飢餓の村で考えたこと 10

気合のトイレと食事

最初の1回目だけ「エイッ」という気合が必要だったのがトイレと食事だ。当然日本で散々聞いてきたことなので抵抗感はまったくなかったものの、最初の1回目だけは気合が必要だった。

トイレは紙を使わない。その頃の日本ではまだウォシュレットのトイレはなかった時代だったので水でお尻を洗った経験はなかった。やかん型の土器やアルミ製のものに水を入れてトイレに持っていき、用を足したあと左手に水を採って直接左手でお尻を洗う。お尻に水滴はつくが暑い国なので自然乾燥して気持ちいい。紙を使わないので痔が治ったという日本人の話を聞いたことがある。

バングラでは食事は手で食べる。そんな習慣がない私は手で食べることも一回目だけは気合が必要だった。バングラの食事は日本人からするとすべての食事はカレーなのだ。

村人の食べ方を見ていて分かったことがある。カレーは混ぜご飯ということだ。ご飯は細長いポロポロのご飯だ。村のカレーはホーローのお皿にごはんとカレーをつぐのだがその横に塩を盛る。辛いカレーを食べたい時にはそれに青い唐辛子を一緒に盛る。ごはんとカレーは手でよくかき混ぜながら右手で食べる。

左手はトイレで使うから食べる手は右手という社会通念は自然に理解できる。カレーは手で混ぜながら食べることがおいしいとベンガル人は思っているようだ。日本式だとスプーンで食べるからごはんとカレーは混ざらないで口に入る。食べる直前に手で混ぜるからおいしくなるようだ。塩加減は皿に盛った塩をお好みで調整するからカレーは少し薄めの塩味となっている。

初めてダッカの食堂でカレーを食べた時だった。小皿に生野菜サラダのようなものが付いてきた。生の玉ねぎとその時はししとうもついているのかと思って、そのししとうと思った物をガブリと食ってしまった。まさかの青唐辛子だった。ししとうと思っていたのでそのまま飲み込んだ。たちまち辛さが脳天を直撃した。頭蓋骨を内側からハンマーで殴られたような辛さで涙が止まらない。辛い物好きのベンガル人はこの青唐辛子をちびちびかじりながら辛いカレーを食べる。

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