ごめ、飲みすぎた。へへ。 ねえ、かえれない、おれ。ついてきてよお、いえまで。 彼の手には、途中のコンビニで買ったミネラルウォーターと二日酔い防止の栄養ドリンクが入っていた、ビニール袋。持ち手をそれぞれ両耳にかけて、 みてえ~、これでいつでも吐ける、かっきてき。 なんて言っている姿を見れば、誰が見ても帰れない程酔っ払っているのも頷けるだろう。 ごめ、なんてこれっぽっちも謝罪の意を感じない口ぶりの彼の足元はおぼついていて、その腕はわたしの腕に絡みついてくる。 漂うのは、ム
”かわいい”が好きなのは、そんなに良くないことなのだろうか。 「誰のためにやってるの?それ」 咎めるような口ぶりに、少し背中が丸まってしまったような気がした。 辛うじて疑問形を保ってはいるものの、それが純粋な興味から出た言葉ではないことは、わかる。 コスメにネイルポリッシュ、ひらひらしたスカート、ふんわりした袖のブラウス。 見ているだけでわくわくする、”かわいいもの”が好きだった。 同時に、”かわいいひと”になりたかった。 ちょっといいトリートメントでサラサラになった髪
平日の朝、目が覚めると、鳴った覚えのないアラームはすでにスヌーズに切り替わっている。 時刻は朝七時半。頭は、ぼう、としていた。 鎖骨をくすぐる髪に触れれば跳ねていて。まあ、結べばいいか、なんて。…怠惰だ。 目の前にある彼の寝顔を見ていると、このままもう一度寝てしまうおうかな、なんて。あと、じゅうごふんだけ。 そう思ったとき、ふと。 最近、朝ごはん、食べてないなあ。って。 なにせ、わたしも彼も朝にはめっぽう弱い。 そんなわたしは、朝ごはんを食べること、にすら、なんだか優雅さ