#2 父の癌宣告
「お父さん、癌だって」
ある日、夜遅くに自宅に帰ると母から言われた。
えっ・・・・?
父は今まで大きな病気もしたことがなく、
風邪とかもあまりひかないし健康な人だった。
毎日仕事の後にはスポーツクラブに行って、
大好きなゴルフの打ちっぱなしをして、
帰宅後は軽く晩酌をして過ごす。
自営業だからサラリーマンのようにストレスフルではないし、
休日はゴルフや釣りやヨットや
その時々にハマっている趣味をやり、
好き勝手自由気ままに生きているような人だった。
「ステージ4の肺がん。今度手術をすることになったけど、血管まで浸潤していたら切ることができないから、開けてみないとわからないって。」
母が病院から貰ってきた用紙を見せながら私に説明した。
そこには、肺のイラストが描かれていて
父の癌の場所に印がされており
「血管に浸潤?」というような手書きの文字が書かれていた。
きっと先生に説明された時のメモ書きなのだろう。
要は、
父の癌は手術の時に助かるか否かが決まるということだった。
私は頭が真っ白になったことを覚えている。
心臓の鼓動が速くなった。
「お父さんが死んじゃう・・・」
当時の私は26歳。
社会人2年目になり、
実家で暮らしてはいたが
やっと親孝行ができるかな?と思っていた。
さらに当時付き合っていた彼(今の夫)に
プロポーズをされたばかり。
すでに紹介はしていたので、
いつ両親に報告しようかとウキウキしている時だった。
手術できなければ、きっと余命は残り少ない。
お父さんとバージンロードを歩くことはできないかもしれない。
そう考えたら涙が出た。
「私、プロポーズされたの。
だからお父さんには生きてもらわなくちゃ」
母は「おめでとう」と笑顔で私を抱きしめてくれた。
どうか手術が無事成功しますように。
お父さんとバージンロードを歩けますように。
私の願いは、お父さん一色になった。