「カット料金」が2倍も違う美容室、どっちを選べばイイ?
操作イトウです。今回は「カット料金」のお話。
新学期が始まり、新生活も少しずつ慣れてきた今日この頃。
引っ越したばかりの地域で「美容室を探さなきゃ」と某クーポンサイトで検索すると、ズラッと並ぶ美容室。どれもキレイなお姉さんの写真が並び、どの店もお洒落な店内に見えるもの。
そうやっていくつも美容室を見ていると、「料金」が全然違うことに気付くはずです。お店によっては、A店とB店の差が2倍近いこともあります。
「やっぱり高い方が上手なのか…?」「安い方が魅力的だし…。」
美容室選びは失敗したくないし、結局どっちの美容室を選べば良いの?
※追記 この投稿をベースに、R5.3.4、文春オンラインに寄稿させていただきました。こちらもご参照ください
エリア別に「カット料金」を比較してみた
具体的に「カット料金」がどれほど違うのかについて、今回は東急東横線沿線の【人気の郊外】武蔵小杉エリアと、【中心街】横浜エリアを比較してみました。
某クーポンサイトで表記されている「大人カット料金」を参考にし、対象は「クーポン料金」ではなく、「通常料金」が表記されているお店を基準にしています。
【人気の郊外】武蔵小杉エリアの場合
武蔵小杉エリアの美容室10社を比較した平均価格は、 ¥4,976でした。
10社に大きな差異はなく、同じ価格帯での競争が行われているようです。
【中心街】横浜エリアの場合
横浜エリアは中心街で美容室の数も多いため、20社を比較。
その平均価格は、 ¥4,410。
武蔵小杉エリアの方が ¥566も上回っています。ですが一つ一つ見ていくと、明らかに料金には差がありました。
そこで、「低価格帯」「高価格帯」を10社ごとに分けてみると…
「低価格帯」の平均は ¥3,128
「高価格帯」の平均は ¥6,189
と、2倍近い差があります。
地域的な競争の激しさから、料金設定の二極化が著しい結果となりました。なので、客層やニーズも二極化していることが窺えます。
「〇〇%クーポン」の集客力は圧倒的
横浜の「低価格帯の美容室」にあるように、競争から「安売り」に走る美容室は多くあります。
「安い」ことの集客力は、言うまでもなく圧倒的です。「〇〇%クーポン」は魅力的で、「お得感」と「お試し」の要素を兼ね備えています。
仮にその選択が失敗だったとしても、「通常料金」より「お試し価格」で損する方が、諦めもつきやすい気がする。
『安くて上質』を求めるのが消費者
とはいえお客様は、当たり前に『安くて上質』を求めます。
消費者は常に『上質』と「安い」を天秤にかけながら商品を選び取ります。自分の財布と相談しながら、「高級」で手が出せなかったり、「貴重」で入荷できなかったり、「費用対効果」が釣り合わなかったり、憧れの『ベスト』な選択ができることはそもそも少ない。
ですが、実際に「安価な商品」を選ぶ時には「安かろう悪かろう」のバイアスがかかって、求めるハードルも下がりやすくなります。
そのため、クーポン料金の「お試し価格」で損する方が諦めがつきやすい。世の中には『ベスト』よりも『ベター』を探す方の方が多くなります。
消費行動は『ベスト』よりも『ベター』
例えば、ブランドバッグの最高峰、エルメスの「バーキン」は、『ベスト』と呼ぶにふさわしい『品質』と、多くの人が喜んできた実績が『担保』がされています。
このランクは買うことができる人の方が少ないですが、買えないけど欲しい人は、バーキンに似た下位互換の中で満足度のあるバッグを探します。ランクは下がるほど、『品質』や商品への『担保』が保証されにくくなります。
つまり『ベター』になるほど、失敗のリスクは増える。
ですが、多くの人にとって「バーキン」は買えない逸品なのだから、経済力と値段が釣り合う『ベター』を探す方が、真っ当な消費行動なのです。
悩んだら「高価格帯の美容室」を選ぶ方がいい
こと美容室選びに限っては「高価格帯の美容室」を選ぶ方が、失敗が少ないと言えます。もちろん美容室は「高いから上質」とは限らない側面もありますが、「低価格帯の美容室」は、運営面で「上質を作りにくい」状況にあるからです。
そのため自分の許容範囲内での料金で、「高価格帯」を選択するのがよいでしょう。
「高価格帯の美容室」は「低価格帯」と同じ天秤にかけられて高額に見えていますが、実は適正価格です。
多くの「高価格帯」のカット料金が6000円前後で成立しているのは、「その価値がある」と評価して利用するお客様が沢山いるからです。
「安い美容室」が失敗しやすいのはどうして?
「安い美容室」はどうして「上質を作りにくい」状況にあるのか?現場の美容師サイドのお話から、解説します。
「安売り」は、美容師が2倍働く
「安売り」による美容室の運営は、売上を“数をこなす”ことで成立します。前述した「安いカット料金」の集客力によって、お客様は来店する数は飛躍的に増えます。
そのため「カット料金」の単価は安くなればなるほど、“現場の仕事量”が増えます。「低価格帯の美容室」は「高価格帯」の2倍の仕事量をしないと、同じ売上にはなりません。
すると現場の美容師は、次から次に押し寄せる仕事を終わらせるために、作業をこなすことに必死になって、余裕がなくなってしまう。
つまり美容師側の「精神的余裕」「体力的余裕」が、全然違うのです。
1000円カットと牛丼チェーンは、仕事量を減らして実現している
「安い」というと、1000円カットをイメージする方も多いと思います。
1000円カットは、美容師、理容師の「精神的」「体力的」負担になる一切の無駄を省くことで、1000円を実現しています。
「10分でカットを終える」「シャンプーをしない」「ヘアカラーやパーマはしない」「切った髪の毛は掃除機で吸う」など、“現場の仕事量”を減らし、効率化することで、業界でも例外的な「安売り」を可能にしています。
「速い、安い、美味い」といえば、牛丼チェーンです。
牛丼チェーンは「牛丼」を“作り置き”することで“現場の仕事量”を減らし、『上質』を維持しながら効率を上げ、「安売り」を実現しています。
薄利多売する美容室は、現場の美容師の首を絞めている
ですが一般的な「安い美容室」の場合、“無駄を省く”ようなことはされていません。そのため、数をこなしたい「カット」を“作り置き”することができず、その場で“調理”しなければなりません。
作業に追われる仕事は、『クオリティー』より「時短」が優先されます。そのため美容師側も「妥協」しないと、その仕事を時間内に終えることができません。
この“現場の仕事量”がそのままの「カット」は、時間に追われることで必要な“調理”にかける時間を削いでいるだけになり、『質』が低下しやすいことになります。
すると、「安いカット」への『信頼』は下がり続ける上に、『美味い』と喜ばれる『信頼』も獲得することができません。『信頼』を得られなかったそのお客様は、もうお店には来なくなってしまいます。
そのため「安売りのカット」は、顧客を獲得しにくい「負のループ」に陥っています。つまり牛丼の『安くて美味い』のような「安売りのカット」を実現できているお店は、かなり少ないのです。
「カット料金」は美容師の価値
美容師のみならず、接客業で現場に立つ方は『安いことが「サービス」である』と、「安売り」を美化してしまいがちです。元が取れているのかもわからない「学生街の大盛り定食」は、店主の心意気と学生の笑顔で成り立っているような所があります。
ですが働く美容師さんにとって、しゃにむに「数をこなす」時間より、『上質』なものを提供するための時間を割く方が、仕事へのやりがいやプライドを持って出来るものです。
とりわけ「カット料金」に、“薬剤などの材料費”は一切かかりません。かかるのは美容師の“労力”だけ。そのため、美容師にとってそれは「自分の美容師としての価値」に等しいものなのです。
お客様も、美容師も、豊かな生活を送りたい
「学生街の大盛り定食」はもちろん素晴らしく、魅力的ではあるけれど、自分のライフスタイルの充実だって同じぐらい大事なはずです。
「お客様は神様」とへりくだる時代は過ぎ、「お客様と私はwin-win」の方が求められています。
仕事に対する真っ当な対価を得て、豊かな生活を送れるような美容師が増えていくことを、願ってやみません。
ではまた。
Twitter、Instagramのフォローもよろしくお願いします。
LINE公式アカウントを作りました。友だち追加、よろしくお願いします。
LINEクリエイターズスタンプを作りました↓
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?