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株式交付のキホン

みなさん、こんにちは。伊藤塾司法書士試験科講師の高橋智宏です。今回は、会社法における株式交付の基本をお伝えします。

【1】株式交付とは

株式交付は、令和元年改正会社法において新設された制度です。改正前においては、株式会社(買収会社)がその株式を対価として他の株式会社(対象会社)を買収しようとする場合、株式交換を用いることが考えられていました。

しかし、株式交換をする場合、買収会社は、対象会社の発行済株式の全部を取得することとなるため(2条31号参照)、対象会社を完全子会社とすることまでを企図していない場合、株式交換を用いることはできませんでした。

そこで、買収会社がその株式を対価とする手法により円滑に対象会社を子会社とすることができるように、買収会社〔株式交付親会社〕が対象会社〔株式交付子会社〕の株式を一部の株主から譲り受け、その株式の譲渡人に対してその対価として買収会社の株式を交付することができる株式交付の制度が創設されることとなりました。

株式交換募集株式の発行(対象会社の株式を現物出資財産とするもの)とを合体したようなイメージです。


【2】 株式交換との類似点

① 株式交付計画につき株主総会の承認決議が必要

 ☚ 株式交付子会社は当事者ではないので特別支配関係を前提とする略式組織再編はないが、それ以外は基本的に同様である。

② 債権者保護手続は、対価として株式以外も交付する場合にのみ必要

☚ 株式交付子会社の新株予約権は消滅せず、株式交付親会社が譲渡により取得する場合は新株予約権付社債もそのまま株式交付親会社が取得するので、それに伴う債権者保護手続は不要である。

③ 事前開示、事後開示、株式買取請求、差止請求、無効の訴え、効力発生日の変更の手続は基本的に同じ

④ 株式交付自体は登記事項ではなく、株式や新株予約権を発行したことが登記事項なのは同じ

【3】 募集株式の発行との類似点

① 「通知➡申込み➡割当て」の手順で行う

☚ 払込み(給付)については、効力発生日に当然に株式交付親会社が株式交付子会社の株式等を取得することになるが、株券発行会社であれば株券の交付も必要である(株券提供公告は不要)。
☚ 申込み・割当てに代わる手続として総数譲渡契約があり、これらに対応して、「譲渡しの申込みを証する書面」、「総数譲渡契約書」が添付書面となる。

② 株式交付計画で譲り受ける株式数の下限を定めることが必要(新株予約権については定めが不要)

☚ 株式交付は株式交付親会社が株式交付子会社の「親会社」となることが目的だからである(➡効力発生日に下限に満たない場合は株式交付の効力が生じず、申込期日の時点で既に下限に満たない場合は株式交付の手続は終了)。

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