イベントレポート:採用に携わるエンジニア向け勉強会vol.1『エージェントとの付き合い方』
こんにちは!ワミィ株式会社 伊藤 和歌子です。エンジニア採用を強化したい企業に対して採用コンサルティングサービスを提供したり、Wamii Mentorsというエンジニア専門のキャリアメンタリングサービスをしています。
2021年4月7日、採用に携わるエンジニア向け勉強会vol.1を開催し、キャスターCOO石倉さんと一緒に、転職エージェントに関わる業界知識やルール、
”知っていれば得をする、知らなければ損をする”裏事情についてお話しました。
そのイベントレポートを公開します!
エンジニアを取り巻く採用市場の現状は?
石倉:働き方とか採用を取り巻く環境って変化をしているというか、不可逆的だなぁと感じているんですよね。つまり、コロナ禍であっても変わらない。需要と供給のバランスがもうかなり売り手市場に寄っているというのがあると思います。人口減少に伴ってIT業界の人手不足は拍車がかかっているし、働き方の形態が多種多様になっていて、正社員にこだわらないのが当たり前になってきている。この状況は当面変わらない。明日から人口が爆発的に増えるとは思えないし、フリーランスや副業の人気が急に下がるとも思えない。そういう意味で不可逆的だなと。そんな中でエンジニア採用というのがどんどん難しくなってきているのが現実かな、という感じです。
ー 直接取引に移ってきている
石倉:採用手法の変化としてはまず、市場取引から直接取引に移ってきていると言えます。市場取引というのは、媒体やエージェントを介したもの、直接取引とはSNSやダイレクトリクルーティングでやりとりし、転職市場に出てくる前に直接決まってしまうというものです。市場取引で言えば、どんどん参入プレイヤーが増えてますよね。だから送る側も送られる側も疲弊してしまっている。
そんな中で、今はSNSでつながろうと思えば、直接中の人とつながれてしまう、そんなところが直接取引が増えている要因かなと思います。
あと一つは、今までだと、掲載して応募を待ってるというのが主流だったんですね。ところが、今は自分たちで苦労して運用しなければならない。人事がめっちゃ頑張ったりとか採用やる側がめちゃくちゃ頑張って時間かけないと取れない、アプローチさえ出来なくなっている、というのがあります。
ー 「直接取引が強い会社が、市場取引でも採用強い」
石倉:代表的な例でいうとメルカリさんですね。メルカリさんとかリファーラル採用めちゃくちゃ強いですけど、媒体使ってもメルカリ強いですよね、ということです。
本質的には、直接採用ができる比率とか自社の採用力を上げるってことは絶対にやらなきゃいけないっていうのは間違いない。でも、これ、一長一短にはできないんですよね。だから、まず短期的には、転職市場とかエージェントって何だ?というところをちゃんと理解して、ちゃんと必要なオペレーションをやり切って、転職市場に出てきている人達をきちんと採用する、ということが求められる。これがやりきれている会社が圧倒的に圧倒的に少ないんですよね。採用が上手くいっていない会社が共通で抱えているのが「エージェント理解できない問題」です。
エージェントとうまく付き合うには?
伊藤:「エージェント理解できない問題」が上がったところで、エージェントについて掘り下げていきたいと思います。エージェントっていうのは、いわゆる人材紹介業者っていうことなんですけど、大きく分けてDB型とスカウト型というのがあります。この違いを知るのも、実はエージェントを上手く活用する上で非常に重要なんです。DB型というのは、基本的にはリクルートとかパーソルのような大手中心の自前でデータベースを保有している会社のことを言います。だから、例えば、パーソルに人材紹介をお願いすると、基本的にはdodaから探します。
しかし大手なので、デジタルなマッチング中心になりがちという点はあります。例えばRuby経験3年だったら2年8ヶ月は落とされるとか、そういうことがでてきます。日本で最大級のデータベースなので、数を決めなきゃいけない、みたいな採用をされている企業だったら、すごく活用できると思います。
ー CAを味方につけれるかが重要
伊藤:大手中心のDB型というのは、体制的にもRAとCAに分担されているところが多いんですね。こういう風に分担されているのを、片面型といいます。RAっていうのは、リクルーティングアドバイザーといって、いわゆる企業担当の営業マンですよね。CAはキャリアアドバイザー。企業の人事が普段会うのがRAで、転職したい人が相談に行ったらアドバイスをしてくれるのが、CAなわけですね。つまり、紹介の鍵を握っているのが求職者と直接会うCAなわけです。だから、実は企業側にとっても、求職者と直接かかわるCAをいかにグリップできるのかというのが、大事になってきます。
伊藤:次に、スカウト型ですね。実は、世の中のエージェントはほとんどこのスカウト型なんです。中小の人材会社が、ビズリーチとか、エン・ジャパンとか、リクナビとかのデータベースで人を探してアプローチするというものです。自前でデータベースを保有していないので、数は出にくいかもしれませんけれども、自社の要件を伝えてそれに見合った人を探してくれる、という意味で大いに活用できます。体制的には、一人の人がRAとCAを両方やる両面型になります。
両面型のメリットは、企業と対面している営業担当者と同じ人が候補者とも話しをしているため、候補者のプロフィールや思考性などをよく理解しており、よりマッチ度合が高まる、というところになります。どちらか一つだけというより、片面型・両面型双方のエージェントと契約をして、それぞれのエージェントの特性を理解したお付き合いをするというのがお勧めです。
みんなが知らないエージェントの真実
伊藤:ここから、いよいよ割とダークな話になっていくんですけれども(笑)
ー 「求人は断ってはいけない?!」
伊藤:実は、エージェントって何百件と案件を抱えていても、企業からの依頼を断っちゃいけないんですよ。だから一応、建前的には受けてくれるんです。「わかりましたー探しますー」って。でも、受けた後、本当に探してくれるかどうかは、分からない。これは断っちゃいけませんよ、って法律で決まっています。ここはまず、理解した方がいいですね。受けてくれたからといって、自動的に人材が紹介されてくるわけではない。今は、一人のエージェントの営業が何百社という紹介先をもっている状況なので、一人当たりの売り上げ目標とか、月に平均何人決めなきゃいけないかっていうのは、月2-3人決めればよいっていう目標が設定されているところが多いです。
ー 上位5社に食いこめるか
石倉:年間1億円売り上げるプレーヤーは一部の超優秀な人で、だいたい1人前と言われる基準が年間5千万くらいなんですよね。だいたい今紹介フィーが年収の35%なので、年収500万の人が決まると175万円、3名決まると月の売り上げが500万円を超えます。それを繰り返していけば、エージェントとしてはそれで一人当たりの売上としては十分です。例えば、100社担当があっても、お得意様の会社上位5社だけで十分だったりします。その営業担当の中で上位5社に入れるかどうかっていうところが、腕の見せ所になります。
ー やはり人なのでデジタルな軸だけではない
伊藤:どうやったらエージェントさんに選ばれるか?デジタル的に考えると「人数×給与×Fee」になるわけですけど、人のやることなので「この会社は決まりやすいか」とか「この事業は応援したいな」とかそういったことが入るかなと思います。
石倉:そうですね、だから例えば、Fee上げとけばいいんでしょ、とかいう会社だったらお金だけの関係というか、そこは人なので。。。この「決まりやすい」というのは結構大事な軸で、この会社にはこういうタイプの人で、こういうスキルセットがあって、こういう経歴を経てる人だとすごい喜んでくださるとか採用されやすい、とかいう傾向がすごくわかりやすいと、該当の求職者を見つけたらあの会社だってすぐ連想できる、連想できるようになると優先的にそこにご紹介できる、というのがあります。決まりやすさをどうつくっていくかというと、エージェントさんの解像度をあげてくっていうことになるんですね。「ここわかんねー、誰送ったらいいの?」というようなところは、やはり優先度は下がりますね。
伊藤:そうですねー。その観点で言ったら、求人票をどう作るかっていうのが、むちゃくちゃ重要になってきます。それこそ、WantとMustしか書いてないような企業があったりするんですけど、そのポジションを募集する背景はこうです、とか、求職者が自社に入ったらどういうメリットがあるのか、市場価値がどう上がるか、というようなところを書く必要があったりとか。あと、年収もですね、400万~1000万とか超ざっくり書いてある場合とかもあるんですけれども、そういうのってあり得ないと思います。ポテンシャルとリーダーに分けて書くとかですね。そういった求人票の定期メンテナンスというようなところも大事になってきます。
ー 採用の魔法の杖は無い!
伊藤:よくあるのが、私たちみたいな外部の者(採用コンサルタント)に相談すると、すぐに採用できるような魔法の杖みたいなのがあるんじゃないか、って思っている企業の方もいらっしゃるんですが、重要なのは求人票の定期メンテナンスや結果通知のスピードだったり、地道にオペレーションの改善をしていくのも近道だったりします。例えば、採用お見送りの対応です。通過するときの評価ポイントってみんなすごく詳細に書くと思うんですけど、お見送りの時ってテンプレートの定型文だけだったりしますよね。それってエージェントからしたら、どこが悪かったのかわからないから、次につながらないんですよ。
石倉:エージェントさんに伝わりやすいようにターゲットの解像度を上げることも重要です。具体的な会社名で、ITコンサルやっててこういうPMの経験がある人で、とか言っておくと、該当の人を見つけた時、「あ、この人あの会社に紹介すれば絶対決まる」みたいな。エージェントが如何に動きやすいかを気にした方がいいですね。
ー エージェントに嫌われる会社の特徴は情報提供が不十分
伊藤:エージェントに対して上から目線の会社、これは嫌われますね。企業からしたら、発注側の立場になってしまうんでしょうね。でも今は圧倒的な売り手市場なわけで、どこの企業に紹介するかというのはエージェントが権限を握っています。いかに自社を選んでもらえるか、という視点で取り組まないといけない。エージェントから見て、パートナーとして見れない会社は紹介先から外れてしまいます。
石倉:あと、情報提供が不十分という会社ですね。皆さんが思っている以上に、皆さんの会社のことを理解するのはエージェントにとっては難しいです。何故なら、担当の会社が何百とあるんで。情報が不十分だと、エージェントが候補者に、会社についてきちんと説明できない。そうすると、結局候補者は待遇の差だけで会社を選ぶことになるんです。いかにエージェントに自分の会社を推薦しやすい武器を提供するか、ということが重要です。
石倉:さらになんといっても、選考スピードが遅い、これは決定的に優先度が下がりますね。書類選考に1週間かかるとかね。僕としては24時間以内に何らかのリアクションは欲しいですね。実は、選考スピード早くなるだけでめちゃくちゃ得するんですよ。しかも自社の努力だけで全然変えれる点なので、実は一番コスパのいい方法なんですよね。
質疑応答
ー 「エンジニアのことがわからない人事が多いので、エンジニアのことがわかるエージェントに丸投げするというケースは昨今減ってきてますか?」
石倉:その行為自体は、あまりお勧めしないですね。丸投げされても、その会社のことを何も知らないから何もできないよね、っていうことなんです。人事がわからないんだったら、なんで現場を巻き込まないのかっていうところなんですよ。自分たちのチームの人を選ぶのに、現場が入って来ないのか、その会社は。そういうので、結構優先度が下がってしまいますよね。
伊藤:それこそ、当社(ワミィ株式会社)に、そういうお悩みで相談いただくケースもあります。本質的には、人事だけが採用の仕事をするのではなくて、全員の仕事として自分たちの仲間を採用するという意識が大切になります。そういう風に、社内全体を巻き込む、スクラム採用をどう浸透させていくか、が鍵ですね。スクラム採用の文化分化を醸成していく、みんなでやるっていうのが、本質的なゴールなのかな、と思っています。難しいんですけどね。
石倉:それって、なんで難しいんですかね?
伊藤:一定の規模以上の会社になると、だいたいどの会社も採用の担当、人事の人っていうのがいますよね。その人達が母集団を形成して、現場の人たちに「面接お願いします」と投げてくるようなオペレーションが当たり前になっていると、それを覆すのがなかなか難しくなります。大きくなってから変えるのってすごく難しい。
それが例えば、まだ少人数のスタートアップで、採用担当が誰もいなくて、”採用はみんなでやるもんでしょ”っていう文化を醸成していくっていうのは、そんなに難しくないんです。最初からそういう文化を定着させるというのが大事ですね。
あと、現場だけでやるのではなくて、経営層もやっていくというのが必須です。スクラム採用ができていない会社って社長が丸投げだったりしますよね。
石倉:そう、人事が社内外注になっちゃってる会社がすごく多いですよね。
伊藤:例えば、採用プロジェクトのプロジェクトマネージャーがいるとしたら、その人は現場のこともよく理解していなきゃいけない。
石倉:おすすめは、人事が人事部じゃなくて、採用したいその部署に籍を置くことですよね。
伊藤:例えば、Slackでスクラム採用のチャンネルを作って、今こういう募集を開始しました、とか、全社向け説明会をいつやります、みたいなそういうやりとりをみんなが見られるチャンネル上でやるっていうのが、入り易い方法、みんなを巻き込んでやる方法としてありますね。スクラム文化醸成の第一歩です。
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以上、ちょうど1時間半にわたり、採用に携わるエンジニア向け勉強会第一回目を開催しました。
今回、採用に携わるエンジニアの情報交換の場として、勉強会参加者限定のSlackグループを作成しました!
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次回は、5月19日に第二弾として「エントリーされる求人票の作り方」をテーマに勉強会を実施します!
またレポートを公開しますのでお楽しみに!!