北谷馨の質問知恵袋 「保存行為か一般承継人による登記か」
今回は、「保存行為か一般承継人による登記か」というタイトルにしましたが、これは、平成31年(令和元年)度の本試験記述式問題に関連するテーマです。
「頭の体操」くらいの気持ちで読んでいただければ結構です。
【事例1】
甲土地の所有権登記名義人であるAが死亡し、相続人はBCとします。
AからBCへの相続による所有権移転登記は、BCから申請することもできますし、Bだけ(又はCだけ)から保存行為として申請することもできます。
以下、「申請人の書き方」について検討していきます。
BCが申請人になる場合は、
となりますが
Bだけから保存行為として申請する場合は、
となります。
【事例2】
仮に、Aが死亡した後にCも死亡しており、Cの相続人がDのみとしましょう。この場合は、どのような記載になるでしょうか。
Bと亡C相続人Dが申請人となる場合は、
となりますが、
Bだけから保存行為として申請する場合は、
となります。
このケースでは、「上記相続人D」は記載しません。
「上記相続人D」を記載するのは、「Cに代わってCの相続人Dが申請している」という場合であり、今回のようにBのみが保存行為として申請している場合は、「上記相続人D」の記載は不要なのです。
【事例3】
仮に、Aが死亡した後にCも死亡しており、Cの相続人がBのみとしましょう。
この場合は、どのような記載になるでしょうか。
これが、平成31年の問題に近い事例になります。
先ほどまでと同じように考えれば、「B」と「C相続人B」のうち、保存行為として「B」のみから申請することもできますし、「B」と「C相続人B」から申請することもできます。
「Bから依頼があった」として、このどちらの方法によるかが問題になりますが、基本的には、どちらでも正解になるでしょう。
①「B」と「C相続人B」から申請する場合は、
となりますが、
②「B」だけから保存行為として申請する場合は、
となります。
上記①②はいずれも、人物としては「B」だけからの申請ですが、「C相続人B」としての立場でも申請人となっているかどうかが違っています。
では、①と②のどちらが良いでしょうか。
①のメリットは、「亡C」の分の登記識別情報が通知されるということです。
Cの登記識別情報が欲しければ、こちらの方法によります。
ただし、AからBCに相続登記をした直後に、C持分についてBに相続登記をするのであれば、基本的にはCの登記識別情報はなくても不都合はない、ということにはなるでしょう。
①のデメリットは、BがCの相続人であることを証する「一般承継証明情報」の提供が必要になってしまうことです。
添付情報が増えて面倒、ということになる可能性はあるでしょう。
②による場合は、この逆です。
②のメリットは、BがCの相続人であることを証する「一般承継証明情報」の提供が不要であることです。
②のデメリットは、「亡C」の分の登記識別情報が通知されないということです。
私が受験生であれば、明確に「保存行為による」ことが読み取れない限り、①の方法で解答するかと思います。
「Cの登記識別情報がない」というのが、後々面倒なことになる可能性もあるからです。
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