基準点発表を受けて~総合的な視点からの考察~
みなさん,こんにちは。伊藤塾講師の髙橋智宏です。
11月4日,法務省より2020年度司法書士試験筆記試験択一式についての正解,基準点,得点別員数表が発表されました。
★法務省「令和2年度司法書士試験筆記試験(多肢択一式問題)の基準点等について」はこちら
今年の択一式の基準点及び基準点に到達した人数は以下のとおりです。
【午前の部】 75点(25問) ・ 3,643名 (30.9%)
【午後の部】 72点(24問) ・ 2,234名 (19.4%)
基準点の点数自体は,昨年比べて午前の部が同じであり,午後の部が「+6点(2問)」となりましたが、それでは基準点到達の難易度も同様の推移があったのでしょうか。ここから,午前の部と午後の部に分けて今回発表された基準点について考察し,次回で受験生が課題意識を抱えている登記法の視点から考察を行いたいと思います。
(1) 午前の部の考察
午前の部の基準点は昨年と同じ75点(25問)でしたが、法務省から同日に発表された得点別員数表から読み取れるとおり、今年の択一式午前の部の基準点到達者の比率は「30.9%」でした。
これらの数字からは,午前の部の基準点突破者の比率が去年よりも9.4%上がったことが分かります。すなわち、昨年と基準点は75点(25問)というように同じであっても、昨年より基準点に到達しやすかったと考えられます。昨年の基準点到達者の比率から考えれば,基準点は81点(27問)とされていてもおかしくなかったのです。
このように午前の部の基準点が低く出たのは,出願者(受験者)の減少の中で例年通り記述式の最低人数を一定数(2000人程度)確保するためであると推察されます。ただし,午後の部の基準点との関係から、再び20%台となることも考えられるので,「守りの午前」の意識,そして午前の部の確実な基準点到達のための対策は今後もやはり重要になってくるでしょう。
特に,今年の本試験では,第16問「保証人に対する情報提供義務」,第17問「定型約款」を除いては,改正知識の出題が少なかったですが,来年は全般的に改正知識の出題がされることが想定されます(特に時効,詐害行為取消権,契約不適合といった改正で大きく変更があった主要分野)。今後はより一層,来年に向けて改正項目の学習に力を入れていきましょう。
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(2)午後の部の考察
午後の部の基準点は昨年から6点(2問)分上がって「72点(24問)」でしたが,法務省から同日に発表された得点別員数表から読み取れるとおり,今年の択一式午後の部の基準点到達者の比率は「19.4%」でした。
これらの数字からは,午後の部の基準点突破者の比率が去年よりも「1.1%」下がったことが分かります。すなわち,問題の内容の難易度は昨年に比べて若干易化しましたが,基準点到達の難易度でいえば若干難化したと考えられます。
比較的基準点が低く出やすい午後の部の択一式においては,基準点に到達するだけでなく,ここで総合合格点の突破に向けた上乗せ点の確保が必要となります。その点,昨年では基準点到達から総合合格点突破まで必要となる上乗せ点が「23.5点(択一式で約8問分)」,更には基準点到達者のうち合格者の割合が「58%」でした。ですが,今年は午前の部の基準点が低く出た関係で,さらなる上乗せ点の確保が要求される可能性もあることから,基準点に到達していても気を抜くことはできません。
このように,総合点勝負の傾向が顕著である近年の司法書士試験においては,「攻めの午後」の意識,そして午後の部における上乗せ点確保のための対策が必要となると言えるでしょう。
特に,近年難化傾向が続く択一登記法に関しては,重点的に強化する必要があるため,未出知識の積極的な習得など,その対策をしっかり講じるようにしましょう。具体的な基準点発表を踏まえた登記法のアドバイスは,次回の記事で行いたいと思います。
いかがでしたでしょうか。みなさんの今後の学習指針を定める際の参考になれば幸いです。
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