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ちゃんとこの世の人

我が家から高校までの道のりは自転車で45分。
だけど、娘はすぐにこれを諦めた。

「お父さん、連れてって」
入学後、3日目の朝
この一言で主人は3年契約で娘専属運転手を受け入れた。
中学の三年間、文化部だったから
チャリ通でちょっとは体力付けてくれたらな
なんて思ったのに、
私の期待は秒で消えた。

暑い日も寒い日も
雪の日も雨の日も
彼女は車で登下校している。


先日、お迎えコール無しに
娘は突然バスで帰って来た。
何かあったのではないかと、要らぬ心配をしてしまう。

私:どうやって帰って来たの?
娘:えっ?バスで帰って来たよ。


時々ある。
彼女の心は彼女にしか分からない。
「電車の気分だったから」
と、突然電車で帰って来たりもする。

私:今日はバスの気分だった?
娘:ううん。
  今朝、お父さん、体調悪そうだったから、
  お迎え来てもらうの、なんか申し訳なくて。


実はこの日。
珍しく主人が体調を崩していた。
娘は朝ご飯の後、
主人が薬箱から風邪薬を出したのを見たらしい。


お父さんのそんな動きにも気付くようになったのか。
自分でどうにかしようと動いたのか。
すごいじゃないか。
親ばか炸裂。
でも褒めるところは褒める。

主人:お迎えくらい行けるよ。
   父さんの心配しなくても良かったのに。


主人は優しい。
特に娘にはあまい。
でもまぁ
娘の運転手は
主人にとって幸せな時間なのかもしれない。


そんな感動の一コマ
かと思いきや
娘からの爆弾発言。

娘:ねぇ。私、幽霊になってなかったかな?

えっと・・・。
順を追って話して欲しいんだけど
どういう意味?


学校近くのバス停からバスに乗ると
お客さんは一人。
その一人も次のバス停で降り
そこからしばらく娘一人。
静かでシーンとしたバスの中。

運転手さん、お客さんがいないと思ってないかな?
私、見えてる?
幽霊だと思われてない?

彼女はそんな不安な気持ちでバスに揺られていたと。

いや、普通にお客さん一人の時もあるでしょ。
気配はあるけど見えない
なんてことは無いでしょ。
と言いかけたけど。
皆まで言わずに笑って返した。

娘:途中、乗車して来たおばさんと二人になって
  同じバス停で降りたから
  多分大丈夫だと思う。

ん?
何が大丈夫なのか?


まぁ夏だしね。
ホラーも無しではないか。
というか、
そんなことを考えるあなたに
お化けもびっくりよ。

心の成長に感動していた私のドキドキは
また秒で消えた。

ゆっくりで良い。
側にいる間は急いで大人にならないでね。

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