飢餓の村で考えた(26)バシャトンさん

バシャトンさん

年齢は30歳位に見えた。彼女は非識字者で手工芸品の仕事を始めたころは日本人駐在員やショミティ役員になって全体の世話をしていた女性たちを全然信用していなかった。的外れな不信感むき出しの言動でいつもショミティ会議の雰囲気を乱していた。

私は彼女が作ったマットを納品前に見てあげて返品数を少しでも減らせないかと原寸大のマットの図を紙に書いて彼女の家を訪問した。彼女が作った品物をその図に合わせると大きさが合わないものが半数位あり、それが返品になる可能性があったので彼女に指摘した。

彼女は我々日本人に対しても不信感が強く、サイズの違いを指摘した時は竹棒で私を追い払ったのだった。

ある月のこと、彼女がダッカへ行く納品担当となった。それをきっかけとしてこれまでの不信感むき出しの態度は一変した。ダッカでの納品現場で皆が作った製品1枚1枚の返品理由を目の前で聞かされたからだった。

それまでは返品になるのは納品に行った人が悪巧みをしているのではとの不信感があったのだった。それ以来会議で彼女は若い会員にちゃんと基準通りに作らないと返品されて骨折り損になるわよと優しくアドバイスをするようになった。

私はそれまでの彼女の態度を思い出して苦笑した。しかし彼女は皆と同じ目線なので他の会員たちに対しては誰よりも説得力があった。学校生活をしたことがない彼女が外の世界に初めて触れ成長する姿がうれしかった。あっ。いけない! 私は少し上から目線でものを言っているかも(?)。


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