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「アッシュ」「マット」「グレージュ」って結局、何色?

操作イトウです。

今回は美容師が使う言葉についてです。ヘアカラーを相談する会話の中に、「アッシュ」「マット」「グレージュ」といったワードが出てくることがあります。「赤」「オレンジ」「ピンク」と分かりやすく伝わる色がありながら、「アッシュ」「マット」「グレージュ」ってなに?一体、何色なの?

結局、何色?

美容界では「アッシュ」は青、「マット」は緑だと認識しています。ただし他の業界で色彩を扱っていても、この言い方はしていないと思います。

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「グレージュ」は、グレーとベージュを掛け合わせた造語です。こちらは次で解説します。

では、どうして美容界ではそう呼ぶのか?

「茶色」の「暖色」と「寒色」

色彩学のお話から始めます。色は「暖色」と「寒色」に分けることができます。

その名の通り、暖かく感じる「暖色」は赤やオレンジを中心とした色味のことで、寒く感じる「寒色」は青や緑を中心した色味です。

下の色相環で言うと、上半分が「暖色」、下半分が「寒色」です。

なんとなく印象が掴めるのではないでしょうか↓

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髪の毛についても、暖色と寒色があります。東洋人の髪の毛は「黒」に見えていますが、正確には「茶色」です。暗い茶色が密集しているので、人の目には黒に見えている状態です。

髪の毛は、明るくなるにつれて黒→茶色→黄色と変化します。「鬼滅カラー」のように原色に見えるカラーリングは例外として、一般的な「お洒落染め」は茶色の範囲内にあります。一般的に「茶髪」と呼ばれますが、一口に「茶髪」と言っても、茶色には無限に種類があります。

これ、全て茶色です↓

この茶色には、一つ問題があります。

「暖色」の茶色は『茶色い赤』や『茶色いオレンジ』『茶色いピンク』と見た目に分かりやすいのに対して、「寒色」の『茶色い青』『茶色い緑』は、パッと見て色味を認識しづらい。比較してよ〜く見ないと、青や緑に見えてこない。色彩を勉強してない人にとっては、ただの茶色にしか見えないのです。

『茶色い青』『茶色い緑』は、髪の毛で言うと外国人(西洋人)風に見える、くすんだ印象の茶色です。髪の毛が軽やかで柔らかそうに見える特徴があります。

いつからか美容界では「アッシュ」は青、「マット」は緑と呼び分けるようになりました。じゃあ、なんでそのネーミングなのか?

いつから呼ぶようになったかを、考察してみた

薬の進化によって、今も色の再現性が向上し続けているヘアカラー。90年代以降、『茶色い青』や『茶色い緑』にスポットライトが当たるようになります。ですが赤やピンクのように言葉で説明するのが難しいく、ヘアカラーを商品として売る美容師には、売り文句に欠けてしまいます。

そこでメーカー側が考えたのが、ネーミング。キャッチーでお洒落な印象を与えるために、自社製品のカラー剤の色分けに、独特なネーミングを施すようになります。

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例えば『茶色い緑』には“エメラルド〇〇”とか“スモーキー〇〇”とか、イメージしやすいワードを並べるように。その中で定着したのが「マット」であり「アッシュ」です。

パッケージに表記されたネーミングによって、美容師は自然とそのワードをお客様に使うようになり、ファッション業界特有の、ふわっとしたニュアンスの言葉が使われるようになった、、、

多分そうです、いや絶対そうだと思う!!

美容師が使う専門用語についてはコチラを↓

じゃあ、「グレージュ」ってなに?

前述したグレーとベージュから来た造語ですが、これはInstagramから広まった言葉です。グラデーションカラー、バレイヤージュカラーが流行った際にセットで広まり、他にもブルージュ(ブルーとベージュ)とか、言い回しは多様化しています。

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グレージュは「グレー(灰色)」がベースになっていて、マットやアッシュを含んだ、くすんだ印象のある色味です。ですが茶色の範囲からは外れていて、ブリーチ(茶色を脱色)することを前提としています。なのでより発色が良く、明るいカラーリングに対して言います。

外国人風、海外セレブ風の、ラフで不揃いなカラーリングを実現するためのカラーリングだと言えます。インスタで「#グレージュ」と検索すると山ほど出てきますが、ほとんどがコテで外国人風にスタイリングされています。

なぜ、外国人風に見えるのか?

また色彩学のお話に戻ります。

あらゆる物の色は、赤(マゼンタ)、青(シアン)、黄色(イエロー)の三色の組み合わせで造られていて、髪の毛も肌の色も、赤・青・黄の配分でできています。

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この髪の毛の茶色は、人それぞれ微妙に配分が違います(『パーソナルカラー』と呼ばれます)。大きく分けて東洋人と西洋人は、体型、骨格のみならず肌の色、目の色など、色味も大きく違います。

東洋人は赤・青・黄のうち、赤が多く含まれています。髪の毛の赤色は、重たくハリがある印象を与え、艶っぽく見える特徴があります。

東洋人の髪の毛のイメージ↓

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アジアンビューティーな艶っぽい黒髪ストレートは赤みが多い東洋人特有の髪質なので、西洋人が真似してもなかなかできません。

対して西洋人は青が多く、赤が少ないのが特徴です。青色は、軽やかで柔らかい印象を与え、パサパサして見える特徴があります。

西洋人の髪の毛のイメージ↓

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東洋人が西洋人の髪の毛やファッションに憧れるように、他の人種の方からすると、東洋人の黒髪は憧れの対象になるそうです。

ファッションは最新技術と文化の延長線

まさに無い物ねだりですが、グレージュは「西洋人のようになりたい」気持ちで科学の粋を集めた、東洋人の最新ヘアスタイルです。

ファッションは常に最新技術と文化の延長線にあります。次はどんなヘアスタイルが生まれるのか、楽しみですね。

ではまた。



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