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中国で「ゼロコロナ」政策に対し抗議デモ ゼロコロナ政策とは?  国産ワクチン、失敗? 医療格差も

 中国で、習近平指導部による「ゼロコロナ」政策への抗議活動が、各地で広がっている。北京中心部でも、27日夜から28日の未明にかけて、政策に反発する市民が1000人以上集まった。

 人々は、表現の自由の象徴となっている白い紙を掲げ、

 「自由をくれ」

「個人独裁反対」

 と、習近平国家主席を大声で批判。

  北京で抗議活動があったのは、各国の大使館や外資系企業のビルが立ち並ぶ繁華街。

 もともとは、抗議活動は、新疆ウイグル自治区の区都であるウルムチで24日に火災で亡くなった犠牲者を悼む人々が、川沿いの広場に花束やろうそくを持ち寄ったのがきっかけ(1)。

  10人が死亡した火災も、厳格な防疫対策で被害が拡大したとされ、SNSで情報を知った市民が続々と加わる。

 「言いたいことがすべ削除されてしまう。だから何も書いてない白い紙を持っている」

(2)

  18歳の高校生は、「白紙」にこう、思いを込める。欧米メディアも、抗議活動を大々的に報道。英ファイナンシャル・タイムズは27日、

 「全国規模の範囲、そして共産党の権威への直接的な挑戦という点で、1989年の天安門事件以来、前例がないものだ」

(3)

 と伝えた。


ゼロコロナ政策とは

 

 ゼロコロナ政策とは、新型コロナウイルス感染を徹底的に封じ込めようとするもの。そのおかげというべきか、2020年の半ばには、中国国内の新型コロナの新規感染者はほとんどいなくなった。

  しかし中国政府のゼロコロナ政策には強権的な行動制限が伴う。そのため、国内から不満の声が上がることも多かった。

 ただ、2022年の北京冬季オリンピック後には、都市封鎖中の上海で、新型コロナウイルスの急激な感染拡大が進み、共産党政権への批判が相次ぐ。

  ゼロコロナ政策を行っているのにも関わらず新型コロナの感染が再び拡大していることについて、ゼロコロナ政策の「初期成功」のせいで逆にオミクロン株への脆弱性が増しているとする専門家もいる(4)。

  いつでも、中国政府は「まだ抑え込める」との姿勢を崩さないが、しかし感染の波はいつまでたっても収まらない。2022年3月28日は、上海で事実上の都市封鎖(ロックダウン)が始まった(5)。

  上海で行われている都市封鎖は、具体的には3月28日から4月1日まで、浦東地区を封鎖し、4月1日から5日まで西側の浦西地区を封鎖するというもの。

 橋やトンネルもすべて通行止めとなり、バスや公共交通機関もすべてストップする。

 国産ワクチン、失敗?

 
 中国がゼロコロナ政策を続ける要因として、独自に製造したワクチンをそもそも政府が信用できていないという説がある。JPモルガン・アセット・マネジメントは昨年6月11日、

 「欧米製ワクチンを採用している国々(米国、英国、フランスなど9カ国)では人口の40%以上に接種した後、感染者が大幅に減少したのに対し、中国製ワクチンを採用している国々(9カ国)ではワクチン接種後に感染者が減少したのはハンガリーのみであり、特にバーレーン、モルデイブ、セイシェルでは感染拡大が深刻化している」

(6)

とする指摘。

  中国企業が開発したワクチンは、不活化ワクチン。熱やアンモニアなどで不活化したウイルスを体内に投与して抗体をつくるという従来の製造方法によるもの。

  この方法はインフルエンザワクチンなどで使われているが、インフルエンザウイルスに比べて増殖の速度が遅い新型コロナウイルスでは体内で抗体ができにくい。

 そのためワクチンの有効性が低いとの判断から、欧米のワクチンメーカーはこのやり方を採用しなかった(7)。

 医療格差

 

 一方、中国全土では厳しい医療格差があり、新型コロナウイルスの感染者が爆発的に拡大すると「国がもたない」という指摘もある。

 「日本における国民健康保険制度のようなものは、一応は中国にも存在します。しかしながら、国営企業に勤めるエリート社員でもない限り、入れるものではありません。

 施設が充実し、優秀な医師が勤務する病院は、北京でも上海でも、それこそ武漢にもたくさんあります。しかし診察費用は高額で、庶民が簡単に受診できる病院ではないのです」

(8)

 「高額な医療費を自己負担する必要がありますが、そんなことはもちろん不可能です。結果として、貧困層こそ病院に足を運びません。

 たとえ新型コロナウイルスを原因とする肺炎に罹患したとしても、座して死を待つより他に方法はないのです」(同・報道関係者)

(9)

 毎日新聞(電子版)は2020年2月2日、「治療設備、温かい食事なく 農村部襲う新型肺炎 激しい医療格差」との記事を配信。

 記事の舞台の黄岡市は、新型コロナウイルスの”震源地”とされる中国湖北省武漢市の隣接地。しかし、その隣接市でさえ、医療体制は脆弱であるという。


(1)坂本信博「反ゼロコロナ 中国襲う」西日本新聞、2022年11月29日付

(2)白山泉「北京緊迫 白紙で抗議」東京新聞、2022年11月23日付

(3)日本経済新聞「習体制に挑戦」2022年11月28日付夕刊

(4)日経ビジネス「ゼロコロナ政策とは? 中国政府が強権的な取り組みにこだわる訳」2022年6月22日、https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00081/052400371/

(5)日経ビジネス、2022年6月22日

(6) 藤和彦「世界中で次々明らかになる「中国製のコロナワクチンは役立たず」 更に安全性にも問題]」デイリー新潮、2021年6月27日、https://www.dailyshincho.jp/article/2021/06270557/?all=1

(7) 藤和彦、2021年6月27日

(8)週刊新潮WEB取材班「【新型コロナ】日本人の想像を遙かに超える中国の医療格差 「不老長寿」というまやかし」デイリー新潮、2020年2月13日、https://www.dailyshincho.jp/article/2020/02131102/?all=1

(9) 週刊新潮WEB取材班、2020年2月13日

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