見出し画像

アドベンチャーゲーム好きにこそオススメしたい『プロジェクトセカイ』

マガジンの都合上、有料に設定されていますが、『プロジェクトセカイ』二次創作に関するガイドラインに従って非営利目的の記事とするため、無料で最後まで読むことができます。

 PS5にXbox Series X、さらにはOculus Quest 2まで、この秋のゲーム業界は新ハードの話題が久々に多くて盛り上がっておりますが。そんな中、ここ最近で自分がいちばん遊んでいるゲームは、じつはスマホの基本無料アプリゲーム『プロジェクトセカイ(プロセカ)』だったりします。

 『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』がどういうゲームなのかと言えば、それはもちろん「初音ミクの音ゲー」という解答で、100パーセント正解です。でも一方で、このゲームはアドベンチャーゲームというか、キャラクターたちの群像劇を描いたストーリーコンテンツとしても、ものすごく完成度が高いんですよ。このあたりの感覚は、同じ開発スタッフが手がけた『バンドリ! ガールズバンドパーティ!(ガルパ)』を知っている人なら、すぐにピンとくると思うんですけど……。

 ここでは、「最近『プロセカ』ってよく聞くけど、いったいどんなゲームなの?」という人に、あえてリズムゲームではない側面から、このゲームをオススメしてみたいと思います。

【お知らせ】ゲームライターマガジンの過去記事がまとめて読める、お得な「単行本版」が発売中!

 本題に入る前に、いつものお知らせです。2020年1月~6月のゲームライターマガジンで掲載した過去記事、全90本がセットになった「単行本版」が好評発売中です! お値段は480円ですので、プロのライター陣がゲームについてアレコレ語る過去記事を読んでみたいという方は、この機会にぜひどうぞ。

20人の高校生がそれぞれに「本当の想い」を探し求める、リアルな群像劇が語られる

 『プロジェクトセカイ』のストーリーは、ミクやリン・レン、ルカ、MEIKO、KAITOといったバーチャル・シンガーが主役ではなく、男女合わせて20人いる本作オリジナルのキャラクターにスポットが当てられています。この20人がそれぞれ4人×5組のユニットを組んで、それぞれ音楽にまつわる活動を進めていく物語が描かれるのです。

 なにより本作の最大のポイントは、キャラクターたちが本当に丁寧に、かつ魅力的に描かれているところです。20人のユニットメンバーは全員が高校生(大半はシブヤにある2つの高校のどちらかに通っています)で、基本的には性格があまり誇張されていません(注:一部を除く)。そのため感情の動きがすごく自然で、どこにでもいそうなリアルな存在になっているんです。

 ガールズバンド「Leo/need(レオニード)」の4人は、もともとは幼なじみだったのですが、成長するにつれてお互いの間に微妙な距離が空いてしまったことに悩んでいます。レオニ(略称)のストーリーは、思春期の学生なら誰もが抱える、ある意味ごく普通の悩みが描かれているのですが、それだけに4人の個性の違いが際立っているんですよね。

画像1

 アイドルユニット「MORE MORE JUMP!(モアモアジャンプ)」では、アイドルとしての自分の立ち位置に悩む3人と、アイドルに憧れるみのりが出会ったことで、お互いの想いに揺らぎが生じます。モモジャン(略称)はアイドルらしい華やかな雰囲気の話になるのかと思いきや、4人の想いを通じて「アイドルとは?」という骨太なテーマを描いていくのが、じつにこのゲームらしいところだと思います。

画像12

 「Vivid BAD SQUAD(ビビッドバッドスクワッド)」は、男性コンビと女性コンビが一緒に活動している特殊なユニットです。互いの関係もひと捻りされているので、そのあたりはぜひ実際のシナリオで楽しんでもらいたいところ。ビビバス(略称)はストリートという独特の音楽ジャンルを扱っているのですが、まったくの初心者であるこはねちゃんが主人公になることで、このジャンルになじみの薄いプレイヤーでもすんなり入り込めるようになっています。

画像3

 先に『プロセカ』のキャラは「誇張が少ない」と言いましたが、ミュージカルユニット「ワンダーランズ×ショウタイム」の4人は別格。自称スターの天馬司をはじめ、いずれも常識を超えてぶっ飛んだメンバーばかりです。ただ、そんな彼らも感情の動き自体はすごくリアルで、しっかりと共感できる人物として描かれています。ワンダショ(略称)の物語は本当に、オモチャ箱をひっくり返したような楽しさで、このゲームのシナリオの多彩さを改めて感じさせてくれます。

画像4

 スマホゲームのキャラクターとして、ある意味ワンダショ以上に特異な存在なのが、「25時、ナイトコードで。」の4人です。ニーゴ(略称)の4人はSNSだけでつながって活動している、いわゆる「ボカロ職人」サークルなのですが、じつは各自がかなりヘビーな悩みを抱えています。ゲームのシナリオとして答えを出すのも難しいような問題に対して、シリアスに向き合っているニーゴの物語は、美少女ゲームなど既存のノベルゲームが好きな人に、いちばん「刺さる」ものかもしれません。

画像5

 さて、そんな5つのユニットに対して、ミクたちバーチャル・シンガーがどのように関わっているのかというと、キャラクターたちの「本当の想い」から生まれた「セカイ」と呼ばれる不思議な空間で、キャラクターに寄り添い、各自の想いを音楽にする手助けを行う役割を担っているのです。

 じつは筆者は、『プロセカ』の開発スタッフに本作のシナリオについてインタビューさせてもらったことがあるのですが、このミクたちの役割は「音楽ソフトとしてのミクたちの立ち位置と同じになっている」と聞いて、正直、目から鱗が落ちました。ミクたちが物語の主役ではないことに引っかかる人もいるかもしれませんが、個人的にはものすごく良く考えられた設定だと思っています。

イベントストーリーで、ユニットを超えたキャラ同士の出会いも!

 『プロセカ』のゲーム進行は、キャラクター5人を選んでリズムゲームをプレイすることで、選んだキャラの所属するユニットにポイントが溜まって、ストーリーがオープンされていくという形式です。ローンチ時から実装されているメインストーリーは、5つのユニットごとに各20話(プラス、バーチャル・シンガー視点のストーリー20話)で、ここで描かれている物語は、自分たちの悩みをどのように乗り越えて、音楽ユニットを結成することになったのかという、言わば各ユニットの「エピソード1」的な位置づけになっています。

画像6

 それとは別に、『プロセカ』では約2週間交代のペースでイベントが開催されており、こちらのイベントストーリーでは、メインストーリーの続きにあたる物語が描かれています。この文章を執筆している時点では、まだ各ユニットのイベントが一通り終わる前の段階なのですが、今のところはメインストーリーで語られていなかった部分を補完するような内容が多くて、本格的に物語が動き出しているというわけではまだない感じですね。逆に言うと、今からであれば十分に、今後の物語の流れに追いつくことができるとも言えるでしょう。

画像9

画像10

 また、ユニットごとのストーリーが描かれるイベントだけでなく、ユニットの枠を超えてキャラクターが交流するイベントも行われています。最初に説明したように、本作のキャラクターは大半が2つある高校のうちのどちらかに通っているので、クラスメイトだったり先輩・後輩だったりといった接点があります。また、レオニ・咲希とワンダショ・司の天馬兄妹や、モモジャン・雫とレオニ・志歩の日野森姉妹のように兄弟のキャラもいたりして、あちこちで意外な人間関係が生まれているのです。

画像10

 11月の前半には、女子高の体育祭を舞台にしたイベントが展開されたのですが、これがユニットごとのストーリーとはまったく別の楽しさに溢れていて、すごく面白かったんですよね。メインストーリーの20話を費やして、各キャラの性格が事前に印象づけられているので、ユニットを超えてキャラが出会ったり、一緒に行動したりする場面では、まるで『スパロボ』のような(笑)ワクワク感があるんです。

画像10

 今後、イベントストーリーが進んでいくにつれて、こうしたユニットを超えた人間関係が、どんどんと拡がっていくことになると思います。そうなると、総勢20人というちょっと多めに感じるキャラクターの人数も、作品世界全体の厚みにつながってくると思うんですよね。

画像11

画像12

▲ちなみに、ユニットを超えたキャラクター同士による会話は、マップ画面でも時折発生しています。

イベントのクライマックスを歌とダンスで体験できる「バーチャルライブ」がスゴイ! 

 さて、これまでに説明したストーリー関係の要素は、物語やキャラクターに力を入れている今時の音ゲーであれば、多少なりとも用意されているものです。そんな中で『プロセカ』が他の音ゲーと決定的に違う点は、「バーチャルライブ」の存在です。

 上のPVを見てもらえば分かるように、「バーチャルライブ」は『プロセカ』のキャラクターたちが歌って踊るライブステージに、オンラインを通じて参加できるというシステムです。ある意味、プレイヤー全員が無料で参加できる専用のライブ会場が用意されている(今はキャパの問題で、時間帯によっては入場に苦労しますが)と考えると、これってめちゃくちゃスゴいシステムだと思いませんか? 

画像13

 ただ、システム的にはスゴくても、これをゲームのストーリーの中でどう活かしていくのかが気になるところ。バーチャルライブは基本的に、ハロウィンをはじめとする季節の行事や、各キャラの誕生日に合わせて開催されています。それだけでなく、先に説明した期間限定のイベントが終了した直後に、その内容を受けた楽曲の演奏を、「アフターライブ」として披露しているのです。

 イベントで新たなストーリーを展開して、そのクライマックスとしてユニットが物語に沿った楽曲を演奏するだけでもスゴイのに、場合によっては人気ボカロPの書き下ろしによる新曲が、バーチャルライブでお披露目されたりもするのです! 音ゲーに限らず音楽と連動したゲームの中でも、楽曲やライブをこんなに贅沢な使い方で体験できるタイトルは、今までになかったと思います。

 しかも、あくまでたまたまとはいえ、コロナ禍でリアルのライブが困難な状況下に置かれた2020年に、このシステムが実現したというのは非常に興味深いと思います。バーチャルライブの存在により、『プロセカ』はエンタメの最新・最先端をゆく作品になっていると言っても、決して過言ではないでしょう。

画像15

画像14

 とにかく、このバーチャルライブを体験するためだけでも、本作をインストールする価値は十分にあると言えます。バーチャルライブ自体は不定期の開催ですが、現在はアップデートによって、プレイを始めてすぐの人はウェルカムライブを見ることができるので、ぜひ体験してみてください。

音ゲーが上手くない人でも、ストーリーを問題なく楽しめる!

 とりあえず『プロセカ』の音ゲー以外の部分について、ザザッと説明してきましたが、いかがだったでしょうか。しかし肝心の音ゲー部分の魅力に関しては、筆者からはなかなか説明しづらいところです。なにしろ筆者は、5段階ある難易度のうち3番目にあたるHARDが、ぜんぜんクリアできない程度の腕前なので……。

  ただ逆に言えるのは、その程度の腕前でもメインストーリーやイベントを楽しむ分にはぜんぜん問題ない、ということです。イベントは開催期間中にこまめに音ゲーをプレイしていさえすれば、すべてのストーリーをちゃんとオープンできます(ランキングは数十万位ですが)。メインストーリーはデフォルトの20話×6をオープンするのがやや大変ですが、それもキャラクターを入れ替えつつ、時間をかけて繰り返しプレイしていれば、自然と開いていきます。まぁ、メインストーリーが開ききらないうちに、イベントでその先の物語が描かれるのは、ちょっと微妙なところですけど……。

 とにかく、音ゲーやボカロ曲に興味のある人はもちろんですが、それだけでなくキャラクターやストーリーに興味のある人は、ぜひ『プロセカ』を遊んでみてほしいと思います。セリフと歌、そしてダンスによって紡がれる新たな物語のセカイが、ここに広がっていますので。

ここから先は

0字

¥ 100

この記事が参加している募集

心に残ったゲーム

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?