本の紹介が苦手な理由と、そんな私がなんとか紹介する最初の一冊。

私は本の紹介が苦手だ。

初っ端で言うことではないと思われるかもしれないが、やっと重い腰をあげて紹介をしたのだ、ちょっと聞いてほしい。

実際に対面した人に紹介することに関しては、そんなに苦手意識はない。
けれど、こうやって誰が見るか分からないネットの世界で紹介するのは、苦手だ。

まず、ビジュアルを載せるかどうか迷う。
今回は、あえて画像を入れないことにした。
本の中を写真で撮って載せるのは法律的にNGだ。本当は表紙もダメらしいのだけれど、表紙はけっこう載せられている場合が多いので、暗黙の了解でOKと思われているのかもしれない。(とはいえ、私は個人的に、ドーンとはっきり載せたくない)
イラストで登場人物を描けばいいじゃないか、と思うかもしれないけれど、私はそれも嫌なのだ。
本の装丁で描かれるものに関しては、作者も納得しているので特になんとも思わない。

でも、作者に許可もとっていない私が描いたイラストを載せたら……。
まだ本を読んでいない人は、私のイラストに影響を受けて、本の中の情景を思い描くのだろう。

それが、なんだか嫌だ。

私は本を読む時、登場人物の顔立ちや、登場人物の声、周りの風景をしっかり想像して読んでいくタイプだからかもしれない。

私は日本語版の2作目が出た頃、「ハリー・ポッター」シリーズを読み始めた。まだ映画化の前だ。だから私の中にはダニエル・ラドクリフさん”じゃない”、声も小野賢章さん”じゃない”ハリーが存在した。それは他の登場人物に関しても同じだった。

だから、映画を見て「ああ、私の想像とは大きく違うな」と思うキャラクターもいた。でも、それでいいと思った。純粋に文章(と、少しの挿絵)から思い描いた自分のキャラクターも愛していた。そして、その想像の余地があったことに安堵もしていた。私は自由に思い描ける方が好きなのだ。

だからこそ、他の人の想像に干渉することに対して、慎重になっている。
イラストレーターの仕事で表紙絵を描いた時は、作者の方からOKをもらったから安心して公開した。
でも、そうではない絵で他の人の想像を規定するのが、どうにも怖い。
本の紹介でイラストを使うのは、だから躊躇われる。しっかり挿絵があって、みんなが同じビジュアルを共有する本ならば、公式のビジュアルとしてそのイラストを真似るのだが、挿絵がない本も多い。

挿絵がない本については、登場人物のイラストを描きたくない。

それが本心だ。

だから、私は、文章だけで本の紹介をしてみる。

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さて、もう一つ紹介の苦手要素があるのだが、それは後回しにして、紹介を始めようと思う。

今回紹介するのは「ステップファザー・ステップ」。宮部みゆきさんの作品で、単行本化されたのは1993年だ。

さっきまでグダグダ書いていた内容が、実はこれに繋がる。

この作品、私が最初に手にしたのは初期の文庫版で、表紙は子供が描いたかのような、ゆるいテイストのイラストなのだ。挿絵はなく、登場人物の容姿は読者の想像に任せるスタイルだった。

だが、人気があるのと、小学校高学年くらいでも読める内容なので、後になって別の装丁でも販売されるようになった。漫画家・荒川弘さんによる表紙の文庫版と、青い鳥文庫の千野えながさんによる挿絵もふんだんな新書サイズ版だ。(青い鳥文庫のものは、ふりがなが多くて読みやすい。カットされた話があるようなので要確認)

私の想像した登場人物たちは、荒川さんや千野さんのイラストとは違ったのだけれど、それはいい。
ちょっと気になるのは、たしかに子どもも読みやすいのだけれど、この作品は大人も十分に面白く読めるもので、子ども向けに書かれたものではないという点。
可愛いイラストで「子どもの読み物か」と手を伸ばさない大人がいたら、もったいない!



宮部みゆきさんの作品を何作か読んだ人からすると、この作品はけっこう”浮いて”見えるかもしれない。
というのは、ファンタジーではなく、かといって刺激的なサスペンス展開もない、ゆったりした作品だからだ。

この作品は、とある泥棒が、とある双子の家に”落っこちてしまう”ところから始まる。

可愛くて頭が良くてちょっと生意気な双子。なんだかんだ巻き込まれていく根は優しい泥棒。キャラクターが生き生きしていて、読んでいてとても楽しい。
強い刺激はないけれど、ちょっとした謎を解決していくので、先が気になってページをめくってしまう。
ゆるやかな気持ちで読みたい時に合う作品だと思う。

私はこの作品を小学校高学年の時に読んだ(と記憶している)。
たまたま母が買って読み終えたのを見て、ちょっとページをめくってみた。そうしたら「あれ、私でも読める?」と感じ驚く。そのまま面白くて読みすすめていって……この作品が、私にとって初めて読む「大人向けということで売っている小説」になった。

たしかに小学校高学年くらいから楽しめる。でも、私は大人にもこの作品を読んでほしい。

私はこの作品を読んで「家族」についてあれこれ考えた。
血が繋がっていれば家族? 一緒に暮らしていたら家族?
家族ってなんだろうか。
大人になってから読み返して、再び考えてみて、ちょっと違った感覚を覚えた。


ぜひ、好きな表紙を選んで買って読んでみてほしいと思う。

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もう一つ、こうやってweb上で紹介するのが苦手だと感じる理由は、たぶん読み手がどんな本を読んできたか分からないからだ。
見えない相手に語りかけ、魅力を分かってもらうのは難しい。
でも、それは私が練習不足というだけだろう。
今後、たまに本の紹介を書いてみたいと思う。
めんどうくさい本好きの、めんどうくさい紹介になるのだろうけれど。