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講師が選ぶ『ベストセレクト過去問』商業登記法~髙橋智宏講師セレクト~

当シリーズ『講師が選ぶベストセレクト過去問』では、「これはいい問題!」「この問題は今年の試験で大事!」といった観点から、「司法書士択一式厳選過去問集-2021ver-」より講師が選んだ過去問をリレー形式で紹介していきます。

みなさん、こんにちは。伊藤塾司法書士試験科講師の髙橋智宏です。

【1】今回のベストセレクト過去問

私のセレクトした過去問は、平成10年第28問の外国会社に関する登記を問う問題です。

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【2】「外国会社に関する登記」について

「外国会社」に関する登記は、平成20年以降、単体問題での出題はされておらず、どちらかといえば受験生にとって手薄になりがちな分野といえます。

ですが、法務省のホームページでは下記のような注意喚起もされていることからも分かるように、「重要でないから出ない」分野ではありません。むしろ、そろそろ出題されてもおかしくない分野といえるでしょう。

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外国会社に関する登記の対策を後回しにしてしまっている方は、ぜひこの機会に、お手持ちのテキストで確認しておくとよいでしょう。

【3】本問の考察

本問の正解肢は「4」ですが、冒頭にある「1」「2」に引っ掛けの要素があるため、間違えてしまったという方も多いと思います。ですが、「1」「2」は制度趣旨や常識から考えれば、「そんなわけないでしょ」と笑い飛ばせてしまう問題といえます。

「1」の記述について

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印鑑を提出していない代表者である外国人が登記を書面で申請する場合には、申請書又は委任状の署名が本人のものであることについての本国官憲の証明が必要です(昭48.1.29民四821号通達)。

これは、登記の申請が本人によるものであるということを印鑑と同様に確認するための代替手段として、署名の証明を用いるものです。

印鑑提出制度のように、申請書に押印する印鑑に代えて自己の署名を登記所に提出することはできません。常識から考えて、自己の署名を提出したところで、次から登記申請の際に出す署名と登記官がどう照合するんだっていう話ですよね。

「2」の記述について

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外国会社は、日本において取引を継続してしようとする場合、日本における代表者を定めなければならず(会817条1項前段)、この場合には、代表者のうち1人以上は、日本に住所を有する者でなければなりません(同条1項後段)。

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これは、代表者の住所は普通裁判籍となり得ることから、日本に住所を有する代表者を置かせることにより、その外国会社を被告とする訴えを日本の裁判所に提起することを可能にさせる趣旨です。

あくまで日本の裁判籍を確保する趣旨なので、代表者が日本に住所を有していればよく、日本国籍を有していなければならない、なんてわけがありません。

【4】最後に

本問のように、制度趣旨や常識から考えればほぼギャグのような「笑える過去問」は意外とあります。

普段から字面だけで覚えるのではなく、制度趣旨や常識からアプローチして考える癖をつけておくと、このような問題も一蹴することができます。ぜひこのような意識を持ちつつ日々過去問に取り組んでもらいたいと思います。

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