなく良くない事が起きる。馬鹿みたいに震えている手でスマホを取りました。電話したのは義母でした。日中ですぐ繋がるのが義母しかいなかったのです。

泣きながら「子供と二人が限界。助けて欲しい」と告げると、うちから徒歩5分くらいの所に住んでいる義母・義父、そして従妹の子(三歳。たまたま養母の家に遊びに来ていた)まですぐにやってきました。

義母の第一声は「夫(自分の息子)が死んだのかと思った」でした。自分では電話越しに伝えられていたと思っていたのですが、うぇいうぇい泣いていてよく分からなかったとの事。

改めて「コロナ育児マジしんどい」(要約)と言うと、「身内くらい頼ったら」(要約)との助言を頂き、素直にそうだなと思いました。さっきまでギャアギャア泣いていた我が子は、皆が来てくれたことでケロッとして笑っています。

なんか、もーいいか。

いい意味でそう思いました。今まではどこかで「自分が我が子を絶対にみなければ!!」と謎の義務感に駆られていたが、これからはガッツリ頼れるところは身内に頼ろう。よくよく思い出さなくても基本私はぐうたらだった。子供が生まれてから無駄に伸ばしていた背筋を、この日ようやくゆるゆるな猫背に戻す事が出来ました。

二十四時間子供子供だった頭に余裕ができ、正気を取り戻したことで、ふと思いました。「なんか自分時間を充実させたいなー」と。元々、漫画やゲームやアニメが大好きで子供が生まれる前まではオタオタしい日々を過ごしていました。しかし今では子が寝た後の自分時間に何かする気力が無く、死んだようにただ横たわり、なんとなくスマホをスッスッする毎日……。

ゲームとか作ってみようかな。

なぜかそう思いました。元々フリーゲーム自体は大好きで、ジャンルを問わず名作からマイナーなものまで、若かりし頃はたくさん遊んでいました。けれど特に自分も作ってみたい!と思った事はありませんでした。

でもその時は何故か無性に作ってみたくなったのです。子以外に人生で何か形に残るものを生み出してみたい欲がムクムクと湧いてきました。

■初めてのゲーム制作■

鉄は熱いうちに打て。善は急げ。思い立ったが吉日。さっそくフリーゲーム制作を始める事にしました。ジャンルはどうしよう。RPGは初心者に敷居が高すぎる。ノベルならどうだろうか。じゃあノベルが制作できるツールを探そう。

しばらくフリーゲームから遠ざかっていた私は愕然としました。コミックメーカー、吉里吉里、NScripter、LiveMaker等見知った存在が全て過去ツールとなっていたのです。じゃあ今は皆どんなの使ってるの?

『ノベルゲーム 作成 ソフト』で検索すると一番上に出てきたのは『ティラノビルダー』というソフトでした。

何やらティラノには初心者向けの『ビルダー』と上級者向けの『スクリプト』の二種類があるようでした。ビルダーには無償と有償があり、無償は機能制限があるとの事。しかしど素人が作るには十分すぎるほど便利なソフトなのに、どこを読み間違えたのかビルダーを機能制限をした体験版と勘違いした私は『スクリプト』をチョイス。ちゃんと読め。

制作ツールは決まりました。次はシナリオです。とりあえず初めての制作なのだから短編で。辛気臭いのは現実世界だけで十分なので、とにかくハッピーで楽しいものを。あと楽に制作できる感じの。(ぐうたら的に重要ポイント)

そしてふと閃きました。

シルエットなら表情差分とか指定せずに進行できるから楽じゃね? 

シルエットギャルゲーとかどうだろう。ビジュアルがメインのギャルゲーであえてのシルエットヒロインとか面白くないだろうか。でもシルエットである理由が欲しいな。んじゃ、病気で好きな子がシルエットに見えるとかはどうだろう。適当に病名を決めよう。まんま恋愛影絵症候群にしようかな。読み方は横文字の方がオシャレっぽい? 恋愛がメインならテーマカラーもそれっぽいドピンクにしようかな。うーん目に痛いビビットドピンク。まいっか、これにしよ。

一日で書き上げたシナリオを試行錯誤の末にゲームにするまで一・二週間。初作品『ラヴ・シルエットシンドローム』が完成しました。

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キャラクターが立ってる! 自分の書いた台詞を喋ってる! 指定した音楽が鳴ってる! 好感度でエンディングがきちんと分岐した! ちゃんとゲームしてる!!

飽き性の自分が何かを完成させるのはこれが人生で初めてで、とても嬉しかったです。それを一人眺めてニヤニヤしているだけでも良かったのですが、ティラノにはそのツールで制作したものを登録できるサイト『ノベルゲームコレクション』(通称ノベコレ)がありました。

せっかく完成したし記念に登録してみようかなーと軽い気持ちで登録。その時、八月の後半。何やらノベコレに登録したゲームのお祭りのようなものに参加できる権利があるとの事。じゃあこれも記念にと参加にチェックを打ち、自作を世にポイッと投げました。

誰か一人くらいやってくれたらいいなー。

その程度の気持ちでした。完成した事で満足していた私は、しばらく作品をほったらかしにして日々を過ごしていました。ある日、何気なくノベコレの作品管理ページを覗いて驚愕しました。

感想がきている……!!

無名のよく分からない奴の短編にそんなものが頂けるとは全く思っていなかった為、とんでもなく動揺しました。心臓バクバクで頂いたものを読むと、その感想は『面白かったですよ』と伝えてくれているものでした。

自分の為に作った作品で誰かが楽しんでくれた。それはとてつもない感動でした。今まで感じた事も無いような高揚感に包まれて、何度も頂いた感想を読みました。

私は今まで数多のフリーゲームをやってきましたが、製作者の方に感想を送った事などありませんでした。あー楽しかった。そう思うだけで終わっていました。けれど自分が貰って初めて、人から感想を貰えるのはとても嬉しいものなのだと気づきました。

■ティラノフェス2020■

それからしばらくしてノベコレのお祭りなる『ティラノフェス2020』が始まりました。自作は短編で手を出しやすいという事もあったのか、有り難い事に沢山の方がプレイしてくれ、感想を残してくれました。中にはファンアートまで下さる方も……。私も参加者として他の方の作品を積極的にプレイさせてもらい、感想を書かせてもらいました。

楽しい時間はあっという間に過ぎフェスも終盤。フェスは皆でワイワイ遊ぶお祭りというだけでなく、コンテストでもあります。フェスに参加した545作品の中から総合グランプリ・部門賞などが選出されます。結果発表を見て私は再び驚愕しました。

『ラヴ・シルエットシンドローム』が佳作に入賞している……!!

たまたまお祭りのチケットをもらったから参加して、遊び倒して、さぁ帰ろうとしたらとんでもないお土産付。もう感想やらファンアートやら応援やら十分すぎる程たくさん頂いているのに。なんというか全方位に向けて「ありがとうございましたー!!」と叫びたい気持ちでいっぱいでした。

記念品

後日、佳作入賞の景品を頂きました。一生の宝。

それからあっという間に数ヶ月が経ち……。

もうすぐ『ティラノフェス2021』が始まります。今年は賞が廃止になり、純粋にお祭り要素が高くなったフェスになりそうです。あれからすっかりゲーム制作が楽しくなった私。気づけば新たに二つの作品を世に放っていました。

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二作目『わたしの素敵なおうじさま』一人の少女の幸せを見届ける話。自らの性癖をぶち込んだ人を選ぶ作品。

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三作目『デスゲームは始まらない』"始まらない"系デスゲーム・コメディ。頭からっぽでどなた様でもお楽しみいただける作品。

今年はこの二作品を引っ提げてフェスに参加させて頂きます。良ければ遊んでね☆(露骨な宣伝)

■おしまいに■

人生とは不思議なものです。自創作等したいとも思ってなかったのにゲーム制作を始め、それがきっかけで一生縁が無いと思っていたSNSを始めました。今では顔も名前も住んでいる場所も性別すら知らない皆さんと、ネット上でお話をさせてもらっている。

現実世界は相変わらずコロナ一色で、育児も号泣発狂ぶち切れな日々ですが、ゲーム制作をし始めた事で少しだけ心にゆとりができた様に思います。

何だか思うままにつらつらと書いていたら随分と長くなってしまいました。ここまで読んでくれた奇特な方がいらっしゃるのかは分かりませんが、有難うございます&お疲れ様でした。

良ければ制作したゲームも遊んでね☆(露骨な宣伝パート2)

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