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2023年映画ベスト10

こちらではご無沙汰しております。noteの更新もすっかり年1回、この映画ベスト10だけになってしまいました。

2023年は初頭に体調その他があまり思わしくなかった関係で、仕事を休んでしばらくのんびりしておりました。おかげで映画やライブを楽しむことができたのですが、そのぶん今は生活がピンチです(笑)。ちなみに仕事はすでに再開しておりますので、原稿のご用命などがありましたらよろしくお願いします。

さて、2023年に映画館で観た新作映画は47本。のんびりしていたわりにTIFFなどの映画祭に行く機会がなかったので、あまり本数は増えていないですね。そんな中から選んだ2023年の映画ベスト10がこちら。

  1. エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

  2. ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り

  3. 雄獅少年/ライオン少年

  4. フェイブルマンズ

  5. 戦慄怪奇ワールド コワすぎ!

  6. ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー

  7. バビロン

  8. サイド バイ サイド 隣にいる人

  9. ゴジラ-1.0

  10. 札束と温泉

なんというか、特定の映画クラスタが2、3個くっついて混淆した結果、どこにも属さないヘンな並びになった感じ(笑)。これはこれで非常に自分らしくて気に入っています。では、以下で各作品についてのコメントを。


1. エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

年間ベスト1にアカデミー賞作品を選ぶとは、我ながらなんて保守的なんだと思いつつ。でもそれがアカデミー作品賞初のSF映画で、しかもマルチバースにミシェル・ヨーの実人生(彼女はミスコンから女優になって富豪と結婚した一方で、80年代香港映画の現場で叩き上げられてクンフーマスターばりのアクションスターになったという、映画に出てくるマルチバースのいくつかを体現している人なのです)を絡めているという、オレの好きなもの全部盛りの作品なので。

思弁的フィクションとしてのSFとくだらないバカギャグ、そして香港映画をはじめとするオタクネタをひとつに集めて感動的なドラマに仕立て上げる離れ業に、とにかく脱帽です。

2. ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り

君は完璧で究極の娯楽映画が、まさか『D&D』ブランドから出てくるとは!  名作テーブルトークRPGの世界観がどうこうという話はいったん置いておくとして、とにかくエンタメとしての筋が良い。ドキドキハラハラしながら笑って泣いて、観終わった時には登場人物全員を好きになっている、本当に素晴らしい映画です。

3. 雄獅少年/ライオン少年

『ヤングマスター』や『黄飛鴻(ワンチャイ)』シリーズでおなじみの広東獅子舞を題材にした、青春映画として出色のCGアニメ。個人的には2023年一番の掘り出し物。コミカルな雰囲気の前半から、後半に進むにつれてどんどんとヘビーになっていく中国映画特有の流れが炸裂。スポ根的な熱い展開でもフィクショナルな心地良さには溺れない、登場人物に対する厳しくて優しい視線が胸に沁みます。

4. フェイブルマンズ

スピルバーグの自伝として観ると、『未知との遭遇』や『E.T.』といった作品で父親がいなくなった母子家庭の寂しさを繰り返し描いてきたはずなのに、父親と和解した後に作られた本作では母親に非があるような話になっていて「えっ?」と思うのですが。とはいえ、あの巨匠が巧みな挿話で「映画とは何か」「表現することとは何か」を真正面から語ってくると、それはもう平伏せざるを得ないですよ。

5. 戦慄怪奇ワールド コワすぎ!

2018年ぐらいから、日本の映像作品ともう一回ちゃんと向き合おうと思い立ってアレコレ観始めたなかで、個人的に一番の発見が『コワすぎ!』シリーズで。ギャグすれすれのパワフルで壮大な展開にワクワクしたものの、『超コワすぎ!』では描きたい内容に対してシリーズのフォーマットが逆に足枷になってきたような気がして、中断も止むなしと思っていたのですが。

久々にリブートされた本作は、このシリーズならではの痛快なドライブ感と、霊能者をはじめとする各キャラの立ち具合はそのままに、ちゃんと今作られる意義のある作品になっているのが、すごく良かったです。一応はシリーズ完結とのことですが、また作りたくなった頃に復活してくれるといいな、と思っています。

6. ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー

坂元裕吾監督の人気シリーズ第2弾。いきなり男性コンビの物語から始めて虚を突くあたりは、もはや巨匠の語り口。主役2人のやり取りはユルさが増した気がするけれど、クライマックスのアクションは前作以上のキレで流石。1作目とテイストが微妙に変わっているのはプラスマイナス両面があるとは思いますが、そこも含めてシリーズとしてまだまだ発展できるということでしょう。すでに制作が伝えられている3作目も期待しています!

7. バビロン

サイレント映画黄金期のハリウッドで繰り広げられるゲスいエピソードの数々に眉をひそめる人もいるでしょうけど、それをオールスターキャストも含めてゴージャスに描き出すのは魅力的。ハリウッドの光と闇の両面を体現してみせるマーゴット・ロビーが素晴らしい。そしてなにより、ラストの映画内時間さえも飛び超えるモンタージュを体験してしまったら、これはベスト10に挙げるしかないですよ。

8. サイド バイ サイド 隣にいる人

2023年に観たなかで、いちばん不思議な映画w 「そういうことか!」と気づいてからは、この感覚を平熱で描けるのにシビれました。現実感のないふわふわとした主人公に、坂口健太郎が絶妙なハマり役。……と思ったら、最後に同じトーンで出てきたあの人に笑いました。好き嫌いの分かれる映画だとは思いますが、オレは好きですよ。

9. ゴジラ-1.0

個人的に、ドラマ部分には引っかかるところが山のようにあるし、ゴジラという存在の捉え方に疑問があったりはするものの、銀座の街中で暴れるゴジラの姿をこのクオリティで見せられたら、怪獣映画で育った自分としてはグゥの音も出ないです。万人にオススメできる巨大怪獣映画というのも、かなり貴重だと思うので。

10. 札束と温泉

ちょっと変わったミステリー映画というぐらいの予備知識で観に行ったので、グループSNEの一員でマダミスの作者として実績のある方が監督だったのには驚きました。全編をワンカット風に処理する挑戦的な試みと、キャストの初々しさが上手く噛み合って、素直に面白かったです。

【おまけ】2023年映画ベスト11位~20位

例年は、最後にベスト10に入らなかった作品をいくつかピックアップしていたのですが、2023年はベスト10圏外にも思い入れのある作品が多かったので、今回はベスト20まで挙げておくことにします。11位から20位までは以下の通り。

11 ザ・フラッシュ
12 窓ぎわのトットちゃん
13 フリークスアウト
14 ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: VOLUME 3
15 THE WITCH/魔女 -増殖-
16 崖上のスパイ
17 アリスとテレスのまぼろし工場
18 ザ・クリエイター/創造者
19 世界で戦うフィルムたち
20 少女は卒業しない

『ザ・フラッシュ』や『フリークスアウト』はギリギリまでベスト10に入れるつもりだったけど、他の作品との兼ね合いで惜しくもこぼれてしまった感じ。それにしても『GotG』もそうですが、2023年はアメコミ映画がベスト10に1本も入らなくて。やっぱりマーベルもDCもいろいろと難しい時期なんでしょうか。

年内ギリギリに観た『窓ぎわのトットちゃん』は、原作のメッセージを受け継ぎつつアニメ-ションとしての力強さが素晴らしい。『アリスとテレスのまぼろし工場』もかなりの力作で素敵な作品だけど、個人的には事前の期待が強すぎたかなぁ。

『THE WITCH/魔女』は、自分は1作目の前半、牧歌的な青春映画だった時の雰囲気がすごく好きだったのですが、よりエンタメ映画に振った2作目も、これはこれで好きです。『崖上のスパイ』は反日プロパガンダ映画の体裁ながらサスペンスフルな展開が上手くて、チャン・イーモウ監督はやっぱり娯楽映画のほうが良いなぁと思ったり。

ギャレス・エドワーズ監督の『ザ・クリエイター/創造者』は、ストーリーテリングには相変わらず難があるものの、ビジュアルのイマジネーションが圧巻でした。哀愁の自爆ロボにシビれます。

海外の映画祭に体当たりで挑む『世界で戦うフィルムたち』は、前向きな気持ちになれるドキュメンタリー。女子高生4人のドラマが交錯する『少女は卒業しない』は、語り口が巧みで面白かったです。

一言追記しておくと、前作を2019年のベスト1に推した『アクロス・ザ・スパイダーバース』は、前作よりも居丈高な映画になっている点と、なによりまだ完結していないという点で、現時点での評価は保留。とりあえず後編待ちですね。


2024年はMCUの公開予定が1本しかなかったり、いろいろと転換期になりそうな気もしていますが、どんな映画を見ることができるでしょうか。それでは、また1年後?にお会いしましょう。


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