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現代実在論ってなに?|『現代思想入門』第7章から

現代実在論ってなに?|『現代思想入門』第7章

新書本をきっかけに現代思想を学ぼうとするひとのためのガイドです。

千葉 雅也 『現代思想入門 』「第七章 ポスト・ポスト構造主義」

(講談社現代新書 )から
・2004年のジャック・デリダの死でフランス思想の黄金時代が終わる。
・次は、弟子のマラブー?それとも世紀最後の左翼活動家 バディウ?
👉 大陸哲学と英米哲学、科学哲学の交点から現代思想の道程が見えてきた

現代実在論(new/speculative realism)とは?:

👉(新+思弁的)実在論は、認識論のカント的特権を問題化

・2010年代の哲学の領野で、ポストモダン(言語論的転回)以降、「自然主義的転回」や「メディア・技術論的転回」に続くものとして、独仏の「実在論的転回」が叫ばれている。一言でいうと、「思考」から独立した「存在」を問題にすることに哲学だけでなく人文社会学を位置づける試み。
※ ジョン・R・サール『心の哲学』旭出版社、ベルナール・スティグレール『象徴の貧困−ハイパーインダストリアル時代』新評論など

★思弁的実在論(speculative realism)とは:👉「相関主義批判」

・2007年にゴールドスミス・カレッジで開催された会議(写真の4人)に因んで名付けられた。2011年に論集『思弁的転回』に集約される。
The Speculative Turn: Continental Materialism and Realism
・写真は左からイアン・ハミルトン・グラント、グレアム・ハーマン、クエンティン・メイヤスー、レイ・ブラシエ(出典 Speculation, March 2014)

グレアム・ハーマンによる思弁的実在論とは


・しかし、2010年代の議論の多くがオンラインで行われたため、たとえば、定評のある Stanford Encyclopedia of PhilosophyInternet Encyclopedia of Philosophy の項目にはない。レファレンスをみたところ、The Oxford Encyclopedia of Literary Theoryにやっとspeculative realismの項目が見つかる。DOI: 10.1093/acref/9780190699604.001.0001

「相関主義」批判: 4人の共通性はここ

私たちが「相関」という語で呼ぶ観念に従えば、私たちは思考と存在の相関にのみアクセスできるのであり、一方の項のみへのアクセスはできない。したがって今後、そのように理解された相関の乗り換え不可能な性格を認めるという思考のあらゆる傾向を、相関主義と呼ぶことにしよう。

メイヤスー(M15-16)

★新しい実在論 (new realism)とは:👉「構築主義批判」

・論者:マルクス・ガブリエル、マウリツィオ・フェラーリス、シモーネ・マエステローネら
・マウリツィオ・フェラーリス(Maurizio Ferraris, 1956年-、トリノ)
Manifesto of New Realism(ニューヨーク州立大学出版局、2012年)

「存在するとは、‘何らかの環境’のなかで‘抵抗’するということである」

Manifesto(p.186)

👉「抵抗」:構築主義は存在論と認識論を混同している!



マルクス・ガブリエルの新実在論:

・第一原理:「私たちは事物をそれ自体において把握できる」
・第二原理:「事物それ自体は、世界というひとつの領域に属しているわけではない」

アストリッドがソレントにいて、ベスビオス山を見ているのに対して、私たち(あなたと私)はナポリにいて、ベスビオス山を見ている。

(p.10)


「形而上学」的実在論:存在するのはベスビオス山だけ


ある時はソレントから、別のときはナポリから、偶然に見られる。
👉「見る人のいない世界」だけ

「構築主義」:三つの対象


「アストリッドにとってのベスビオス山」「あなたのベスビオス山」「私のベスビオス山」だけがある。それを超えて対象や物それ自体があるわけではない。
👉「見る人の世界」だけ

「新実在論」:少なくとも、四つの対象が存在


(1)ベスビオス山
(2)ソレントから見られたベスビオス山(アストリッドの観点)
(3)ナポリから見られたベスビオス山(あなたの観点)
(4)ナポリから見られたベスビオス山(私の観点)
👉「世界は、見る人のいない世界だけでもなければ、見る人の世界だけでもない。」
つまり「意味の場ごとに実在がある



オンライン・リソース:

Speculative Heresy.

※ 思弁的実在論のリソース、発表原稿や論文・書評、論者のインタビュー音声などの基本的なリソースがある。


論文アグリゲーター:

• PhilPapers: Online Research in Philosophy.
全文記事へのリンクを含む、論文インデックス。おもな論者で検索すると関連論文が見つかる。

ジャーナル: オープンアクセス

• Collapse—Urbanomic.
Paul Ennis が運営するオープン アクセス ジャーナル。Collapse Volume I(2012)からVIIIまで


• Speculations. An open access journal

まとめサイト:

• Object-Oriented Philosophy. by グレアム・ハーマン

コンファレンス:

• Philosophy Now–Events.

※隔月刊の哲学雑誌(1991年創刊)デジタル版(スマホアプリで)あり

ケンブリッジ・コア(大学出版会の読書案内)


※もっとも重要な哲学者12人の読書ガイド


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