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北谷馨の質問知恵袋 「会社間の利益相反取引」に関する質問

今回は、「会社間の利益相反取引」に関する質問です。

Q:会社と取締役の利益相反取引はすぐに判断ができるのですが、会社間の取引になると、どのように判断すればいいか分かりません。

利益相反取引の典型は、「会社と取締役の取引」です。
X会社(取締役甲乙丙)が、取締役甲と売買をすると利益相反取引に当たります。取締役ではない丁と売買をしても利益相反取引には当たりません。

会社間の取引の場合は、その会社の代表者(現に代表している者)が誰かに着目してください。

例えば、X会社(取締役甲乙丙・代表取締役甲)とY会社(取締役甲丁戊・代表取締役丁)が売買契約をしたとしましょう。

X会社の代表者は甲です。つまり、甲がX会社として動いていることになります。ある意味、X会社=甲と言えます。
Y会社の代表者は丁です。つまり、丁がY会社として動いていることになります。ある意味、Y会社=丁と言えます。

そうすると、
Y会社から見れば、取引の相手方は「X会社=甲」です。そうすると、甲は、Y会社の取締役ですから、あたかもY会社は自社の取締役と取引をしているような形になります。よって、Y会社にとって利益相反取引になります。
一方、
X会社から見れば、取引の相手方は「Y会社=丁」です。そうすると、丁は、X会社の取締役ではありませんから、X会社は全然関係のない丁と取引をしているような形になります。よって、X会社にとって利益相反取引になりません。

では、「間接取引」の例として、X会社(取締役甲乙丙・代表取締役甲)の不動産を目的として、Y会社(取締役甲丁戊・代表取締役丁)の債務を担保するために抵当権を設定する場合はどうでしょうか。
この場合、Y会社は債務をX会社に担保してもらうだけであり不利益はないので、利益相反取引にはなりません。一方、Y会社の物上保証人となるX会社については利益相反取引が問題になります。X会社にとって利益相反取引になるかを判断するには、相手方の会社(=Y会社)の代表者(=丁)が自分の会社の取締役かを確認します。そうすると、X会社の取締役は甲乙丙なので、丁は取締役ではありません。よって、X会社にとって利益相反取引にはなりません。
結論として、X会社(取締役甲乙丙・代表取締役甲)の不動産に、Y会社(取締役甲丁戊・代表取締役丁)の債務を担保するために抵当権を設定する場合は、いずれの会社にとっても利益相反取引ではないことになります。


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