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第1回 知的生産本の流れ

第1回 知的生産本の流れ

読書会の開催前に独学実践の前提となる2つのながれ、①知的生産本の流れ、②知の技法の流れを紹介しました。

1.知的生産の技術/ 梅棹 忠夫【著】1969年

https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784004150930
 
※ 本文中の背景の写真がいつごろの書斎なのか知りませんが、図書や資料がおどろくほど秩序立って整理されています。梅棹先生は探検家ではなく,日本の民族学の先駆者で,大阪にある国立民族学博物館(初代)館長。
 
京大式カード - STUDY HACKER編集部|
https://studyhacker.net/vocabulary/kyodaishiki-card

・「カードについてあるよく誤解は、カードは記憶のための道具だ、という考えである。 これは実は、完全に逆なのである。 頭の中に記憶するのなら、カードに書く必要はない。 カードに書くのは、そのことを忘れるためである。」
・カードで一番重要なのは、カードの組み換え操作。知識と知識の組み換え。
・カードの初心者はたいてい1枚のカードにたくさんのことを書く。カードに1行でもよい。

知的生産の技術(1969:48-49)

※ わたしが大学1年の時、教養ゼミを履修していて先生にレポートのまとめかたを質問したとき、この本と京大式カードを紹介された。生協でさっそく購入してレポートの課題図書からの抜書をカードにまとめてみた。カードが80枚くらいになり,並べてみたところ。ここまで丁寧に情報を整理する必要もないと思い,その後はカードの蓄積は中断(断念)した。

※ 現在の私は、「Googleキープ(メモ)⇒Googleドキュメント⇒Googleドライブ/簡単なフォルダ分け」の流れで不定形でテキストを蓄積して、別に紹介する「 Paperpile」というレファレンスマネージャー(書誌情報のDBと本文PDF)の情報とともに、PDF文書を「全文検索」して、必要な部分だけ取り出して活用しています。

この本は他にも、ドラえもんのポケットなみのアイデアの宝庫でした。
・「かなもじタイプライター」
日本のローマ字書き
・「こざね法」文章をこまかく段落別にして並び替える ⇒川喜田二郎のKJ法に発展

※ この続編は『研究経営論』(1989年)『情報管理論』(1990年)にまとめられた。未読で恐縮ですが、研究者の卵にむけて当時は誰もよく理解していなかった「インセンティブ」、「外部評価」、「テニュアトラック」、「業績の公示」、「競争原理」など(初出1977年)を説いている。

2.理科系の作文技術 / 木下是雄【著】1981年

https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784121006240

同じ前提から出発して同じ結論に到達する論理の道筋は必ずしも一つでない。 研究者が最初にその結論をにたどりついた道筋が最短経路であることはむしろ例外で、多くの場合に、結論に到達してから振り返って道を探すと、もっともまっすぐな、わかりいい道が見つかるものである。 論文は読者に読んでもらうものだから、自分がたどった紆余曲折した道ではなく、こうして見つけた最も簡明な道に沿って書かなければならない。

理科系の作文技術(1981 :48-49)

・文章の組み立て方のコツは,文の長さと構造、はっきり言い切る姿勢、事実と意見の区別
・「レゲットの樹」巨視的な視点から細部に展開する文章を目指す
・「と考えられる」「と思われる」「と言える」といった責任を他者に転嫁する表現はさける
・必要以上に漢字を使わない文章は「字面が白い
・不要な副詞・助動詞は削れ probably perhaps ・would should may might canなど
・基本的な校正記号、図や表の作り方、キャプションの付け方
※ 大学の導入ゼミでこの本を紹介された方も多いのでは。大学生が実際にレポートを書くときの重要な注意が含まれています。文系の方にも通用する内容でベテランとなった今でも忘れがちな指摘が多いです。

3.「知」のソフトウェア / 立花隆【著】1984年

https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784061457225

田中角栄研究でデビューして、3万冊の本を読み100冊の著書がある80歳!(2021年没)の評論家。『宇宙からの帰還』『臨死体験』は衝撃的でした。

資料の整理と保存にかける手間は少なければ少ないほど良い。... 資料の収集整理という作業を一度組織的にはじめてしまうと、だんだんそのこと自体が自己目的化してしまって、肝心の本来の目的(アウトプット)を忘れてしまうということがしばしば起こるからである。

「知」のソフトウェア(1984:34)

・梅棹忠夫の京大式カードはバカらしくてやめた
・川喜田二郎のKJ法は「頭の悪い集団が考えるときだけしか役に立たない」
・情報の持つ見せかけの真実にだまされてはならない
・人間のもつ潜在的能力が知的な活動の大きなウエイトを占める
・全体の校正をきっちり決めるのではなく、流れを重視せよ
・できるだけよい文章をたくさん読むことが良い文章の訓練
・自分で書いた文章を頭のなかで読み返し、何度も手を入れる

4.「超」整理法 / 野口 悠紀雄【著】1993年

https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784121011596

※ 以前紹介したので省略します。「角形2号」の封筒を準備して書類を入れて,それをただ書架に並べるだけというのは画期的でした。押し出し法も取り入れると書類が行方不明知らずに。

5.思考の整理学 / 外山 滋比古【著】1986年初版

https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784480020475

※ 2000年頃、「東大生協で最も売れた本」(デジャブ?)との触書でリバイバルした本。30項目(6ページごと)に発想法、資料の収集・整理、発表の仕方など。パソコンもスマホもない時代のエッセイ風の知的生産本ですが、いまでも人気です。

これらの本は大学1年から私が読んできた知的生産本です。ところが手元(書架)には1冊もありません。いつからなのか忘れましたが図書や雑誌を図書館で大量にコピーして研究ごとに収集して保存することをやめました。今はどうしても必要な紙資料だけを文字が読めるだけの最低の解像度(画素数)で図書の画像(全体の数%)フォルダにわけてGoogleドライブに保存し、もとの資料は1年すぎるとすべて廃棄しています。

自宅書架には大学図書館や国内書店では入手できないものだけ残して、文庫本や新書、資料のコピー類は一切置かない方針です。保存すべき図書・文書の必要な箇所だけを画像で残して文章するとすべてゴミ箱へ。再度、必要になった時は電子版を購入することにしています。


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