水のなかを歩く 32
水のなかを歩く。腕や脚をじっくり伸ばして、新しくどこかに届くように。指を大きく開いて、何かが掴めるように。その連なる動作は心の開放感や自由さによってリズムとスピードを変えていく。
水を搔き分けるのか、流れに浮かばるのか。柔らかで曖昧な意志を纏わせ、ふだん道を歩く時には意識できない身軽さと解放力を手に入れる。自然と何か思い浮かべ妄想しながら前へ進む。真面目なこと、予想外のこと、どうでもいいこと。浮かんでは消え、バトンタッチしてゆくエネルギーのようだ。反芻するうちいつしか静まり、よせては返し、決して固まることがない。沈思黙考していられないのがよい。
何かにつながりたい気持ち。歩き続けて程よく気持ちが開いたら、その日はおしまい。答えは出なくとも、希望を絶やさないトレーニング。
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