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美容師が言いがちな専門用語を集めてみた

操作イトウです。

美容室で仕事をしている、現役の美容師です。20歳から初めてもう10年以上美容師でいます。

僕は日々の営業で、お客様に専門用語を使わないようにしています。ヘアスタイルの説明など、会話の中でついつい出てしまう専門用語は、お客様が理解できない足枷になってしまいます。

専門用語が多いとハードルが上がる、についてはこちらを↓

ファッション業界の末端である美容師にとって、ファッション業界全体にありがちな専門用語たち。欧米のファッションに影響を受け、横文字でカタカナ多めなワードが次々出てきます。

例えば「メッシュ」など一般に広まった用語もありますが、2020年代の美容師は基本的に「メッシュ」とは言わないです。多くの美容師にとって「メッシュ」はだいぶ古いワードだと認識しているはずです。

ちなみに「メッシュ」をWikipediaで調べたところ、

Mesh 英 網目

mèche 仏 髪型の一つ

だそうです。フランス語が語源のようです、知らなかった。。。

こちらを参照↓

美容師が使う専門用語たち

業界人として掘り出すのが難しいですが、思いつく限り出してみます。また、言葉として日常生活で耳にするワードであっても、意味やニュアンスが違うことがあります。

・施術(せじゅつ)

技術を施すことを指します。

・放置

塗布したお薬を効かせる時間のことを指します。「あのお客様は放っといても大丈夫」ということではありません。

・モデル

プロのモデルさん以外にも、ヘアスタイルの写真撮影させて頂く方を指しますが、練習台になって頂く方のこともこう呼びます。

・ボブ、ボブスタイル

ヘアスタイルの一種です。種類はたくさんありますが、定義としては、『頭のテッペンから降りる髪の毛から、一番下の生え際から降りる髪の毛まで毛先がほぼ同じ長さ』と言ったところです。

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・レイヤー、グラデーション

主にカット技術のことを指します。どちらも『上部から降りる髪の毛と下部から降りる髪の毛に落差がある状態』ですが、レイヤーの方が落差が大きく、グラデーションは小さいです。この境界線に定義はなく、大体の印象で呼び分けています。

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またグラデーションは、「グラデーションカラー」のようにカラーが徐々に変化するものにも用います(バレイヤージュカラーについては後述します)。

・ブラント

カット技術における、真っ直ぐ切ることを指します。

・テンション

髪の毛を引っ張る、突っ張る状態を指します。気持ちのことではありません。

引っ張りすぎてお客様が痛い思いをしないように、ということでもありますが、引っ張り具合によってカットやパーマ、ブロー、アイロンなどに大きく関与する、美容師の最重要ワードのひとつかもしれません。

・キューティクル

髪の毛の表面にある、鱗のことです。シャンプーのCMでよく見る、顕微鏡で見た髪の毛の表面のあのデコボコです。鱗(鎧)の役割を担っていて、髪の毛のダメージ具合に直結しています。

・健康毛・新生毛、既染毛(きせんもう)・既染部

髪の毛が薬剤に触れたことがない状態を健康毛・新生毛と呼び、薬剤に触れてダメージを負った状態を既染毛(きせんもう)・既染部と呼びます。カラーをした髪の毛は既染毛で、新しく生えてきたプリンの部分が健康毛です。

・ファッションカラー、グレイカラー、ブリーチ

白髪のことを「グレイ」と呼びます。

いわゆるお洒落染め(茶髪に染める)をファッションカラー、白髪染めをグレイカラー、金髪に脱色することをブリーチと呼びます。

・リタッチ

カラーやストレートパーマなど、生えてきた髪の毛、いわゆる「プリン」の部分をまたお薬で施術することを指します。

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・明度、彩度

髪の毛の明るさのことを明度、染める色素の濃さ(鮮やかさ)を彩度と呼びます。

・褪色(たいしょく)

染めた髪の毛の染料が抜けて、彩度が無くなることを指します。退(しりぞく)ではなく、「ころもへん」のが使われます。

暖色、寒色、アッシュ、マット

赤や橙色などの暖かい印象の色を「暖色」、青や緑の寒い印象の色を「寒色」と呼びます。

ファッションカラーで染まった色は基本的に茶色なので、赤や橙は見た目に分かりやすいですが、茶色の青や緑ははっきりした色に見えないため、その印象から青系をアッシュ、緑系をマットと呼びます。

・補色

色彩学の『色相環』で見る、対極になる色同士のことを指します。対極の色が混ざると、お互いの色味を打ち消し合うため、彩度を失い何色でも無くなる状態になります。水彩絵の具で赤色と緑色を混ぜると、ドブ色のような彩度を失った色になるように、髪の毛の上でも色の組み合わせを考慮しています。

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・ロッド

パーマを巻いている筒のことを指します。

・1液(えき)2液、1剤(ざい)、2剤

パーマなどは2種類以上のお薬を使うため、塗布する順番に合わせて呼び分けています。


最近話題の用語たち

・バレイヤージュ

バレイヤージュとは、「ほうきで掃く」という意味のフランス語だそうです。

毛先に向かって明るくなる「グラデーションカラー」に近いですが、細かく明るいスジをランダムに足して、より欧米人のような無造作な髪色を演出しているのが特徴です。

・グレージュ、ブルージュ

グレー + ベージュ = グレージュ

ブルー + ベージュ = ブルージュ  です。

ベルギー の古都、ではありません(ちなみに去年、旅行で行ってきました。とっても素敵な街でした)。

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欧米人のような透明感のある髪色に染めた色を呼びます。日本人の髪の毛とは対照的な色味のため、ブリーチをするなど元々ある色素を抜いてから着色する必要があります。

・ロブ

ロング + ボブ =ロブ   です。

あご下〜肩にかかる程度の範囲のボブスタイルを指します。

なぜ専門用語を言っちゃうのか

ファッション業界の言葉は、「今はコレがキテいる!」とか、「今の気分はコレ!」とか、的を得ているようでいて、とても曖昧です。

今だと「サスティナブル」というワードをよく聞きますね。エコ志向みたいなニュアンスだと解釈してますが、「ヒッピー」とか「パンク」とか、ファッションの象徴的な言葉は、思想とかライフスタイルにも反映されるので、端的に言える他の言葉が無くて、「こんな感じ」とふわっとした言葉になりがちです。

美容師の専門用語も、はっきり定義づけされていないものが多くあります。職人気質なのか?感覚的なワードが目立ちます。

ファッションが好きな感度の高い人には細かく伝わるけど、わからない人に「流行」を伝えるには、「サスティナブル」的な言葉を使って、ニュアンスで表現してしまう。これだと、言う側にも聞く側にも語彙力が必要になります。

専門用語は説得力が増す

業界用語というと、ビジネス用語は特に横文字のオンパレード。連発するとカッコよく仕事できる人な感じが出ますよね。「俺、仕事できるぜ!」感が演出できます。でも相手が知ってる前提で話すことになるので、自分に酔ってる風に見えるかもしれません。

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専門用語はお洒落な印象を与えやすい

僕は「サスティナブル」というワードを初めて誌面で見た時、「なんかカッチョいいな」って思いました。絶妙にお洒落な響きだと思いました。「エコ志向」とか言うよりも、新しい言葉は新鮮だし、やっぱり横文字はカッチョいい。美容師はファッションに限らず、新しい物好きが多いです。でないと、時代に見合った素敵なヘアスタイルは提供できません。

またファッション業界は、同じ意味なのに、言葉がリニューアルされることもよくあります。例えば、「タンクトップ」。以前は「ランニングシャツ」でしたね。「スパッツ」が「レギンス」になったのもそうです。「ランニングシャツ」という言葉が定着したせいでお洒落感が損なわれてしまい、お洒落な響きの「タンクトップ」の方が若い世代には受け入れられました。美容界だと、「リンス」が「コンディショナー」になったのがそうです。

新しい用語が生まれやすく、古くなった用語を使わなくなるファッション業界だからこそ、「ナウい」言葉に敏感で、それはすぐ「死語」になってしまいます。

「リンス」と「コンディショナー」についてはこちらを↓

...と、専門用語がたくさんありますね。

美容室に行く前に必ずチェックせよ!とか思ってませんので、美容師が言いがちな専門用語を聞いたときに「確かこんな意味だったな」と思い出してもらえたら嬉しいです。


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ではまた。

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