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第1章: 突然の挑戦

 新たな日が始まろうとしていた。
 街の賑やかな音が遠くに響き、朝日が広がる街をユウキは窓辺から眺めている。
 黒髪を揺らしながら、彼は深い緑の瞳で外界を観察した。若々しく、まだ社会人経験が浅い彼は、新社会人としての自分を思い浮かべた。ユウキはまだまだ社会人としての自信が持てずにいたが、ITについては学生時代から学んできて詳しい。

 その日、彼が訪れたのは「サトコのお弁当」だった。

「おはよう、ユウキ君。」

 サトコは厨房から出てきて彼に微笑んだ。

「あなたがここに来るのを待っていたわ。」

 彼女はユウキのおばさんで、地元で人気のお弁当屋「サトコのお弁当」の店主だった。
 年齢を感じさせない美しさと常に明るい笑顔が評判のサトコは、店で働くスタッフたちからの信頼も厚かった。
 彼女のお弁当は街でも評判だった。だが、ユウキがお店を訪れる目的は、彼女からの意外な提案を受けるためだった。

 ユウキは彼女を見つめ、緊張した表情を浮かべた。

 サトコから相談があると連絡を受けたユウキは、彼女のお弁当屋さんに軽い緊張感を抱きながら足を踏み入れる。彼女の顔色は普段よりも陰りがある。

「あの、サトコおばさん。売上についての話でしたよね?」

 サトコは頷いて、店の奥へとユウキを招き入れた。

「そう、そこに座って。話があるのよ。」

 彼女の語る問題は、売上の停滞だった。昔は繁盛していた弁当屋も、最近は新規の顧客がほとんど訪れなくなり、常連客だけが足を運ぶようになっていた。

「ユウキ君。実は店の売り上げが伸び悩んでいてね。それが少し悩みなのよ。」

 彼女はショーケース越しにユウキを見つめ、悩みを打ち明けた。彼女の口調は普段と変わらないものの、その目にはわずかな不安が見え隠れしていた。

「それは大変そうですね、おばさん。何か特定の原因は思い当たりますか?」

「具体的な原因はわからないけど、昔に比べてお客さんが足を運ばなくなった感じがするのよ。もしかしたら、私たちの弁当が時代遅れになってきているのかもしれないわね。」

 ユウキは思案する。

「時代遅れというよりも、おばさんの弁当は他にない美味しさがあるから、それをもっと多くの人に知ってもらう手段が必要なのかもしれません。」

「手段って、どういうことかしら?」

 サトコは彼を見つめて問い詰める。

「たとえば、デジタルマーケティングというのはどうでしょう? インターネットを使って広告を出したり、SNSで美味しさを伝えたりする方法です。」

 ユウキは勇気を振り絞って提案する。

「デジタルマーケティング? それならユウキ君に任せられるかしら?」

 彼女の目には期待と不安が混じった複雑な表情が浮かんでいた。

 ユウキはその複雑な表情を捉え、少し戸惑ったが、すぐに笑顔を返した。

「僕もそれほど詳しいわけではありませんが、一緒に頑張ってみませんか?」

 サトコはしばらく考えた後、頷いた。

「それなら、ユウキ君に任せてみるわ。これからよろしくね。」

 デジタルマーケティングの知識と、サトコのお弁当の美味しさ。その二つが融合したとき、一体どんな結果が生まれるのだろうか。

「僕もまだまだ未熟ですが、一緒に頑張りましょう。」

 彼の顔には、不安と期待が混ざり合った笑顔が浮かんでいた。新社会人のユウキの挑戦が、ここから始まる。

>>第2章

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