ヒヤリハット3 猫井川、狙撃される!?
こんにちは。
私は労働安全コンサルタントという仕事をしております。
今日も無事にただいま というブログの中で、ヒヤリハットを題材とした、小話を書いております。
今回もブログで書いた内容に手を加えたものです。
テーマは、事故タイプでいうと「飛来・落下」未遂です。
猫井川、狙撃される!?
株)HHCでは、明日からのコンクリートの打設工事のために、型枠作りを行うことになりました。
今日の作業は、猫井川ニャンと保楠田コンの二人です。二人は、工事現場にトラックで型枠用のコンパネ(コンクリートパネルという合板。通称コンパネ)を運び込みました。
荷台からコンパネを降ろししたところで、保楠田が猫井川に言いました。
「それじゃ、俺は図面から寸法を拾って、コンパネを切っていくから、猫ちゃんは桟木(骨組み用の角材のこと。細長い。)切っていって。細かいところは現場合わせするから、少し長めに切っておいてね。
今日中に型枠を終わらせないと、明日のコンクリート打ちに間に合わないから、ささっとやっていかないとね。
それじゃ、猫ちゃん、始めますか。」
保楠田の指揮で、加工の仕事が始まりました。
保楠田はコンパネに図面寸法通りに墨を打ち、電動丸のこで切っていきます。猫井川もコンパネに合わせて、桟木を切っていきました。
ギュイ~ン、ギュイ~ンと電動のこぎりが響き渡ること、2時間。
ひと通り型枠材料の切断は終わりました。
「それじゃ、猫ちゃん。
大体切れたことだし、少し休憩してから、型を組んでいこうか。」
涼しくなってきたとはいえ、ずっと木を切っていたので、二人は大汗を描いています。
休憩の声にほっとした猫井川は、切り終えた桟木を一箇所にまとめて、保楠田の側に座りました。
「これで、大体終わりですかね?」
「ん~、あとは実際に組んでみて、微調整しながらかな。」
「今日中には型は組み終わりそうですね。」
猫井川と保楠田は、お茶を飲みながら話をしていました。
「そういえば、猫ちゃん。前にネイルガンが調子悪いとか言ってたけど、大丈夫?」
ネイルガンとは、電動の釘打ち機のことです。
スイッチを押すと、圧縮したエアーで釘が打ち出され、一瞬で釘が撃ちこむことができる道具です。たくさん釘を打つ、建築の現場などでは必需品です。
もし工事現場からパシュン、パシュンという音が聞こえたら、きっとそれはネイルガンです。
猫井川は、ある先輩からネイルガンをもらったのですが、最近調子が悪く、スイッチを入れても動かないことがあったのでした。
前の現場の時に、そのことを保楠田にこぼしていたのです。
「そうそう、見て下さいよ。
さすがに使えなくなってきたので、会社に新しいのを買ってもらったんですよ!
どうです?いいでしょう?」
猫井川は早速、新しいネイルガンを見せました。
「おお~、いいね~!!
やっぱり、新しいのだけあってきれいだよ。
どう?俺のと交換しない?」
猫井川のネイルガンを持ちながら、保楠田が冗談交じりに言います。
「ダメですよ。まだ俺も使ってないんですから。
今日がデビューなんですよ。」
「そうか~。でも俺のは使いやすいよ。
猫ちゃんも何度も使ってるから分かるでしょ?」
「いやいや、ダメですよ。
保楠田さんのは、確かに前の壊れかけのよりは使いやすかったですけど」
そんなやり取りをしながら、二人でじゃれていました。
じゃれている内に、ネイルガンを持っていた保楠田は、スイッチを押してしまいました。
パシュン!
空気が弾けるような音がしてと思うと、猫井川の足元に何かキラリと光るものが。
どうやら、ガンに装填されていた釘が打ち出され、猫井川の足元に打ち込まれたようです。
静かになる二人。
幸い足からは少し離れた位置に打ち込まれたので、猫井川には刺さっていません。
静かに釘を見つめる二人。
保楠田は、猫井川にネイルガンを手渡して、言いました。
「こ、工具を持ってふざけると危ないよね。。」
無言でうなづく、猫井川。
「そろそろ、型を組もうか。猫ちゃんも気をつけて、釘を打ってね。」
ちょっと反省した二人は、そろそろと作業を再開したのでした。
ヒヤリハットの解説
保楠田と猫井川の二人作業でしたが、本当にヒヤリとしたようです。
では、今回のヒヤリハットをまとめていきたいと思います。
昔は手作業の工具も、今ではその多くが電動化されています。
ドライバー、キリ、カナヅチ、ノコギリなど、工場で固定式のものありますが、携帯用の電動工具もあります。
建設現場なのでは、携帯用の道具がよく使われます。
電動道具を使用すると、釘は一瞬で打てますし、ナットも一瞬で閉め込むことができます。
しかしこれらの道具は非常にパワフルですが、使い方を間違えると、大怪我をしてしまいます。
例えば、釘を打つ時にカナヅチを使っているのであれば、誤って指を打ってしまうことがありますね。爪を打ってしまうと、内出血で爪が真っ黒になったりして。
一方、電動のネイルガンでの怪我は、内出血どころでは済みません。下手をすると、手から釘が生えてしまいます。
カナヅチで打つのも悶絶しますけど、手に釘は、洒落になりません。
ネイルガンに限らず、電動工具は途中で止めることができないのと、力の加減ができないので、大怪我につながってしまうことがあるのです。
特にネイルガンなどは、圧縮した空気で釘を打ち出し、一瞬で板や柱の根本まで打ち込む程の威力があります。
カナヅチに比べて、少なくとも5打撃分の威力はあるのです。
そんな道具を持ちながら、じゃれあっていた猫井川と保楠田は、どれほど危険かは想像がつくかもしれません。今回は登場しませんでしたが、犬尾沢がいたならば、かなり怒られていたはず。
今回は、ヒヤリで済み、怪我につながりませんでしたが、実際に事故も起こっています。統計データが見つからなかったので、数を示せないのですが、身近なものであるため、それなりにあるのではと思われます。
猫井川と保楠田のように、工具を持ってじゃれ合うことはもっての外ですが、他にも気をつけておかなければならないことはあります。
それは、保管時はクギを昔から大工さんにとって道具は命だと、言われています。
普段からとても丁寧に手入れをして、長年使うというのも珍しくないと思います。
大切なものが人を傷つけるのは、悲しいことです。
とはいうものの、このようの事故を防ぐために、現在の機械には安全装置を備えています。安全装置では、クギを打ち付ける箇所に、射出口を当てないと、クギは打ち出されません。
故障したり、意図的に安全装置を抑えない限り、誤射の可能性は低いです。
今回のヒヤリハットは、じゃれている間に安全装置が外れた状態になっていたのかなと、寛大な心で読んでやってください。
さて、ヒヤリハットをまとめます。
今回のヒヤリハットのまとめ
ヒヤリハットの内容
ネイルガンを持ってじゃれていたら、足元に釘が打ち込まれた。
対策
1.電動道具を持って、ふざけない。
2.安全装置は外さない。常に機能するように維持する。
普段、何気ないことことや、ちょっとしたおふざけも怪我になることがあります。特に業務用の道具は、一般家庭で使うものよりパワフルなものが多いので、使い方にも慎重さが求められます。
しかし、どんなに危険性の高いものでも、日常的に使用して慣れていると、その怖さを忘れるのも事実でしょう。油断したときに、怪我をしてしまうので、今自分が扱っているものの危険性を、今一度見なおしてみるといいかもしれませんね。
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