商業登記制度の沿革
商業登記制度の起源は、中世イタリアの商人団体の団体員名簿にあるとされている。我が国では、明治23年4月27日に公布され、明治26年7月1日から施行された旧商法中の会社についての商業登記の運用がその嚆矢とされている。旧商法には、登記に関する実体規定の他、手続規定も含まれていたが、手続の細部は、「商法ノ規定ニ依リ商業及ヒ船舶ノ登記公告ニ関スル取扱規則」(明治23年司法省令第8号)に規定されていた。
その後、旧商法を改正した「商法」が明治32年6月16日から施行された。商法には商業登記の公示力を中心とした実体規定が設けられ、手続規定は非訟事件手続法に定められ商法と同時に施行された。これに伴い明治32年5月13日に「商業登記取扱手続」(司法省令第13号)が制定され、現行制度の基礎が確立したとされている。
昭和13年の商法改正では、商業登記に公信力が規定されると共に、会社の設立、合併について形成力が規定され、昭和22年の非訟事件手続法の改正により商業登記事務は裁判所を離れ、行政機関が掌握するに至り、昭和26年の非訟事件手続法の改正に伴い従来の商業登記取扱手続が廃止され、商業登記規則(法務府令第112号)が制定された。
現行の商業登記法は、非訟事件手続法から分離した単行法として昭和38年7月9日法律125号として制定され、翌昭和39年4月1日から施行されたものであり、それに伴い現行の商業登記規則(昭和39年法務省令第23号)が新たに制定された(以上,味村・商登上p7~9)。
その後、数度の改正を経て、平成14年12月に成立した「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律(情報通信技術利用法)」により、申請等を書面等で行うものについて省令の定めをもって電子情報処理組織を使用するオンライン登記申請が可能とされため(同法3Ⅰ)、商業登記規則の一部を改正し(平16.6.21施行)、商業登記のオンライン登記申請が不動産登記に先だって実現された。
また、平成16年の通常国会で不動産登記法の全面改正が行われたことに伴い「不動産登記法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」により商業登記法の一部が改正され、これに伴い商業登記規則の大幅改正により(平17.3.7施行)、不動産登記法と歩調を合わせて出頭主義が廃止され、コンピュータ登記簿が本則化された。
さらに、商法の現代化改正として「会社法」及び「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(「整備法」)」が平成17年の通常国会で成立し(平18.5.1施行)、整備法により商業登記の一部が改正され、それに伴い商業登記規則が一部改正され、会社法の規定の流れに沿って、会社法の規定に適合した商業登記法の規定が整備され今日に至っている。
伊藤塾 司法書士試験科 講師 蛭町浩
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