夕顔
夕顔を見よう、と貴方は言った。
八月最後の週末だった。
なんで、そんな顔見せますか。
新しい品種を手に入れたと年甲斐もなくはしゃぐ貴方に、私は呆れた声で呟く。
茜が落ちてゆく時間に、私たちは一つの鉢を囲んでいた。陰って久しい庭先は案外涼しくて、夏夜と言えど外気は私達の体温を少しずつ奪っていく。
明日の朝には枯れ行くこの花が、どうしてそんなに気を引くのかわからない。
なんで、と漏れた声は近すぎて聞こえてしまっただろう。
きょとん、と目を丸くする貴方は、次の瞬間頬を綻ばせた。
「ずっといてくれる君と、同じだと思ったからさ」
真白い花が、はにかむように咲きほころんだ。
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