見出し画像

水のなかを歩く   38

真冬のプールは人がまばらで落ち着いた雰囲気。水の跳ねる音も控えめで、時折聞こえる歓声も長くは続かない。窓の外は枯れ木だし空は白くて、屋内に落ちる影はどことなく優しい。全体にひっそりし、とても居心地よい。少し気温が上がり始めたし日も延びてきた。もう少ししたら、みんなまた来るだろう。

俳優のあの事件はとても残念で色々考えさせられた。映画やドラマの中で、俳優は一つのピースにすぎない。物語を伝える上での虚像であり、実存ではない。一人の俳優が実生活で何をしようが、それは良くも悪くも一人の男の生活であり、社会全体でアレコレ責め立てるほどでもないだろう。償うべきだが、そっとしておいてやるべきだ。世の中のスピードが凄く速いから、たった数週間前の事件を忘れている人もいるのでは?ああそんなことあったねと。でも、多くの人が感じているように、大切な物語まで失う必要はないはずだ。都合の悪い話に蓋をする、右へ倣えの事なかれ主義が未来を良くするとは到底思えない。

嘘がはびこるこの国に、みんな溜め息をついているだろう。子どもたちはテレビやネットを通して、大人たちの対応を見ている。どんなことが起きても、無視と無知はよくない。大変な時こそ、お互いに手を差し伸べる社会にしないと。

プール帰りにスーパーに寄ったら、この街に昔から住むベテラン俳優さんとレジで隣り合わせた。久々にお見かけし、お元気そうで良かったと思った。

#プール #俳優

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?