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「何としても、人に喋りたいことがある」

齢を重ね高齢になると、いい話・楽しい話・特異な体験や気付いた事・ためになる話・お薦めの場所・店等を人から聞いたり自ら喋って、モチベーションを上げ、明るい気持ちで過ごしたいものだ。私が、お笑いやバラエティ好きのくせに、根がオモロい男ではないし、取っ付きにくい印象を与え、相手が盛り上がらなかったり、又、自分が話をしても、すべったりして、話の意図が伝わらない事もある。それでも、何としても人に聞いてもらいたいことがある。

先日、何度か訪ねたことがある、新潟県五泉市のお客様、「そば処阿弥陀瀬・・石本敏朗店主(営業 土日月11時半〜2時 要予約 併設ギャラリーは5時迄 五泉市阿弥陀瀬390-5  村松公園近く Tel&Fax 0250(58)7823)」に行って、改めて気付かされたことがあった。生蕎麦を食べ終わり、注文していた珈琲を立てている姿に感動させらたのである。昼下がりで、客も7〜8人だったが、それぞれタイミングを測り、まるでmy珈琲を丁寧にたてて、我が世界に没入しているかの如き雰囲気。少しずつ口に含みながら味わい、想いを馳せた。きっと若い時から余程、珈琲にハマり、手打ち蕎麦にも魅せられ、単なる趣味を超え、レベルアップに努めた事だろう。高校の教師を離職後、21年前、満を持して開業したようだ。以後も手造り感を大事にして、極めてきたのが窺える。私同様の年齢に達しているはずだが、未だに心意気が健在で、胸が熱くなった。

そこに辿り着くには、順調であれば、磐越道の安田インターより20〜30分程だが、田園風景が散見され、街中の喧騒を忘れ、こんもりした一角に、忽然と古民家風の佇まいが現れる。蕎麦打ちは、重労働だが、準備を終えた御主人の静に対し奥さんは、、調理とおもてなしで大忙し。肝心の蕎麦は、しっとりと歯応えがあり、天麩羅は、旬の野菜がシャキシャキで、大ぶりの、鮮度の良い海老も美味しい。客は、食後もゆったりと話をしているし、この様な時間と空間に浸れ、至福のひとときを過ごせた。

更に、蕎麦店訪問前後にも忘れない事があった。久しぶりと、カーナビの不調?で、往路の安田インターを降りて、道に迷い、ある理容店に尋ねたら、約10k程の道のりを案内してくれた。せめてガソリン代だけでもと申し出たが固辞された。その話を蕎麦店の石本さんに話すと、この辺には理容店は無いと言う。復路で、どうしても其処を探し、せめて散髪し、お礼を言いたいし、虎刈りにされても我慢するつもりだった。しかし、見つけることができず、しかも、走り回ったおかげで、4〜5件の理容店があったが、該当しなかった??。人から親切にされたら感謝し、場合によっては、返礼する事もある。又会うことが叶わない時は、借りをつくった気持ちになり、どこかの誰かにお返ししたくなる。兎に角この日は、楽しいひと時に加え、感謝と悔やまれる事と多少の疲労も覚えたが、有意義な一日であった。

帰宅後、妻にその話をすると、「行きも帰りも見つけられなかったのは、認知症が入ってきてるからではないの」と一刀両断、厳しい。翌日、鬱陶しい髪を切りに若松の理容店に行き、経緯を話し、「其処で散髪していたら、今日、来れなかったよ」と話したら、虎刈りが恥ずかしく、調える為に、うちに来る筈と自信満々。人は、様々の見方をするものだと実感した。人生の忘れ物が沢山あり、現実的な事も一つ一つを見過ごせず、しかも棚上げする事も数多ある。のんびりしているように見えるかもしれないが、心の中は、渋滞だらけ。要領が悪いので、現実処理もままならない。この先、多少、生き長らえられたとしても、スッキリは、しないのだろう。それなら、益々、聞きたくなる話や喋りたくなる話に寄せていき、おめでたく過ごす。これも一つの生き方だろうか。


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