見出し画像

大河ドラマ「どうする家康」第12回雑感 ~信玄の駿河侵攻の誤算~


氏真にフォーカスされた回であったが、描かれ方によって氏真のイメージも大きく変わるものである。
戦国大名としては終わったが、氏真自身生き残り、家も高家として幕末まで存続する。

史実の結果だけを見て戦国の敗者と見るのは簡単だが、ドラマでは、父である今川義元と人質時代の家康とのエピソードを差し入れ、氏真の人間性を描き切った面白い「物語」であった。
それに関して色々な感想は出てくるだろうが、ここでは、タイトル名「氏真」だが、彼には触れないでおく。

私の注目は武田信玄である。

信玄は、駿河侵攻からわずか一週間で駿府を陥落させたが、一方の家康は、氏真が逃げ込んだ掛川城の攻略に手こずる。
氏真を助けたいという事情もあったろうが、それにしても、4か月もの時間をかけている。

そんなに時間をかけていたら、武田軍が大井川を越え遠江に侵攻し、西遠江を取られてしまうだろう。
それこそ、前回直接談判した時、信玄が1個半の団子をバクッと食べたように。

そこで不可解なのは、駿府を落とした信玄は、何故さっさと遠江を攻めないのか?ということである。

秋山虎繁の隊を派遣し、ちょっかいを出そうとしていたが…信玄本隊が動く気配はない。

今回ドラマでは描かれてはなかったが、実は信玄は駿河から動くに動けない事情があったようだ。

北条氏康は信玄の駿河侵攻に大激怒し武田との同盟を破棄、氏真支援と武田攻めを決断する。
息女早川殿(ドラマでは糸)が徒裸足で無惨な敗走を強いられたことやこれまで不仲になった今川、武田との同盟維持のため仲介した中人のメンツをつぶされたからであった。

北条は、直ぐさま駿河国駿東郡、富士郡に出兵、甲斐と武田軍との補給路遮断に動いた。

また、駿河西部では、今川方の重臣、国衆が抵抗を続け、井川、安倍でも今川方の土豪たちが一揆を組織し武装蜂起していたという。

信玄は、駿府の早期陥落の戦勝から一転、苦境に立たされていたのである。

さらに季節は暖かくなり、越後の雪は解け、上杉謙信も動き出す可能性も出てくる。

ドラマでは描かれない、北条、上杉の動き。
今川領駿河、あわよくば天竜川以西の遠江を我が物にするという信玄の戦略は大きく狂った。
あれほど用意周到な計略を持ってしてもの誤算。
信玄のイライラはまたしても募り、三方原の戦いの伏線となる。

次回は京に話は向くようだが、「どうする信玄」という目線も興味深いのではなかろうか?と思っている。

「どうする家康」第12回の一場面から
家康の氏真の処遇に怒り心頭の信玄
自らの戦略の誤算への怒りもあっただろう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?