見出し画像

令和2年度本試験の会社法・商業登記法を振り返る ~会社法編~

みなさん、こんにちは。伊藤塾講師の髙橋智宏です。

今回は、2020年本試験の択一式の会社法・商業登記法の振返りとして,私なりの分析をお伝えします。難易度等に関しては,本試験問題分析会で話がありましたので,私からは今年の試験の特徴及び近年の試験の傾向から導かれる来年の試験に向けた勉強法を重点的にお話しします。

※下記で紹介する正答率は伊藤塾調べ,過去問の出題実績は会社法施行の平成18年以降。

会社法の分析 ~過去問知識で解ける問題(肢)の少なさ~

昨年までの会社法の問題は,非常に難しい問題が多い傾向にありましたが,今年は簡単とまではいきませんが,基本的な問題が多かったため、近年の試験の中では解きやすい部類だったといえます。とはいえ,カウンセリングなどを通して受験生の話を聞くと,会社法で思うように点数が取れなかったという方も多いです。

その理由として考えられるのが、過去問知識で解ける問題(肢)の少なさです(計7肢で全体の15%)。下記の表から分かる通り,過去問知識のみで正解にたどり着ける問題は第32問「持分会社」の1問のみでした。その要因としては,仮装払込みや支配株主の異動を伴う募集株式の発行など平成26年度改正会社法からの出題が多かったことが挙げられます(計10肢で全体の22%)。

画像2

未出の知識を問う問題(平成26年会社法改正の知識を問う問題も含む)の中にも基本的なものが多かったため,テキストなどで周辺部分まで知識を習得していれば対応できましたが,やはり学習対象を過去問に絞って学習されていた方には難しいと感じられたでしょう。例えば,第29問「取締役の任期」では、「エ」以外の肢は基本的といえる知識でしたが,過去問知識として対応できるのは「ウ」のみであったため,正答率は「60%」と低めに出ています。

それでは会社法の過去問に取り組むのが無意味かというと、そうではありません。会社法ではこまごまとした規定が非常に多いため,過去問を通してどこが本試験で狙われやすいのかを把握した上で学習をしないと,メリハリの付けた学習をすることができません。すなわち,本試験で狙われやすい箇所を知るという意味で,会社法でも過去問学習は引き続き必要です。ですから,過去問をただ解くだけではなく,過去問で問われた箇所について,積極的にその周辺を押さえるようにしましょう。加えて,過去問で問われていない箇所でも,平成26年改正会社法の知識に関しては引き続き注意が必要です(e.g.社外取締役の要件,株式の併合に関するキャッシュアウト(スクイーズアウト)の対応措置の規定)。

いかがでしたでしょうか。今後の会社法の学習指針を定める際の参考としてぜひお役立てください。

画像2


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?