見出し画像

旦那さんの朝を想像してみたら、とても大変そうだった話。

朝。隣の妻さんの枕元から、携帯のアラームが鳴る。割とすぐに止めてくれるので、僕はまだまだ夢うつつ。
妻さんは、すぐに布団を出る時と、少ししてから動き出す時があるようだけど、僕が二度寝をしてしまうので、どちらが多いのかは知らない。
15分後に、今度は僕の枕元で腕時計のアラームが鳴る。今度はちゃんと起きる。

「おはよう」と、洗面所の扉を挟んで妻さんに挨拶。帰ってくる声のトーンで、その時の気分をなんとなく把握。悪そうな時は深追いしないでトイレへ。普通か良さそうな時は、扉を開けて顔を見るか、扉越しに少し会話をする。
僕としては断然、後者の方が幸せなんだけど、最近の妻さんは、朝の機嫌がよろしくないことが多い。はやく機嫌が直るといいなぁと思いながら、用を足し、日課のトイレ掃除をする。一応、水曜日と土曜日に手を拭くタオルを洗濯するんだけど、最近うっかりすることが多くて、気づいた時に変えている。
その後、布団をひっくり返して(これは妻さんのこだわり。人間は寝ている間に大量の汗を掻くから、起きてすぐに布団を畳んでしまうとカビが生えるらしい。カビた布団は僕も嫌だ)、妻さんが使い終わった洗面所で、顔を洗い髪型を整える。

お化粧を終えた妻さんは、上は外着、下はパジャマでキッチンに行く。
僕だったら、汚す可能性の高い上は後で着替えることにして、下だけ先に着替えるけど、妻さんは座った時にスカートがシワシワになるから、下が後らしい。お化粧もあるしね、と思っていたが、上の着替えはお化粧の後らしい。だったらいっそ、下を着替えるタイミングで上も着替えればいいのではないかと思うけれど、提案したことはない。人それぞれだからね。
上下パジャマの僕は、その後家の掃除をする。
妻さんは、機嫌がいいと、このタイミングで自分から話しかけてくれる。今の季節はだいたいが天気の話。寒がりの妻さんは、秋から春にかけて、1日1回は「寒いね〜」って言ってる。冬は5回くらい言ってる。それでも、会話がないよりは全然嬉しい。機嫌が悪い時に聞こえてくるため息は、自分に向けられたものではないと分かっていても、やはり怖いしビクビクしてしまう。
掃除は、雑巾を使う日と使わない日がある。妻さんは、ご飯ができる1分前くらいに「お待たせ〜」と声をかけてくれる。雑巾を使っていない時は、僕の方が早く食卓に着くけれど、雑巾を使った日は、洗ってベランダに干してから行くから、妻さんを少し待たせてしまう。そうすると妻さんは、少し嫌みたい。だからなるべく急ぐ。

朝のニュースは、暗いものが多い。犯罪とか汚職とか事故とか。聞いていて気持ちのいいものではないことは確か。でも、聞いた何秒後かには忘れているような、遠いところの出来事って感じだ。
しかし妻さんは、これにもどうやら気持ちを揺さぶられているようだ。怒ったり、呆れたり、悲しんだり、朝からとても忙しそう。一時はテレビをつけないで、一緒にYouTubeを見るようにしたけど、あまり続かなかったな。何でだっけ?
朝ご飯は、妻さんの方が先に食べ終わることが多い。ちなみに夕食は僕の方が早い。そして妻さんは、先に食器を下げる。
ご飯の始まりと終わりだけを見ても分かるように、朝の妻さんは、全体的に余裕がない。何かに追い立てられているように、「早く、早く」とせかせかしているように見える。何でだろう?

その後、妻さんは洗い物、僕は布団を畳んで着替え。同時にお湯を沸かして、コーヒーを飲む。朝からゆっくりとお茶をする時間があることは、なんて贅沢なんだろうと思う。
妻さんはiPadのニュースアプリで、美味しいものや星座占いやゲッターズ飯田さんの記事を見ている。僕はテレビを見ている。
妻さんが気になる記事があると、声をかけてくれて一緒に見ることもある。あと、キャンプの記事とかも時々見せてくれる。僕がキャンプ好きだからだ。妻さんは優しい。でも実は、僕も同じ記事を見たことがあったり、なんなら記事より詳しく製品について知っていることもある。妻さんの機嫌によっては、言わないけど。
いつか、妻さんともキャンプに行きたいと思っている。非日常的な空間で、のんびりとご飯を食べたりお喋りをすると、とっても楽しそうだ。

7時40分になったら掃除機をかける。妻さんは先に歯磨きを始める。でも最近の妻さんは、35分くらいにコーヒーを飲み終わって、歯磨きを始めてしまう。ここでもやっぱり、せかせかしている。ふむ。
僕は最大限、40分までゆっくりを味わっている。

掃除機をかけ終え、僕が歯磨きを始めると、妻さんはパジャマの下から外着の下に着替える。最近は、スカートじゃなくてパンツの日が多い。前に何かで、女性はパンツを履く日の方がテンションが低いって見たんだ。心配。
僕が歯磨きを終えると、妻さんは、コートを着込んでじっとテレビを見ている。はっきりとした目鼻立ちの女性アナウンサーが、今日の占いを読み上げる。実はご飯の時に一度聞いているから、順位もラッキーアイテムも知っていることが多いんだけど、妻さんは必ず、もう一回見ている。見ているというか、睨みつけているというか。
「今日も元気に、いってらっしゃい」という締めの言葉と聞き終えると同時に、妻さんがテレビを消す。時々、言葉の途中で切る。そういう時はあまり機嫌が良くない気がする。でももっと良くない時は、テレビをなかなか消せないみたい。
「行きますか」と僕が声をかけ、渋々無言でテレビを消す、という時もたまにある。そういう時の妻さんは、家を出るのが大変そうだ。玄関で一緒に靴を履く時も、ため息をついていたりする。ぎゅっとハグをして、元気になってくれる時もあって、そうするととても嬉しいけど、それだけじゃ元気になれない時もあるみたいで、力不足だなぁと少しくやしく思ったりもする。

家を出て、一緒に駅まで歩く。妻さんの機嫌がいい時は、わいわいとお喋りしながら歩く。楽しい。機嫌の悪い時は、無言でズンズンと歩く。楽しくない。もっと機嫌の良くない時、妻さんは歩くのが遅くなる。心配。
妻さんから、気持ちとかを話してくれる時もある。聞いていて思うのは、いろいろなことへのハードル高いなぁということと、結局は割といつも同じようなことで苦しんでいるんだなぁということ。
妻さんも頑張ろうとしているのは伝わってくるけど、やり方がちょっと合ってない気がする。一応僕なりの意見は伝えたりもするけど、どうするかは妻さん次第なので、見守るしかない。早く妻さんが楽になるといいなぁと思うけれど。
駅について、新しくできたエスカレーターでホームまで上がる。新しく、といっても、もう半年ほどは経ったのだろうか。できた時は、奥まった位置に少し違和感を感じたが、今はもうすっかり馴染んでいる。
妻さんは時々、健康のため、とわさざ階段を使う。僕は基本的に、楽できる時は楽をしてもいいと思うけど、そういうところでも妻さんは、自分に厳しい。1人の時は基本階段を使っているらしいし。

ホームの定位置まで進み、電車を待つ。そういば、少し前まで毎日見ていた人が、気づいたら全然見なくなったな、と思うことがたまにある。僕と妻さんの朝は、約2年、大きく変わっていない。しかしその間に、仕事が変わったのか、引っ越したのかは知らないけれど、とにかく、朝使う電車の時間が変わる人がいるのだ。2年とは、短いようで長いのかもしれない、とぼんやり考えた。

電車に乗ってしまうと、基本的には混んでいるので、あまりお喋りはしない。妻さんの機嫌がいい時は、小声で少し話す時もあるけど。
1度、同じホームの向かいの電車に乗り換える。降りようとしたら、ドアの前に立つ人が頑なに動かない時がある。強いなぁ〜と、逆に感心する。妻さんは怒っているけれど、怒ると疲れるから、損だと思う。
乗り換えた電車は、さっきよりも少し空いている。そのおかげか、妻さんも少し気分が良さそうなことが多い。今日の夜は何を観ようとか、週末は何をしようとか、今後の楽しい予定について話したりする。そういう話は、とても楽しい。

妻さんが職場の最寄り駅で降りたら、そこからは自分の時間。お気に入りのフルワイヤレスイヤホンを装着し、好きなアニメやYouTubeを、職場までの30分ほど楽しむ。

僕だって、朝は元気チャージが必要だ。

おしまい

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?