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※1/29追記 魂の紅を聴け! 映画『カラオケ行こ!』感想

※映画カラオケ行こ!のネタバレを含みます


公開初日の夜、映画カラオケ行こ!を見に行った。
前回のnoteでも触れているが、私は原作が大好きでたまらない。
単行本1冊で、約3年間狂っている。

そんな作品の実写映画、鑑賞直前まで私は不安でいっぱいであった。
なぜなら大体の実写映画はなんだか微妙な出来になってしまうからである。
岸部露伴や帝一の國などの成功例はあるが、2次元のものを3次元に変換するのは大変難しく、ほとんどの作品はそれらのクオリティまで持っていけないのが現状である。
そして独特な雰囲気や間、魅力的なキャラクターが売りの和山作品。 難易度が高すぎて不安しかなかった。

正直、キャスティングが出た時も少し不満があった。
聡実くん役の齋藤潤さんは、特大規模のオーディションを勝ち上がった新人気鋭の俳優さんで、そんな大オーディションを勝ち上がった俳優さんなら、と徐々に不安は薄れていったが、狂児役の綾野剛さんはスクリーンで実際に演じている姿を見るまで不安だった。
演技力が申し分ないのは身をもって知っているが、ビジュアル面で原作の狂児の古風なヤ〇ザの雰囲気は感じられず、どちらかというと綾野さんの狂児はインテリヤ〇ザ寄りだったからだ。

しかし、映画を見終わる頃にはそんなことを気にする必要がなかったと思わされた。
確かに原作の狂児とは違う、でも確かにそれは狂児だった。

綾野剛のまま狂児だった。


初めのカラオケシーンまでは「やっぱり狂児じゃない」と強い違和感があったが、見ているうちにだんだんその違和感を楽しむようになってきた。
確かに狂児じゃないんだけど、狂児。 カラオケでチャーハンを2つ注文するところとか、ブラックコーヒー飲んでる描写から特に感じる。
なんというか、映画軸の狂児が存在しているという感じ(?)
また、インタビューでは狂児の役作りを細かいところ(紅に敬意を払っているので歌う時は必ずジャケットを着る等)までしていると話しており、最終的には狂児を演じられるのは綾野剛しか居ない!とまで思うようになっていた。

本当に、今まで綾野さんを疑っていたことを謝りたい。
綾野剛さん、いままで狂児じゃないなんて思ってしまい申し訳ございませんでした。
あなたの演じる狂児はおちゃめでキュートで足も長くてかっこよく、原作版に引けを取らないほど魅力的に演じて下さりありがとうございました。おかげで映画の良さが格段に上がったように感じます。 よろしければ今後ともよろしくお願いいたします。


映画版は確かに原作と違う、しかしそこが良い。

これはただの実写化ではなく“映画版カラオケ行こ!”

なのだと思った。


ちなみに他に私が目についた大きな違いや要素はこちら↓

・ヤ〇ザ全員に名前がつき、一部ビジュアルやキャラクター変更、要素追加
・狂児母(強め母になった)、合唱部の先生(若くなった)のキャラ要素変更
・合唱部員和田の掘り下げ、シーン追加
・オリジナルキャラで指揮者の先生と映画部部長が登場、シーン追加
・大会の結果が銀賞ではなく銅賞
・狂児が合唱祭にたまたま入るシーン追加
・出会い方が控室待ち伏せではなく、たまたま階段で鉢合わせた(?)に変更
・いちご狩りへ向かうシーンと「座り心地がよろしんでしょうな」の下りカット
・狂児が学校へ来たり、下校中待ち伏せシーン、屋上で雑談シーン追加
・テーマに「愛」追加、お兄ちゃんは登場せず受け取るお守りの数が1つ減
・聡実くんの部屋が和室から洋室へ変更
・狂児の甘党設定消滅(ブラックコーヒー、チャーハンを2杯注文したことから)
・音叉
・狂児、聡実の歌唱シーン増
聡実くんが狂児へ渡す曲リスト、若干変更(勝手にシンドバッド、キスして欲しい、などなかったような…)、理由も「歌番組をたまたま見ていたら」ではなく、狂児のために探してくれた ←そんなことなかった
・紅序盤の英語部分和訳
・たんぽぽ音楽教室
・最後の合唱祭でちゃんと断りを入れてすっぽかす
・聡実くんは紅で喉を使い果たさない
・聡実くんの中学卒業シーン追加
・卒業文集設定なし
・高校卒業後、クラスメートとカラオケに行き、カラオケの椅子に突っ込んだ名刺を再び発見するシーンなし、代わりに最初から大事に持っている
・名刺が最初から箔押し
・再会場所は空港ではなさそうで、狂児から聡実くんへ電話を掛ける終わり方


1回観ただけではこれぐらいしか思い出せなかったのだが、この変更や追加した要素と、今までずっと頭の中で想像していた歌声を直接目で見て聞くことが出来、原作の解像度がグッと上がったし、原作未読の方にも理解しやすいような構成になっていて良かった。

特に良かったのは狂児の紅と聡実くんの紅と和田の掘り下げ部分だ。

狂児の紅は終始裏声と言われており、想像ではうまく保管できなかった部分だった。 そして、映画版でそれを実際聞いてみると、思っていたよりも破壊力があって度肝を抜かれた。 想像していたよりも裏声が気持ち悪かった。(褒め言葉)

また、聡実くんの紅は本当に素晴らしく、聡実役の齋藤潤さんは劇中の聡実くんの年齢とほぼ同じ時期に撮影をしたことから、本当に変声期であり、その大人と子供の中間の危うく魅力的な歌声で魂を込めて紅を歌ってくださって感動した。 これが文字通り魂の紅。 これを超える紅を今後聞くことがあるだろうか? 本当に初めての大役かと思う程演技が上手かった。 彼は将来が楽しみな俳優さんのうちの一人である。

そして和田の掘り下げ部分。 原作では少ない出番ながらも強烈なインパクトを残すキャラクターだが、映画版では出番が増え、より強烈なキャラクターとなっている。 また、癇癪の起こし方がNSC時代のランジャタイ伊藤さんとそっくりで笑ってしまった。 やっらし!の所も愛らしいね。 それと、この世界軸の和田も今後たこやキングになる可能性があるのかと思うとあまりにも面白かった。


ただ映画の感想を書いているだけなのにもう2000文字を超えてしまったので、最後にこれだけ書かせてほしい。 紅冒頭の歌詞の和訳、大好きです。 ピカピカや…。

あっ、あと、合唱の歌詞がストーリーと良くリンクしていて「天国なんかに住んだりしない」のところ、ほんとに、ほんとにすごい。 聡実くん、どうか狂児と地獄に落ちてくれないか…。
心の瞳でも、愛がなにか「分かりかけてきた」の歌詞の付近で、「愛とは与えるもの」と理解しているし、すごい。 粋な演習すぎる。

私やみんなが大好きな作品を、愛や魂を込めて丁寧に作り上げてくれた制作関係者の方すべてに感謝をしたい。
とても素敵に作り上げ、それを公開して下さってありがとうございます。
今回が好評ならば、次回作もあり得るとのことなのでこれからも定期的に劇場に足を運び、観賞するつもりです。
本当にありがとうございました!

そしてここまで読んでくださった方もありがとう!

カラオケ行こ!サイコ~!!!!!!🎤❗


1/29 追記
あの後、2回観に行きましたので追加で気付いたこと ↓

・狂児の住所存在しない(大阪府佐倉区イテ院?)(マンションの15階に住んでいる)
・聡実くんの絞り出すような「キティちゃんの…」好きすぎる
・狂児、カラオケ天国来た時、車を高確率で輪留めに止めず、店の入り口の前に堂々と止めてる
・マジックテープのお財布使ってる聡実くんかわいい!!(五千円しか入ってなくて、狂児来なかったら買えなかったのもかわいい)(そもそも和田が壊したのに買ってあげるの偉すぎ)
・狂児、三角関係(仮)目撃後、止まれの標識で止まらない(紅は狂児にとって進めという色なのか?)
・事故車のセンチュリー、エアバックが出ていなかったのでそんなに激しい事故だった訳ではない?
・後半に近づいてくるにつれて、心理的にも物理的にも距離が近づいて行く狂児と聡実くん(序盤では隣に座っていても一定の距離を保っていたが、終盤のカラオケ大会では狂児に肩を抱かれている)
・卒業式の日の映画を見る部の部室で映る「生徒は開けるべからず」の棚、何が入ってるんだろう?

観るたびに気付きが増えて、何回観ても楽しいし、観終わってすぐにまた観たいなと思う素敵な映画。
本当にこのキャストさんで、この監督さんで、この脚本家さんで、このスタッフさんで、この映画を作ってもらえてよかった。
そしてそれを観られる幸せ。
田舎でもすでに特典の配布は終了していて、どの時間帯も結構な人が入っている。
しかも、毎回初めて観るであろう人が結構居て、狂児の紅への笑いや、聡実くんの紅に感動して鼻をすする音が聞こえる。
客層も、原作を知らなそうな一般の人が多く見られて、私の好きな作品が色々な層にも受け入れられていると思うと、ただのオタクなのに胸がいっぱいになる。
こんなに胸が満たされたのは久しぶりかもしれない。
幸せをありがとう。
山下監督! インタビューでおっしゃっていたヤ〇ザスピンオフとファミレスも是非見たいです! 全力でお待ちしております!



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