第5章:顧客ロイヤリティの構築とリピートビジネス
5-1 顧客ロイヤリティの重視とリピートビジネスへの取り組み
ある日、ユウキは町を散策中に「タナカスベントーワールド」の新店舗を見つけた。この弁当店はユウキも良く知るライバル店で、店長の田中拓哉は地元で評価が高く、ビジネスに対する熱意と知識で知られていた。
新店舗のオープンについては以前から耳にしていたが、その場で目の当たりにしたユウキは驚きを隠せなかった。店の前には長蛇の列ができており、店内は活気に満ちていた。
「田中さんの店は本当に人気だな」
とユウキはつぶやいた。何が彼の店をこんなに魅力的にしているのか、その秘訣を知りたいと思った。そこでユウキは、思い切って仕事の合間を見つけ、田中に会いに行くことを決めた。
田中はユウキを見て笑い、
「ああ、ライバル店の人が何を聞きに来たのかな?」
と言った。ユウキは少し緊張しながら、
「あなたの店はいつも賑わっていますよね。どうやって顧客ロイヤリティを保っているのか教えてください」
と頼んだ。
田中は少し意地悪そうに笑った。
「おやおや、ライバル店がどうやって繁盛してるか知りたいのか?でもまあ、その勇気は気に入ったから教えてあげるよ。ただ、お客さんを戻ってこさせるには、ただの商品じゃなくて、特別な何かを提供しなきゃならないんだよ。」
とユウキに言った。
田中の店では、リピート顧客を増やすためにポイントカードを導入していた。ポイントカードは、顧客が毎回購入する度にポイントをためることができ、ある数に達したら特典がもらえるというものだ。
また、田中はSNSを使って顧客とのコミュニケーションを活発に行っていた。新商品の情報や特別なプロモーションの告知はもちろんのこと、お客さんからの質問にも丁寧に対応していた。
ユウキが田中に感謝の言葉を述べると、田中は
「ただ、これが全てじゃないよ。顧客のニーズを理解し、それに応えるための努力が必要だからな。それが顧客ロイヤリティを構築し、リピートビジネスを生み出すんだ。そこから先は自分たちで考えるんだね」
と付け加えた。
店に戻ったユウキは、サトコとマユミに今日学んだことを報告した。
「顧客ロイヤリティを重視し、リピートビジネスを増やすためには、どうすればいいと思いますか?」
とユウキは問いかけた。
サトコとマユミは一瞬考えた後、ユウキに向かって
「ユウキ君が思う最善の方法で進めてみて」
と力強く答えた。それは彼女たちのユウキへの信頼の証でもあった。
こうしてユウキは、顧客ロイヤリティの重視とリピートビジネスへの取り組みを始めた。田中の店で見たようなポイント制度を導入し、SNSでの顧客とのコミュニケーションを更に活発に行うことに決めた。その一方で、自分たちの店独自の取り組みを考えるために、顧客のニーズや嗜好について深く理解することを忘れなかった。
(これだけだと田中さんの店の二番煎じだな…。何かもっと他にも独自の取り組みを考えなくちゃ…)
ユウキは悩んだが、なかなか良いアイディアが浮かばなかった。
(ちょっと、気晴らしに散歩にでも行ってくるか…)
彼は立ち上がり、商店街をぶらぶら散歩し始めた。
周りを見渡すと、ケーキ屋が目に入った。もうクリスマスケーキ予約のポスターが貼ってある。
(もうそんなシーズンか。ケーキと言えば、子供の頃は誕生日ケーキが楽しみだったなぁ)
ユウキは子供の頃のことを思い出す。
(ん?誕生日…。そうだ!誕生日のお客様に特別なお祝いをしてあげたらどうだろう?これが田中さんの言っていた『特別な何か』か!)
ユウキはそのアイディアを早速、サトコに話し、サトコもそれに賛成してくれた。
「さとこのお弁当」では、お客様に対してポイントカードとなるメンバーズカードを作り、メンバーの誕生月にはバースデーカードとともに10%割引クーポンを送ることにした。個人情報の管理については気をつける必要があったが、この施策によってお客様との繋がりを強することを狙ったのだ。
そしてユウキは、この取り組みが「サトコのお弁当」のビジネス成長にとって重要なステップになると確信していた。顧客との強い絆を築き、その信頼を勝ち取ることが、リピートビジネスという結果に結びつくと信じていたのである。
5-2 会員制度や特典プログラムの導入
ユウキの提案に火を点けられたサトコとマユミは新たな取り組み、つまり会員制度と特典プログラムの導入を進めるための準備を始めた。二人は熱心に準備を進め、その最初の一歩として、彼女たちは美しいデザインのメンバーズカードと、心を込めて作られたバースデーカード、お得な割引クーポンを作成した。一見すると些細な作業に見えるかもしれないが、実際には、これらすべてが彼女たちの「顧客を大切にする」というビジネスの核心を具現化したものだった。
新たな取り組みがスタートすると、その効果は驚くほど早く表れた。初めて来店した客がメンバーズカードを受け取るときの笑顔、再来店を促す割引クーポンを利用して再訪してくれる客の増加、そして何より誕生月に特別なプレゼントを受け取った客からの感謝の言葉。それら全てが、彼女たちの店に新たな活気をもたらした。
「こんなに素晴らしい結果を得られるなんて、夢みたいだわ。」
サトコが感激しながら言った。彼女たちの熱意と努力が形になり、リアルな結果として現れ始めていた。
その一方で、新しいプログラムの導入は、見えない部分での成功ももたらしていた。特に、経営の視点から見れば、その成果は非常に大きなものだった。ユウキが行った3ヶ月後のデータ分析では、会員制度と特典プログラムの導入後、リピート顧客の比率が30%も増加していた。そしてバースデーカードと割引クーポンの送付が、驚くほどの再来店率を生み出していたのだ。
データを眺めて、ユウキは思わず声を上げた。
「やったぞ!これこそが、顧客ロイヤリティを構築したことの成果だ!」
彼の喜びは、この新しい取り組みがどれほど有効であるかを示していた。
しかし、ユウキはそこで満足せず、この取り組みをさらに進化させることにした。新たな特典を追加し、会員による紹介プログラムを導入。会員が新たな顧客を紹介すると、その会員と新規顧客の両方に特典を与える仕組みを作り上げた。そして、その取り組みもまた成功を収めた。
例えば、ある会員が新たに友人を店に連れてきた時、その友人は店の美味しい料理と暖かい雰囲気にすぐに魅了され、即座に会員登録を行った。その友人は後日、店での素晴らしい経験をSNSでシェアし、更なる新規顧客の流入につながった。さらに、この新たな取り組みにより、毎月の新規顧客の増加率が20%も向上。ユウキと彼女たちはこの結果を見て、さらに一層のやる気を感じることとなった。
これら全ての結果が示すように、「サトコのお弁当」の顧客ロイヤリティは、これらの新しい取り組みによって強固なものになっていった。そしてそれは、リピートビジネスの増加という形で、具体的な成果をもたらした。「ただの商品」を超えて「特別な体験」を提供することの価値が、具体的に示された瞬間だった。
この成功を受けて、ユウキはサトコとマユミに向かって感謝の言葉を述べた。
「二人と一緒にこれを達成できたこと、本当に嬉しいです。これからも一緒に店を盛り上げていきましょう!」
それは、その後も続く「サトコのお弁当」の成功への新たな一歩だった。
5-3 デジタル広告とSNSマーケティングの活用
「サトコのお弁当」は着実に成功を続けていた。客足は日に日に増え、口コミも好評だった。しかし、ユウキはそこで満足せず、さらなる成長に向けてやるべきことを模索していた。彼はサトコとマユミに相談した。
「これまでのデジタル広告の成功を基に、もっと顧客と直接対話できる方法も使ってみたいと考えていて、そのためにSNSマーケティングについても試してみたいと思っているんですよ。特にLINEは日本で非常に普及しているので、その活用はどうかなって思ってるんだけど」
サトコとマユミは、ユウキの新たな提案に興味津々で耳を傾けた。
マユミが
「LINE?そういえばいろいろな企業アカウントと友だちになればスタンプがもらえたりするのは知っているけど、私たちみたいな小さなお店でも活用できるの?」
とユウキに対して怪訝そうな顔を向ける。
ユウキは
「もちろん可能だよ。運用自体は少し大変になるところもあるけれども、小さな企業でも公式アカウントの取得は可能なんだ」
と答える。
デジタル広告は、一般的に店の認知度を向上させ、広くアピールするためのツールである一方で、LINEを使ったマーケティングは、顧客との直接的なつながりを生み出し、さらには顧客ロイヤリティを強化する可能性を持っていた。
サトコは「それはすごい」という顔でユウキに向かって言葉を投げかける。。
「LINEなら私たちの年代の人たちもみんな使っているわ。それなら、お客さんともっと深いつながりを持つことができそうね!ユウキくん、そのアイディア、私たちも全力でサポートするわ!」
2人から賛成の言葉をもらったユウキは、具体的なSNSマーケティングの戦略を立案し始めた。まず、店舗の公式LINEアカウントを作成。来店する全てのお客様に対してLINEアカウントの案内をした。そしてLINEの友だち追加していただいた人には、初回限定の割引クーポンを配信することで友だち追加を促すとともに、メンバーズカードにもLINEアカウントのQRコードを印刷し、より多くのお客さんに知ってもらえるように工夫した。
さらには、新メニューの発表や店舗のイベント情報、限定のクーポンなどをLINEを通じて直接お客さんに配信。お客さんからは、リアルタイムで反応が寄せられることになり、これまで以上に生の声を聞くことができるようになった。
実際に、「サトコのお弁当」が初めてLINEにて配信したのは、新たに作った季節限定メニューの情報だった。そのメッセージには、
「春の味覚をふんだんに使った新メニュー【桜エビと新筍の入った春弁当】を作りました!ぜひ、試してみてください!」
と書かれていた。これに対して、一人のお客さんからは「新メニュー、美味しそう!さっそくランチで試してみます!」という反応が返ってきたのだ。
それは、サトコのお弁当店のSNSマーケティングがお客様との距離を縮める効果的な方法であるということをスタッフが実感した最初の出来事だった。以降、新メニューの紹介や店舗のイベント案内、時にはお客さんの誕生日を祝うメッセージなど、さまざまな情報をリアルタイムで伝え、顧客との絆を深めていった。
結果は上々で、お店の顧客ロイヤリティはさらに強化。また、新たにLINEからの通知を見て初めてお店を訪れる人々も増え、リピートビジネスも大幅に増加した。ユウキの提案したSNSマーケティングの戦略は、確実に「サトコのお弁当」のビジネスを広げ、新たな顧客層を獲得する手助けをしたのだ。
「ユウキ君、あなたの提案は本当に素晴らしかったわ。これからも一緒にお店を盛り上げていきましょうね!」
マユミの満足そうな声が店内に響き渡った。サトコもうなずき、彼女たちの顔にはこれからの店の更なる発展に向けた期待と自信が浮かんでいた。
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