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株式交換と株式交付で「全く違う」新株予約権の扱い

株式交換と株式交付は似た手続ですが、うっかり「重大な違い」を見逃してないでしょうか。それは、「(完全)子会社の新株予約権」の違いです。

株式交換の場合

 株式交換完全親会社をA会社、株式交換完全子会社をB会社とします。問題となるのは、B会社の新株予約権がどうなるかです。
 合併の場合とは異なり、完全子会社であるB会社の新株予約権は、株式交換をしても、「B会社の新株予約権のまま」であるのが原則です。
 しかし、株式交換契約で定めることによって、完全子会社であるB会社の新株予約権を消滅させて、代わりに、完全親会社であるA会社の新株予約権を交付することができます。この場合のB会社の新株予約権を「株式交換契約新株予約権」と言います。実務上は、ほとんどの場合は、完全子会社であるB会社の新株予約権は消滅させる(対価としてA会社の新株予約権を交付する)ことになるでしょう。なお、この場合の対価は完全親会社の新株予約権に限ります。株式や社債や金銭等を対価とすることはできません。
 B会社の新株予約権を保有していた人(田中さんとします)から見れば、「今まで田中さんはB会社の新株予約権者だったが、株式交換によってA会社の新株予約権者になる」ということになります。

株式交付の場合

 株式交付親会社をA会社、株式交付子会社をB会社とします。問題となるのは、B会社の新株予約権がどうなるかです。
 株式交付によって、A会社が、B会社の株主から株式を取得することになりますが、B会社の新株予約権者から新株予約権を取得することもできます(取得しないこともできます。)。この場合の対価は、親会社の新株予約権に限らず、株式や社債や金銭等でも構いません。

 ここで、重大な違いに気づいたでしょうか。「対価が違う」ということも大事ですが、もっと根本的な違いがあります。
 それは、株式交付ではB会社の新株予約権は消滅しないということです。したがって、株式交付子会社(B会社)において、新株予約権の消滅の登記をすることもありません。

 「株式交換」の場合は、田中さんが持っていたB会社の新株予約権は消滅します。そして田中さんは、対価としてA会社の新株予約権をもらうことになります。
 「株式交付」の場合は、B会社の新株予約権を持っていた田中さんが、その新株予約権をA会社に譲渡するのです。譲渡されただけなので、B会社の新株予約権は消えません。以後、A会社がB会社の新株予約権者になるのです。

結論として、(完全)子会社であるB会社ついて新株予約権の消滅の登記がありうるのが株式交換、ないのが株式交付になります。


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