アラサー;就活おわったので、婚活はじめました。2
【フリーダイヤルの電話って何であんなに怖いんだろう編】
──7月1日。
婚活しようと夏の空に誓った。そんな新しい職場の初日は、驚くほど忙しかった。
熱風の外気を素肌にまとったままの私が、エアコンのきいた職場へ踏みこむと、そこは一面、機械であふれていた。
これが、工場……。
「イチゴちゃん、工場は初めて?」
「は、はい。初めてです」
やさしく微笑む女上司に、私はやや苦笑しつつ、彼女の後ろをついていった。
通勤中に汗ばんだ体を冷やすために、襟元をかるくぱたつかせて、機械のなかを歩いていく。
そして、ここから始まった。説明の嵐が──。
「じゃあイチゴちゃん、機械の使い方おしえるね」
「はい! お願いします」
「イチゴちゃん、こっちの機械の使い方を教えるね「はい! お願いします」
「イチゴちゃん、今度はこっちの機械を──」
「は、はい!」
上司にぺったりとくっついて歩くこと、三十分。
……え?
どんだけ機械の説明するん?
待って。私、このすべての機械を使っていくの?
え? 1日でこんな数の機械操作、覚えられないんですけど──!!
エアコンで涼しいはずなのに、頭のなかはショート寸前。
思わず『ありえないっつーの!』って、叫んでしまいたかった。
どうやらこれが30歳手前で、未経験職種を選んでしまった対価らしい。
テンパっているうちに、1日は終わり、家に帰ってきたときには体よりも脳がクタクタだった……。
すこし寝て、風呂に入って、家事をして──家族と過ごす。
婚活を誓った1日目。
婚活の文字を忘れたまま、私はふかふかのベッドにダイブして、そのまま目を閉じた。
蹴りとばされた掛け布団が床に落ちたことに気づいたのは、翌朝のことである。
そして、2日目、3日目、4日……ときは流れていく。
仕事→家→仕事→家……。
そんな日々が続いた5日目の夜──ちょっと待って!
「いや、婚活は!?」
疲れていてもやらねばならぬ。
私は今にも眠りそうな目をこすりながら、スマホを起動した。
『婚活 やり方』 検索
そこで見つけたのは、
『オーネット 結婚チャンステスト』
なにそれ?
すごい気になるんですけど!!
間髪いれずに、私は項目をうめていった。
ポチポチポチポチポチ…………。
そして、ついに送信!
これで、メールで結果が、届く、のか?
と、そのとき、握りしめていたスマホがいきなり鳴った。その番号は──、
「……オーネット?」
え? なんで電話がかかってくるの!?
待って、まだ心の準備ができてない。どうしよう、
出るor出ない
「…………」
→出ない
うん。
いきなりの電話って、なんか怖い(笑)
けれど、その後、何度も電話がかかってくる恐怖。
電話に出ると、圧強めな女性が淡々と入会を勧めてきて、10分ほど話を聞いたあと、
「すみません、また検討してみます」
小心者の私は入会しませんでした。
何が怖いって、
「ああ、そうですか」
↑女性の冷淡な声。
「うわー! 婚活、めっちゃ怖いじゃんか!」
オーネット恐怖病になりそうだ。
※ちなみに、出なかったら、翌日もかかってきます。3日くらいかかってきてました。
通話を終えると私は、スマホをギュッと握りしめて、背中からベッドに飛びこんだ。
天井の小さなシミを数えながら、ふいに重たいため息がこぼれた。
入会しない自分の意気地なしさを感じて、クッションに頭を埋めずにはいられなかった。
私、本当に結婚できるのかなあ。
そんな弱気になりながらも、動かないままでは何も始まらない。
私はスマホで『婚活』を調べるため、ネットに旅立った。
そして見つける。
「婚活アプリ……?」
「アプリ…………」
「…………」
「婚活アプリだ! これなら私にも出きる!」
ずいぶんと息巻いてたが、本当にできるのか。
次回は【婚活アプリ、はじめます編】
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