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無双ホームレス 第1話(プロット)

漫画プロット:第1話 御崎翔弥



不良に絡まれるホームレス、年齢不詳。
最初はザコっぽくやられっぱなしだが、どんなに殴られ蹴られても、身体がゴム毬のようにダメージゼロの強靭な肉体。
不良たちがどんなに殴っても堪えず、不良たちの方が息が上がってきた頃、ホームレスの男は反撃する。

その技、喧嘩とはかけ離れた格闘技にも似た、洗練された動き。
不良たちはその場で失神。
ホームレスの男、顔は見えないが口だけ不敵な笑み。

その背後から、ホームレスの老人が現れ、一言呟く。
「サイェレット・マトカル」
ホームレスの男は老人を警戒しつつも、その言葉を聞いたホームレスの男は、思い当たる節がある様子で、案内されるがまま老人の居住スペースへ向かう。


過去


4年前に遡る。

場所は都内のロータリークラブの最優秀クラブ賞の授賞式。
13歳の家柄良き令息、石川竜仁(いしかわりゅうじん)は、 最優秀クラブ賞を受賞した祖父、石川欣弥(いしかわきんや)の演説を、目を輝かせながら見ている。

「誠実、他者貢献、その理念が会社を支え、今がある」
欣弥は演説の中でとしみじみと説く。
竜仁は欣弥の言葉を復唱し「誠実、他者貢献、か」と言いながら、再び欣弥に対し敬意の眼差しを向ける。

竜仁の父は婿養子で、石川竜太(いしかわりゅうた)。
竜太もまた、敬意の眼差しで義父を見て、妻の陽子(竜仁の母)に賛辞を述べる。
「お義父さんは本当に素晴らしい人だ」
「そうね、何事にも一生懸命の人だから…努力が報われて良かったのでしょうけど…」
陽子は、実父の功績を讃えつつ も、不安げな表情。
欣弥の隣の席は空席で、陽子はその空席のテーブルに置かれた実母(竜仁の祖母)の遺影を横目でみながら、欣弥の今後を憂いた。
「どんなに大きな会社でも自営業なんて大博打みたいなものよ。会社規模が大きければ大きい程ね…公務員が一番。そうでしょう、あなた」
陽子は、国家公務員の竜仁に念を押すような態度で、このまま安定した暮らしをしたいと切に願うような顔を向けた。
竜仁は何も言わず、そっと陽子の手に自分の手を重ねた。
陽子は「ありがと」と安堵した様子を見せた。

ステージからおりてきた欣弥は、孫の竜仁に得意のパソコンゲームの調子を笑いながら聞く。
竜仁は新しい作品ができたと意気揚々と話し、パソコンで仮想空間メタバースを活用し、そこに新しいマップを構築するクリエイターの大会で優勝を目指していると説明。
欣弥は感心した様子で竜仁を見る。
「最近はそんなこともできるのか。今度、何かに運用できないか竜仁に相談しよう」と竜仁の話に便乗。
「僕の依頼料は高いよ!」と竜仁は冗談ぽく笑う。
「言い値で出そう!」と欣弥も気前よく笑う。

陽子は呆れ笑いしながら
「竜仁のゲーム狂も他者貢献に繋がるなら、叱れないわね」
と呟く。
竜太は笑顔で
「竜仁は好きこそものの上手なれを極めているから、すごいと思うよ」
と竜仁を誇りに思っている様子で褒める。

欣弥は尊いものを見る眼差しで
「理解のある両親で、竜仁は幸せだな」と竜仁の肩に手を置く。
竜仁はにっこり笑って
「うん!みんなが家族で幸せ!おじいちゃんもね!」と答える。
嬉しそうに顔がほころぶ欣弥。笑顔溢れる家族の時間。


その3年後…。

欣弥は収賄と粉飾決算の疑いで逮捕され、
欣弥が経営する総合人材サービス会社TPCは、
副社長の黒田寛治(くろだかんじ)に譲渡される。
マスコミが竜仁の自宅にも押し寄せてきた時、すでに陽子は失踪。
陽子の行方を捜し、竜太は街の中を帆走する。

竜仁は一人、部屋の中で玄関外のマスコミ群の騒がしさに耳をふさぎ、
自分の境遇を憂う。
「どうしてこんなことに…」
一瞬にして闇の淵に立たされた竜仁は、すさんだ顔つき、うつろな瞳で
何かを思いつく。

「駆逐するか…」

独り言をつぶやいた竜仁。
竜仁はスマホを取り出し、呟きアプリ「Chatter(チャッター)」を立ち上げ、「#石川欣弥#総合人材サービス会社「TPC」#TPC社長収賄事件」とハッシュタグを入力し、「情報提供。石川欣弥の家族は真実を捜すためある場所に向かっている」と続けて入力。
さらに、次のメッセージを入れ投稿し、
マスコミ複数社のアカウントに共有した。

「To YOKO
    Kyouha sokoniha ikanaihouga ii
    Midori no madoguchi wo
    townpage de sagase」


玄関先のマスコミたちが騒然とし、一瞬にして散り散りに去った。
マスコミたちは「縦読みだ縦読み!」「電車と車どっちが早い!」「行ったところであんな商業施設で探せるのか」「こんな捨て垢の情報提供、信頼できるのか」など口々に騒めいて去っていった。

「駆逐完了」
竜仁はうつろな瞳で呟き、しばらくすると雨でずぶぬれの父、竜太が戻ってきた。竜太は無言で荷造りを始め、リュックに入る程度のものを持ち出すと竜仁を連れて家を出る。

竜仁は何も言わず父に従い、竜太は「それでいい」と呟き、竜仁を人目につかないようレンタカーに乗せ、家を出た。
竜仁の高校の入学式前日だった。

竜仁は入学式を迎えることなく、竜太に髪を丸刈りにされ、漁船に乗せられる。竜仁はchatterのアカウントを父に託し、「父さんなら法的手段でアクセス履歴のログを取れるよね」と言い、竜太は無言で頷く。

竜仁は寂し気な笑顔を向け、父と別れる。
竜仁のモノローグ。
「わざわざchatを立ち上げた理由は、アクセスログが欲しかったからだ。
 父さんならきっと足掛かりを見つけてくれる…」

漁船で竜仁を迎えたのは、「アキモト」という謎の老人だった。
竜仁は、漁船ではデッキに出ることも許されず、ひたすら物置で身を隠さなくてはならなかった。激しい揺れに嘔吐しそうになりながら、竜仁はこれまでの人生を振り返る。

ふと、かつての欣弥の言葉を思い出す。
「誠実さと他者貢献…」竜仁は呟く。
「そんな生ぬるいこと言ってるから駆逐されたじゃないか!」
竜仁は一筋の涙を流す。

竜仁のいない、国立大学附属高校の入学式では、竜仁が海外留学したという噂が回っているものの、欣弥の事件も知れ渡っているため、竜仁が退学したのではないかと同級生たちは囁く。
その中で一人、不安そうに竜仁を心配する女子、
山吹菜々星(やまぶきななせ)がいる。

菜々星は竜仁の幼馴染で、何も知らされないままいなくなった竜仁を切なそうに想っている。
「必ず見つけるからね。りゅう。…どんな手を使っても」
菜々星は勇ましい顔で空を仰ぐ。



現在

1年後、現在。ホームレスの公園。

「サイェレット・マトカル」と呟いた老人ホームレスに案内された、ホームレスの男は、老人の居住スペースへ入る。

老人は
「無事に帰国できたようだな。
 数日間様子を見させてもらった…」
とぼそぼそ呟きながら、
奥からスーツケースを取り出す。
老人はスーツケースごと男に手渡し、
「全て準備も手配もできている」と告げ、
男はスーツケースの中身を見て、
ギョッと驚き絶句する。

男は言う。
「アキモト、俺は高校に行くつもりはない」

老人は竜仁を漁船で国外に連れ出したアキモトだった。
アキモトは男に告げる。
「お前の悲願を叶える原点はこの高校にある。潜入しろ」
男は渋々スーツケースを受けとり、
人目につかないように自分の居住スペースへ戻る。

男は居住スペースに戻るや否や、スマホを取り出し、独自の非公開チャットAIアプリを開き、「nagamaitri 指示」と入力する。
すると、チャットBOXは「黒田圭と接触せよ」と返答する。

男はアプリをすぐに消し、もう一度立ち上げると、チャットボックスには「こんにちは!デジタル世界でお会いできて光栄です」と初期チャットが表示され、チャット履歴が完全に消えて初期化されていることを確認する。
男は安堵した様子で「うまく機能しているな」と呟く。

(男のモノローグ)
「これはアキモトが秘密裏に用意した
 非公開チャットボット。
 特別なプログラムで独自開発されたAIは、
 コードネームと特定の単語を入力すると
 俺にミッションを与える仕組みだ。
 コードネームがなければ
 一般的なことしか回答しないため
 守秘義務は守られる。
 アキモトがどうやってこれを用意したか
 俺にはわからないが、
 確実に俺の目的のゴールまで導くと
 アキモトは言っている。
 いつかこのチャットの仕組みも暴いて見せるが
 今はその時ではない。
 まずは、「駆逐」対象に接触するのが先決だ」

翌朝、起床したホームレスの男は髭を剃り、カツラを脱ぎ捨てる。
人目につかないように居住スペースを出て公道に出た男は、
見目麗しい好青年。
男は、17歳の高校生になった石川竜仁だった。

竜仁はアキモトが手配した有名私立高校に編入。
素性を隠すために家を持たずホームレスとなり、名前も偽った。
敵に自分が石川竜仁であることを知られないために。
そして石川欣弥の親族であるという事実は
まだ世間的に活動を楽にするものではない。
自由に動き回るには「石川」の名前は足枷となる。

闇社会では特に…。

学校で担任が竜仁をクラスメイト達に紹介する。
「海外の高校から編入してきた…」

「御崎翔弥(みさきしょうや)さんです。
 御崎さん、ご挨拶を」

竜仁は本名を捨て、偽名で新たな人生をスタートさせる。
竜仁の洗練された外見と立ち居振る舞いに
どよめくクラスメイト達。
竜仁が挨拶する。
「御崎翔弥です。よろしくお願いします」
深々と礼儀正しく頭をさげる竜仁。

後ろの席で鋭い目つきで竜仁を見る
男子生徒(見た目ヤンキー)。
その横には興味なさそうに机の下で文庫本を読み
自分のペースをまったく崩さない
女子生徒(見た目地味)。
竜仁の学校生活は早くも騒々しさを醸している。

祖父の冤罪、母の失踪、父の音信不通、
すべてを解決するために、竜仁は
1年前に起きたあの事件を調べ尽くし
黒幕との接触、暴露、冤罪の証明をするために動く。

竜仁の祖父、石川欣弥が立ち上げた総合人材サービス会社
株式会社TPC(Talent produces company)
『能力は仲間を生み出す』
欣弥の思いがつまった大切な会社を奪われた
「TPC事件」の真相に踏み込む時がきた。

竜仁のモノローグ。

俺は今から、御崎翔弥として生きる。
復讐と救済の物語を作っていくのはお前だ、
御崎翔弥!
(自分に言い聞かせる様に覚悟を決めた顔で席へ向かう)


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